
鹿島建設株式会社について有価証券報告書や中期経営計画、ニュースリリースから投資価値を独自に分析していきます。
記事の最後には、EPSと株価の相関関係から算出した株価予想も記載していますので、最後まで読んでいただけますと幸いです。
Contents
鹿島建設の企業概要
企業名 | 鹿島建設株式会社 |
上場市場(上場年月) | 東証プライム(1961/10) |
時価総額(業種別時価総額順位) | 8,532億円(建設業 4 / 166 社) |
外国法人持株比率 | 24.9% |
予想配当利回り | 3.84 % |
監査法人 | 有限責任監査法人トーマツ |
業務内容 | 大手ゼネコン。都市インフラや環境保全等の土木、住宅や各種施設の建築、不動産開発等を手掛ける。超高層ビルに強み。建設事業は大型工事など手持ち工事が順調に進捗。海外関係会社は好調。23.3期2Qは増収増益。 記:2023/01/15 |
転載元:FISCO
日経平均株価(日経225)およびJPX日経インデックス400構成銘柄への選定
鹿島建設は「日経平均株価(日経225)」および「JPX 日経インデックス400」の構成銘柄に選定されています。

「日経平均株価(日経225)」は、日本経済新聞社が発表する株価指数のことで、東証1部上場銘柄のうち、代表的な225銘柄をもとに計算されています。日本の株式市場の大きな動きを把握する代表的な指標として用いられ、投資信託や先物取引などの商品にも利用されています。
東証1部の代表的な銘柄を選定して指標としているため、定期的に組み入れ銘柄の見直しが行われていますが、分母(除数)の修正などで株式分割や銘柄入れ替えなど市況変動以外の要因を除去して指数値の連続性を保っています。
「JPX 日経インデックス400」は、資本の効率的活用や投資者を意識した経営観点など、グローバルな投資基準に求められる諸条件を満たした「投資家にとって投資魅力の高い企業」で構成され、日本企業の魅力を内外にアピールするとともに、その持続的な企業の評価や株式の流動性だけでなく、企業の財務状況など、株式市場の活性化を図る事を目的として創生された株式指数です。
現在の投資の流行はインデックス投資ですから、インデックスの構成銘柄になることで大きな買い圧が生まれることが期待できます。
建設業で JPX 日経インデックス400に採用されている会社は以下の通りです。


競合他社
鹿島建設の競合他社としては、同じく「スーパーゼネコン」と呼ばれる売上高1兆円以上のゼネコン5社が挙げられます。
- 大成建設(1801)
- 大林組(1802)
- 清水建設(1803)
- 竹中工務店(非上場)
スーパーゼネコンの強みについて、以下のようにまとめられます。
大成建設:海外事業に強く、アジアや中東などで多くのプロジェクトを受注する。また、再開発事業にも強く、木造住宅や高層ビルなど幅広い建築物を建設することができる。
大林組:環境やエネルギー分野に強く、再生可能エネルギー発電所や水処理施設などを手掛ける。また、建築物の高さや規模に関係なく品質を保つことができる技術力がある。
清水建設:地盤改良や地下工事に強く、地震や液状化に対する耐震性能を高める技術を持つ。また、オフィスビルや商業施設など都市開発における実績が豊富である。
鹿島建設:プラント事業や土木事業における難易度の高い工事や技術革新が高い。また、ゼネコンとして早期に不動産開発事業に進出し、豊富な実績を持つ。
竹中工務店:木造建築や伝統的な日本建築に強く、京都御所や二条城などの修復工事を行う。また、デザイン性や機能性に優れた建築物を提案することができる。
事業内容
鹿島建設は、土木工事、建築工事、プラント工事、不動産開発などを営む建設会社です。
強み・弱み
鹿島建設の強みとしては、以下のような点が挙げられます。
- プラント事業や土木事業における高い技術力と開発力
- 多岐にわたる研究開発による技術革新
一方、弱みとしては、以下のような点があります。
- コロナ禍での受注減少と利益率低下
- 立地や規模に制約がある大型プロジェクトへの依存度が高い
将来性については、以下のような見通しがあります。
- コロナ後もインフラ整備や再生可能エネルギー事業などで需要が見込まれる
- 3DプリンターやAIなどIT技術の発展により競争力を高める可能性がある
- 海外市場への進出やM&Aなどで事業領域を拡大する機会がある
目標とする経営指標
「鹿島グループ中期経営計画(2021~2023)-未来につなぐ投資-」においては、新型コロナウイルス感染症の影響が続く厳しい経営環境の中、国内建設事業の利益水準を維持・向上させながら、国内・海外開発事業の投資と売却による回収を進め、最終年度である2024年3月期の経営目標を売上高2兆2,500億円程度、親会社株主に帰属する当期純利益950億円以上としています。
また、2025年3月期から2027年3月期の期間においては、海外関係会社の業績が感染症拡大前の水準に回復するとともに、事業領域拡大や新たな価値創出に向けた「未来につなぐ投資」の成果が徐々に現れ、安定的に親会社株主に帰属する当期純利益1,000億円以上を計上できる体制を構築することを目指し、2031年3月期には1,300~1,500億円以上の水準を目指しています。
ROEについては、2022年3月期は一旦低下する可能性があるものの、早期に10%を上回る水準への回復を目指す。

