ピックアップ企業
【企業別分析】大林組(1802)

株式会社大林組について有価証券報告書や中期経営計画、ニュースリリースから投資価値を独自に分析していきます。

記事の最後には、EPSと株価の相関関係から算出した株価予想も記載していますので、最後まで読んでいただけますと幸いです。

企業概要

企業名株式会社大林組
上場市場(上場年月)東証プライム(1958/12)
時価総額(業種別時価総額順位)7,114億円(建設業 5 / 166 社)
外国法人持株比率36.0%
予想配当利回り4.26 %
監査法人EY新日本有限責任監査法人
業務内容大手ゼネコンの一角。東京スカイツリー等で施工実績。省エネや免震・制震技術など先進的な技術開発力が強み。建設事業は増収。国内建築事業は伸び悩むが、円安効果等で海外建設事業が堅調。23.3期2Qは大幅増益。 記:2022/12/02

  転載元:FISCO

日経平均株価(日経225)およびJPX日経インデックス400構成銘柄への選定

大林組は「日経平均株価(日経225)」および「JPX 日経インデックス400」の構成銘柄に選定されています。

日経平均株価(日経225)」は、日本経済新聞社が発表する株価指数のことで、東証1部上場銘柄のうち、代表的な225銘柄をもとに計算されています。日本の株式市場の大きな動きを把握する代表的な指標として用いられ、投資信託や先物取引などの商品にも利用されています。

東証1部の代表的な銘柄を選定して指標としているため、定期的に組み入れ銘柄の見直しが行われていますが、分母(除数)の修正などで株式分割や銘柄入れ替えなど市況変動以外の要因を除去して指数値の連続性を保っています。

JPX 日経インデックス400」は、資本の効率的活用や投資者を意識した経営観点など、グローバルな投資基準に求められる諸条件を満たした「投資家にとって投資魅力の高い企業」で構成され、日本企業の魅力を内外にアピールするとともに、その持続的な企業の評価や株式の流動性だけでなく、企業の財務状況など、株式市場の活性化を図る事を目的として創生された株式指数です。

現在の投資の流行はインデックス投資ですから、インデックスの構成銘柄になることで大きな買い圧が生まれることが期待できます。

建設業で JPX 日経インデックス400に採用されている会社は以下の通りです。

競合他社

大林組の競合他社としては、同じく「スーパーゼネコン」と呼ばれる売上高1兆円以上のゼネコン5社が挙げられます。

スーパーゼネコンの強みについて、以下のようにまとめられます。

大成建設:海外事業に強く、アジアや中東などで多くのプロジェクトを受注する。また、再開発事業にも強く、木造住宅や高層ビルなど幅広い建築物を建設することができる。

大林組:環境やエネルギー分野に強く、再生可能エネルギー発電所や水処理施設などを手掛ける。また、建築物の高さや規模に関係なく品質を保つことができる技術力がある。

清水建設:地盤改良や地下工事に強く、地震や液状化に対する耐震性能を高める技術を持つ。また、オフィスビルや商業施設など都市開発における実績が豊富である。

鹿島建設:プラント事業や土木事業における難易度の高い工事や技術革新が高い。また、ゼネコンとして早期に不動産開発事業に進出し、豊富な実績を持つ。

竹中工務店:木造建築や伝統的な日本建築に強く、京都御所や二条城などの修復工事を行う。また、デザイン性や機能性に優れた建築物を提案することができる。

事業内容

大林組の事業内容は、建築・土木・不動産開発などの総合建設業です。

オフィスビル、商業施設、住宅、学校、病院、工場などの建築物や、道路、橋梁、トンネル、ダムなどのインフラ整備や、再生可能エネルギーなどの環境事業を展開しています。

強み・弱み

大林組の強みとしては、以下が挙げられます。

  • 木造ハイブリッド構造を用いた中高層建築物の開発
  • 研究開発に力を入れていること
  • 海外事業が多岐にわたっていること

一方で大林組の弱みとしては、以下が挙げられます。

  • 建設市場が縮小傾向にあること
  • 資材高や人手不足などのコスト増に対応しきれていないこと
  • 不動産開発事業で競争力が低いこと

大林組の将来性については、

  • 木造ハイブリッド構造を活用したCO2削減や地域活性化への貢献度が高いこと
  • 海外市場での受注拡大や新規参入が期待できること
  • サイプレス・スナダヤとの資本提携により製材事業への参入が可能になったこと

などから見ても明るく評価できます。

目標とする経営指標

大林組の目標とする経営指標は、「中期3カ年計画2022~2024」において以下のように示されています。

  • 売上高:2兆円
  • 営業利益:1000億円
  • ROE:10%
  • 自己資本比率:40%
バフェットコード

事業セグメント

大林組の事業セグメントは、以下の通りです。

セグメント取扱商品またはサービスの内容
国内建築事業国内における建築工事の請負及びこれに付帯する事業
海外建築事業海外における建築工事の請負及びこれに付帯する事業
国内土木事業国内における土木工事の請負及びこれに付帯する事業
海外土木事業海外における土木工事の請負及びこれに付帯する事業
不動産事業不動産の売買、賃貸並びに宅地開発等の開発事業及びこれに付帯する事業
その他PFI事業、再生可能エネルギー事業、金融事業及びゴルフ場事業等

