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【企業別分析】清水建設(1803)

清水建設株式会社について有価証券報告書や中期経営計画、ニュースリリースから投資価値を独自に分析していきます。

記事の最後には、EPSと株価の相関関係から算出した株価予想も記載していますので、最後まで読んでいただけますと幸いです。

企業概要

企業名清水建設株式会社
上場市場(上場年月)東証プライム(1961/10)
時価総額(業種別時価総額順位)5,827億円(建設業 6 / 166 社)
外国法人持株比率20.2%
予想配当利回り2.84 %
監査法人EY新日本有限責任監査法人
業務内容ゼネコン大手。横浜ランドマークタワーなどで施工実績。エンジニアリング事業、文化遺産の保存・再生等も手掛ける。ジャカルタMRT2期工事(CP202工区)等を受注。完成工事高は増加。23.3期2Qは2桁増収。 記:2023/01/15

  転載元:FISCO

日経平均株価(日経225)およびJPX日経インデックス400構成銘柄への選定

清水建設は「日経平均株価(日経225)」および「JPX 日経インデックス400」の構成銘柄に選定されています。

日経平均株価(日経225)」は、日本経済新聞社が発表する株価指数のことで、東証1部上場銘柄のうち、代表的な225銘柄をもとに計算されています。日本の株式市場の大きな動きを把握する代表的な指標として用いられ、投資信託や先物取引などの商品にも利用されています。

東証1部の代表的な銘柄を選定して指標としているため、定期的に組み入れ銘柄の見直しが行われていますが、分母(除数)の修正などで株式分割や銘柄入れ替えなど市況変動以外の要因を除去して指数値の連続性を保っています。

JPX 日経インデックス400」は、資本の効率的活用や投資者を意識した経営観点など、グローバルな投資基準に求められる諸条件を満たした「投資家にとって投資魅力の高い企業」で構成され、日本企業の魅力を内外にアピールするとともに、その持続的な企業の評価や株式の流動性だけでなく、企業の財務状況など、株式市場の活性化を図る事を目的として創生された株式指数です。

現在の投資の流行はインデックス投資ですから、インデックスの構成銘柄になることで大きな買い圧が生まれることが期待できます。

建設業で JPX 日経インデックス400に採用されている会社は以下の通りです。

競合他社

清水建設の競合他社としては、同じく「スーパーゼネコン」と呼ばれる売上高1兆円以上のゼネコン5社が挙げられます。

スーパーゼネコンの強みについて、以下のようにまとめられます。

大成建設:海外事業に強く、アジアや中東などで多くのプロジェクトを受注する。また、再開発事業にも強く、木造住宅や高層ビルなど幅広い建築物を建設することができる。

大林組:環境やエネルギー分野に強く、再生可能エネルギー発電所や水処理施設などを手掛ける。また、建築物の高さや規模に関係なく品質を保つことができる技術力がある。

清水建設:地盤改良や地下工事に強く、地震や液状化に対する耐震性能を高める技術を持つ。また、オフィスビルや商業施設など都市開発における実績が豊富である。

鹿島建設:プラント事業や土木事業における難易度の高い工事や技術革新が高い。また、ゼネコンとして早期に不動産開発事業に進出し、豊富な実績を持つ。

竹中工務店:木造建築や伝統的な日本建築に強く、京都御所や二条城などの修復工事を行う。また、デザイン性や機能性に優れた建築物を提案することができる。

事業内容

清水建設グループは、建物やインフラなどの設計・施工・管理を行う建設事業、自社で開発したオフィスビルやマンションなどの賃貸管理や売却を行う不動産開発事業及び各事業に附帯関連する事業を営んでいます。

建設事業では、オフィスや商業施設、住宅、学校、病院など様々な建物を作ったり、道路や橋梁、トンネル、ダムなど社会に必要なインフラを作ったりしています。

また、海外でも約60カ国で工事を行っており、シンガポールや東南アジアなどで高層ビルや地下鉄などのプロジェクトに参加しています。

強み・弱み

清水建設の強みは以下の通りです。

  • 圧倒的な技術力
    医療・福祉施設やLNGタンクなどの高度な技術を持ち、品質や安全性にも優れています。
  • 豊富な実績
    江戸時代から210余年にわたり、歴史的な建造物を含め数多くの建物を手がけてきました。神社・寺院や国会議事堂などの伝統建築にも強みを持ちます。