事業セグメント
鹿島建設の事業セグメントは、以下の通りです。
セグメント | 取扱商品またはサービスの内容 |
---|---|
土木事業 | 鹿島建設が建設事業のうち、土木工事の受注、施工等を行う。 |
建設事業 | 鹿島建設が建設事業のうち、建築工事の受注、施工等を行う。 |
開発事業等 | 鹿島建設が不動産開発全般に関する事業及び意匠・構造設計、その他設計、エンジニアリング全般の事業を行う。 |
国内関係会社 | 鹿島建設の国内関係会社が行っている事業であり、主に日本国内における建設資機材の販売、専門工事の請負、総合リース業、ビル賃貸事業等を行う。 |
海外関係会社 | 鹿島建設の海外関係会社が行っている事業であり、北米、欧州、アジア、大洋州などの海外地域における建設事業、開発事業等を行う。 |
セグメント別の売上高と利益についてグラフにしてみます。

売上の規模としては「建築事業」と「海外関連会社」が大きく、「土木事業」と「国内関連会社」も相当の規模があります。

利益については「建築事業」で安定して計上しています。
「開発事業」については大型開発案件の引き渡しの時期に応じてポンと利益が計上される傾向にあります。
最近調子がいいのが「海外関連会社」ですね。北米市場の旺盛な住宅市場が貢献しています。
業績
鹿島建設の過去の業績は以下の通りです。

EPSの推移と予想EPS

四半期EPS推移

2023年3月期3Qは、売上高は1兆7,531億円(前年同期比+18.2%増)、営業利益は932億円(前年同期比+5.2%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は820億円(前年同期比+0.8%増)となりました。
ゼネコンの業績の傾向としては、民間設備投資が回復基調にあるとともに、公共投資が底堅さを維持していることから、建設需要は堅調であるものの、厳しい競争環境が続いています。
また、資材価格を中心に建設コストが上昇している状況も継続していることから利益率が減少傾向にあります。
建設業界を取り巻く環境
国内建設投資は14年度以降上昇傾向にあるが、これは1つの工事が大型化しているためです。
1件当たりの工事が大型化する分、受注競争が激しくなり、工事採算は低下する一方となっています。
一方でサブコン(下請けの専門業者)の利益率は堅調推移しており、ゼネコンだけが冬の時代を迎えており、業者数が減らない限りゼネコンが生き残っていくのは難しいといわれています。
従来のように建設のみならず、非建設分野を拡充していくことが生き残っていくために重要となります。
建設RXコンソーシアム発足
施工ロボットやIoTを使った施工支援ツールの技術開発に取り組む「建設RXコンソーシアム」が発足しました。
スーパーゼネコンの鹿島建設、清水建設、竹中工務店は当初から参加しておりましたが、2022年11月には様子見していた大林組も参加しました。
大成建設にも参加を望む声はあるものの、大成建設は「異業種の知恵や知見を組み合わせてこそ、イノベーションの素地ができる」との考えがあり、現時点で参画は考えていないようです。

土木事業

受注高は、大型工事の受注などにより前年同期を上回りました。
売上高は、工事終盤の大型案件を中心に施工が進捗し増収となっています。
営業利益は、売上総利益率が微減となったものの、売上高増加の効果が大きく、増益となっています。
建築事業

受注高は、大型工事を複数受注したことから、前年同期を大幅に上回りました。
売上高は、当期受注工事を含め大型工事の施工が順調に進捗し、増収となっています。
営業利益は、売上総利益率が資機材価格上昇の影響等により前年同期と比べ低下したことに加え販管費が増加しましたが、増収に伴い増益となりました。
開発事業等

不動産賃貸事業の増加を主因に、売上高、営業利益ともに前年同期を上回り、増収増益となっています。
なお、4Qに固定資産(賃貸用不動産)売却により、特別利益(40億円程度)の計上を予定しています。
国内関係会社

大型工事の損益改善や建物リース物件の売却などを主因に、前年同期比で増収増益となっています。
2022年3月期から「収益認識に関する会計基準」等を適用したことに伴い、建設資機材等の販売のうち、代理人取引に該当するものについて、純額で収益を認識する方法に変更していることから、売上高がFY2021四半期連結累計期間に比べ減少している。ただし、損益に影響はなく、また当該取引は主にグループ内における取引であるため、連結業績への大きな影響はない。
海外関係会社

売上高は、為替変動の影響もあり全ての地域において増加し、増益となっています。
営業利益は、北米における開発事業等の売上総利益増加を主因に、増益となっています。
テクニカル分析


長引くインフレに伴う収益性低下によって株価は下落していましたが、長期で見れば上昇トレンドの範囲にいます。
株価予想

EPSと株価の相関関係を使用して将来の価格を予想してみます。
株価からBPSを控除した金額の時間推移を利用した予測モデルをModel1、株価とEPSの相関を使用した予測モデルをModel2としています。
相関係数はModel1で54.6%、Model2で83.9%となっておりますので、株価とEPSには強い相関関係があるといえます。
相関係数の絶対値 | 一般的な解釈 |
---|---|
0~20% | ほとんど相関関係がない |
20~40% | やや相関関係がある |
40~70% | かなり相関関係がある |
70~100% | 強い相関関係がある |
Model1
Model1で算出した価格は2023年3期で1,808円、2024年3月期で1,915円となっています。

Model2
予想EPSは2023年3月期が198.6円、2024年3月期が202.4円となっており、Model2で算出した価格はそれぞれ1,491円、1,506円となっています。
