
ヒューリック株式会社について有価証券報告書や中期経営計画、ニュースリリースから投資価値を独自に分析していきます。
記事の最後には、EPSと株価の相関関係から算出した株価予想も記載していますので、最後まで読んでいただけますと幸いです。
Contents
ヒューリックの企業概要
企業名 | ヒューリック株式会社 | 設立年月日 | 1931/3 |
時価総額 | 8,116億円 | 業種別 時価総額順位 | 不動産業 4 / 142 社 |
上場年月 | 1949/5 | 上場市場 | 東証プライム |
従業員数 | 連 1496 名 単 189 名 | 外国法人持株比率 | 18.1% |
予想配当利回り | 3.77% | 監査法人 | EY新日本有限責任監査法人 |
業務内容 |
不動産賃貸や建替・開発などを展開。賃料収入の6割弱がオフィス賃貸。駅近ビル中心に好物件を保有。銀座や新宿、浅草、渋谷・青山が重点投資エリア。不動産売却価格が想定を超過し、21.12期実績は増収・増益。 記:2022/02/23 不動産賃貸や建替・開発などを展開。駅近ビル中心に好物件を保有し、オフィス賃貸に強み。銀座や新宿、浅草、渋谷・青山が重点投資エリア。リースバックや相互売買でポートフォリオの入替を継続し、中間期は経常増益。 記:2022/08/23 |
転載元:FISCO
JPX日経インデックス400構成銘柄への選定
ヒューリックは「JPX 日経インデックス400」の構成銘柄に選定されています。

「JPX 日経インデックス400」は、資本の効率的活用や投資者を意識した経営観点など、グローバルな投資基準に求められる諸条件を満たした「投資家にとって投資魅力の高い企業」で構成され、日本企業の魅力を内外にアピールするとともに、その持続的な企業の評価や株式の流動性だけでなく、企業の財務状況など、株式市場の活性化を図る事を目的として創生された株式指数です。
現在の投資の流行はインデックス投資ですから、インデックスの構成銘柄になることで大きな買い圧が生まれることが期待できます。
不動産業で JPX 日経インデックス400に採用されている会社は以下の通りです。

ヒューリックの事業について
ヒューリックは不動産の賃貸、開発、投資を主たる業務とする不動産会社です。
「成長性」「収益性」「安全性」「生産性(効率性)」を高次元でバランスしつつ、圧倒的なスピードによるダイナミックな転換を図り、更なる成長を実現することを基本方針に掲げています。

2014年に策定した前長期計画の中で10年後の目指す姿として「大手総合不動産会社と戦える総合的ポジションを確立する。2023年の経常利益850億円を目指す。」としていましたが、2019年で経常利益846億円となり4年前倒しで達成しています。
そして時価総額・経常利益は大手3社に次ぐ第4位のポジションを確立しています。
目標とする経営指標
2020年1月に策定した長期経営計画(2020-2029)及び中期経営計画(2020-2022)で掲げる定量目標及び達成状況については以下の通りです。

事業セグメント
ヒューリックの事業セグメントは以下の通りです。
セグメント | 取扱商品またはサービスの内容 |
---|---|
不動産事業 |
不動産賃貸業務、不動産開発業務、アセットマネジメント業務等を行う。 ヒューリックグループにおいては連結営業収益の約9割が「不動産事業」です。 a.不動産賃貸業務 グループの中核事業は、東京23区の駅近を中心に保有・管理する約260件(販売用不動産除く)の賃貸物件を活用した不動産賃貸事業で、安定的で効率的な収益構造を確立している。 この賃貸資産ポートフォリオを有効に活用し収益力の一層の強化をはかるため、建替による賃料収入の増強を実現し、安定的な賃貸収入を得るというのがヒューリックのビジネスモデルの中核になっている。 b.不動産開発・建替業務 保有物件の建替及び都心部の好立地において開発を行う。 従来から保有している賃貸物件の建替の着実な推進によるポートフォリオの質的改善をおこなっているほか、新規の物件取得・開発・売却を通じた付加価値創出の実現を目指し、好立地物件での高品質な開発業務を推進している。 c.アセットマネジメント業務 連結子会社ヒューリックリートマネジメント株式会社は、J-REIT事業への参入のため2014年2月に上場したヒューリックリート投資法人からアセットマネジメント業務を受託している。 また、連結子会社ヒューリックプライベートリートマネジメント株式会社は、2017年11月に運用を開始したヒューリックプライベートリート投資法人等からアセットマネジメント業務を受託している。 |
保険事業 |
連結子会社ヒューリック保険サービス株式会社は、損害保険会社18社及び生命保険会社22社と代理店契約を締結し、火災保険・自動車保険等の損害保険代理店業務、定期保険・養老保険等の生命保険及び医療保険等の募集業務を行う。 また、保険代理店業務に関連する集金代行業務も行う。 |
ホテル・旅館事業 |
連結子会社であるヒューリックホテルマネジメント株式会社は「THEGATE HOTEL」シリーズ、ヒューリックふふ株式会社は「ふふ」シリーズ、日本ビューホテル株式会社は「ビューホテル」シリーズを中心に、ホテル及び旅館の運営を行う。 |