売上の規模としては「国内建築事業」が最も大きく、「海外建築事業」、「国内土木事業」と併せて売り上げのほとんどを構成しています。

利益の規模としては「国内建築事業」と「国内土木事業」で太宗の利益が稼得されています。

不動産事業」は2022年3月期4Qより計上額が大きくなっています。

業績

大林組の過去の業績は以下の通りです。

SBI証券

EPSの推移と予想EPS

四季報データより作成

四半期EPS推移

四季報データより作成

2023年3月期3Qは、売上高は1兆4,410億円(前年同期比+4.7%増)、営業利益は657億円(前年同期比+42.5%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は565億円(前年同期比+47.4%増)となりました。

建設業界を取り巻く環境

国内建設投資は14年度以降上昇傾向にあるが、これは1つの工事が大型化しているためです。

1件当たりの工事が大型化する分、受注競争が激しくなり、工事採算は低下する一方となっています。

一方でサブコン(下請けの専門業者)の利益率は堅調推移しており、ゼネコンだけが冬の時代を迎えており、業者数が減らない限りゼネコンが生き残っていくのは難しいといわれています。

従来のように建設のみならず、非建設分野を拡充していくことが生き残っていくために重要となります。

建設RXコンソーシアム発足

施工ロボットやIoTを使った施工支援ツールの技術開発に取り組む「建設RXコンソーシアム」が発足しました。

スーパーゼネコンの鹿島建設、清水建設、竹中工務店は当初から参加しておりましたが、2022年11月には様子見していた大林組も参加しました。

大成建設にも参加を望む声はあるものの、大成建設は「異業種の知恵や知見を組み合わせてこそ、イノベーションの素地ができる」との考えがあり、現時点で参画は考えていないようです。

avatar
スーパーゼネコン唯一の非同族経営である大成建設らしいですね

国内建築事業

受注環境について

大型工事については依然として大手間の厳しい競争が続いているが、中型案件については比較的良い受注環境にあり、昨年度に比べると受注時採算は回復傾向にある。

需要については、製造業は国内回帰傾向などで機械や DX に関連する需要が旺盛である。

前年度以前に優先交渉権を獲得した大型案件で受注計上していないものもあるため、発注者との交渉次第では受注時採算に影響する可能性がある。

ただし、過去に優先交渉権を獲得した案件については資材価格の交渉が続いている状況のため、売上・利益につながるかは不透明。

来期以降の取り組みについて

首都圏を中心に多くの再開発案件があるので、採算性やキャパシティを十分に精査したうえで取り組んでいく。

avatar
国内建築については、競争激化かつ資材高騰により採算が取れない案件が増えており、2022年4Qには工事損失引当金を計上しています。

国内土木事業

完成工事総利益率について、第2四半期決算時には上期に高採算工事がほぼ終了し、下期は追加・変更が見込みにくいため採算が低下するとのことであったが、実際には上期から第3四半期にかけて利益率は概ね横ばいであった。

これは、第3四半期にも一定程度の設計変更や追加工事を獲得することが出来たのが要因である。

通期では見通しの変更は行っていないが、第4四半期の見込みにおいて不確定な設計変更や原価圧縮要素は織り込んでいないため上振れの可能性はある

不動産事業

不動産事業において当社及び子会社の大型不動産の売却があったことなどから、今年度は大幅に利益を計上している。

不動産については、今年度大規模物件の販売を行った影響で来年度は販売利益が減少するが、ポートフォリオの入替を継続するため、一定水準は販売利益を計上する見込みである。

テクニカル分析

TradingView
TradingView

ここ数年はレンジ相場を形成していますが、長期で見ると上昇トレンドにいます。

株価予想

EPSと株価の相関関係を使用して将来の価格を予想してみます。

株価からBPSを控除した金額の時間推移を利用した予測モデルをModel1、株価とEPSの相関を使用した予測モデルをModel2としています。

相関係数はModel1で62.9%、Model2で72.6%となっておりますので、株価とEPSには強い相関関係があるといえます。

相関係数の絶対値一般的な解釈
0~20%ほとんど相関関係がない
20~40%やや相関関係がある
40~70%かなり相関関係がある
70~100%強い相関関係がある

Model1

Model1で算出した価格は2023年3期で1,104円、2024年3月期で1,135円となっています。

Model2

予想EPSは2023年3月期が98.4円、2024年3月期が105.3円となっており、Model2で算出した価格はそれぞれ942円963円となっています。

Twitterでフォローしよう