ほとんどの売上高・利益が「不動産事業」から計上されています。
ヒューリックの業績
ヒューリックの過去の業績は以下の通りです。

EPSの推移と予想EPS

四半期EPS推移

2022年12月期2Qは、営業収益が247,429百万円(+12.4%)、営業利益は57,065百万円(△2.7%)、親会社に帰属する四半期純利益は36,999百万円(+2.9%)となりました。
2021 年 9 月 28 日開催の取締役会で84,805,000株の新株を発行(1株につき1,085円)することが決定され、EPS的には大きなマイナスインパクトですが前年同期比でこの伸びは素晴らしいですね。
セグメント別業績
ヒューリックは不動産事業、保険事業、ホテル・旅館事業のセグメントがありますが、売上・利益のほとんどを不動産事業で稼得しているので、不動産事業のみ記載します。
不動産事業

不動産事業は前年同期比で増収減益となっています。
利益率が低下傾向にある点は気になりますが、収益だけを見れば右肩上がりとなっています。
不動産事業-不動産売却

不動産事業-賃貸管理等

収益性の高い賃貸管理等で前年同期比で減収となっていることが、不動産事業全体として減益になった要因です。

もともとヒューリックは地価が高いエリアの一等地に保有する高品質な不動産が多く、今後も値段が上がっていくことを想定しているので収益は順調に計上されていくと考えています。
またヒューリック自身が不動産を開発し賃貸・売却しているので、効率的に収益を稼ぐ体制が確立できています。
大型複合ビル「大手町プレイス」の落札
財務省は9日、東京都千代田区の大型複合ビル「大手町プレイス」の政府保有分を不動産会社ヒューリックを中心とする企業連合に売却すると発表しました。(引用元:日経新聞)

売却額は4,000億円規模で、国内の不動産取引で過去最大です。
ちなみに国内の完成物件で取引額が最も大きかったのは21年に売却した「電通本社ビル」(東京・港)の約3,000億円でこちらもヒューリックが複数の企業や金融機関と共同で買ったものです。
ヒューリックは安定した収益を見込み、強気の投資に踏み切ったとのこと。ヒューリックはMSCIのESG格付では、国内不動産ディベロッパーとしては最高のAAを取得しており、低金利で借り入れコストが低いことが後押ししました。
3月からの急速な円安を受け、一時は海外勢が有利との見方がありましたが、世界経済の先行き懸念から欧米の大手ファンドは慎重になり、高値を提示しなかったようです。

3年間で1兆円を投資
中期計画の中で、今後3年間で約1兆円を投資し、経常利益1,100億円の達成を計画しています。
賃貸ポートフォリオ再構築に伴う物件入れ替えを進めることにより、一時的に賃貸事業比率が低下するものの、10年後の2029年には開発物件が積みあがるため、賃貸事業比率65~70%程度想定している。

2030年に向けた事業の方向性
最後に2030年に向けた事業の方向性について載せておきます。
10年後の目指す姿として「変革」と「スピード」をベースに、環境変化に柔軟に対応した進化を通じて、持続的な企業価値向上を実現する企業グループとしています。
KPIとしては以下の項目が掲げられています。
- 経常利益:1,800億円
- Debt/EBITDA:12倍以内
- ネットD/Eレシオ:3倍以内
- ROE:10%以上
テクニカル分析

2016年あたりから900-1,400円のレンジ相場が続いています。

これからインフレが続くとなると不動産業に投資冥利があります。
またEPSが2016年から増え続けているにもかかわらず不動産業の株価はレンジ相場、もしくは下落相場となっていたので、インフレを機に高くジャンプする土壌は揃っているのではないかと考えています。
株価予想

EPSと株価の相関関係を使用して将来の価格を予想してみます。
BPSを加味した株価とEPSの相関を使用した予測モデルをModel1、単純に株価とEPSの相関を使用した予測モデルをModel2としています。
上グラフを見ていただくと分かるのですが、EPSは右肩上がりに上昇しているにも関わらず株価は横ばいとなっています。

そのためEPSと株価の相関関係は有意性がないともいえるのですが、あくまで参考として有意性を持たせられるように2014/12期は外れ値として除外しています。
その結果、相関係数はModel1で43.1%、Model2で83.2%となっており、Model2についてはEPSと株価に強い相関があるといえます。
相関係数の絶対値 | 一般的な解釈 |
---|---|
0~20% | ほとんど相関関係がない |
20~40% | やや相関関係がある |
40~70% | かなり相関関係がある |
70~100% | 強い相関関係がある |
Model1
予想EPSは2022/12期が100.9円、2023/12期が109.4円となっており、Model1で算出した価格はそれぞれ1,503.5円、1,637.8円となっております。

Model2
予想EPSは2022/12期が100.9円、2023/12期が109.4円となっており、Model2で算出した価格はそれぞれ1,363.6円、1,445.9円となっております。