清水建設の弱みは以下の通りです。

  • 国内市場に依存していること
    国内市場は人口減少やインフラ老朽化などで縮小傾向にありますが、清水建設は海外市場への進出が遅れています。
  • 海外事業が低調であること
    海外市場では競争が激しく、受注量や利益率が低下しています。特に東南アジアでは中国企業との競争に苦戦しています。

目標とする経営指標

清水建設は、2020年5月に「中期経営計画2023」を発表しました。この計画では、2030年度までに以下のような経営指標を目標としています。

  • 連結経常利益:2,000億円

また、2023年度の連結業績目標では、以下のような経営指標を見込んでいます。

  • 売上高:1兆8,800億円
  • 売上利益:2,350億円
  • 連結経常利益:1,400億円
  • ROE:10%以上
  • 配当性向:30%程度
バフェットコード

事業セグメント

清水建設の事業セグメントは、以下の通りです。

セグメント取扱商品またはサービスの内容
建設事業建物やインフラなどの設計・施工・管理を行う。
投資開発事業自社で開発したオフィスビルやマンションなどの賃貸管理や売却を行う。
その他当社が営んでいるエンジニアリング事業、LCV事業及び子会社が営んでいる各種事業を含む。
エンジニアリング事業では、環境保全やエネルギー資源開発に関する技術サービスを提供しています。
LCV(ライフサイクル・バリュエーション)事業では、建物やインフラの長期的な価値向上に向けたコンサルティングやメンテナンスサービスを提供しています。

売上の規模としては「建設事業」が一番大きく、続いて「その他」が大きくなっています。

「その他」には子会社の建設事業やエンジニアリング事業、LCV事業が含まれています。

利益は「建設事業」で太宗を稼得しています。

開発事業」では不動産の売却に応じて利益が変動し計上されます。

業績

清水建設の過去の業績は以下の通りです。

SBI証券

EPSの推移と予想EPS

四季報データより作成

四半期EPS推移

四季報データより作成

2023年3月期3Qは、売上高は1兆3,200億円(前年同期比+31.6%増)、営業利益は281億円(前年同期比+14.3%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は214億円(前年同期比△8.8%減)となりました。

建設業界においては、民間設備投資に持ち直しの動きが見られたものの、建設資材の価格高騰などの影響があり、厳しい経営環境が続きました。

建設業界を取り巻く環境

国内建設投資は14年度以降上昇傾向にあるが、これは1つの工事が大型化しているためです。

1件当たりの工事が大型化する分、受注競争が激しくなり、工事採算は低下する一方となっています。

一方でサブコン(下請けの専門業者)の利益率は堅調推移しており、ゼネコンだけが冬の時代を迎えており、業者数が減らない限りゼネコンが生き残っていくのは難しいといわれています。

従来のように建設のみならず、非建設分野を拡充していくことが生き残っていくために重要となります。

建設RXコンソーシアム発足

施工ロボットやIoTを使った施工支援ツールの技術開発に取り組む「建設RXコンソーシアム」が発足しました。

スーパーゼネコンの鹿島建設、清水建設、竹中工務店は当初から参加しておりましたが、2022年11月には様子見していた大林組も参加しました。

大成建設にも参加を望む声はあるものの、大成建設は「異業種の知恵や知見を組み合わせてこそ、イノベーションの素地ができる」との考えがあり、現時点で参画は考えていないようです。

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スーパーゼネコン唯一の非同族経営である大成建設らしいですね

建設事業

民間投資が増えたことなどにより売上増、受注増となっているものの、建設資材高騰などの影響で利益率は低下傾向にあります。

現状の低水準の利益率は、コロナによる情勢の悪化に加え、採算は厳しいが技術的な成長のために挑戦した大型案件が、急激な資材価格上昇の影響を受けてしまったことによるものであり、採算重視の受注活動の効果が出るには2年~3年程度かかる見込み

複数ある低採算の大型工事の消化が進み、2年~3年程度は全体の利益率を押し下げる要因となるため、急激な改善は見込めないが、その後は徐々に回復してくるとみている。

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国内建築については、競争激化かつ資材高騰により採算が取れない案件が増えています。

受注高・受注残高の状況

受注残高は大型案件獲得等により増加傾向にあるが、利益率の良くない案件が多く、利益率改善までに時間を要する。

リニューアル案件は利益率が比較的高く、積極的に受注したいと考えてはいるものの、施工中の超大型案件に人手が割かれており、思うように取り組めていないのが現状。

大型再開発案件

首都圏を中心とする大型再開発案件の受注を積極化した結果、競争激化による低採算受注や、昨今の資源高による工事損失が増加傾向にあります。

27年度竣工予定のトーチタワーについても、他の大手ゼネコンより20~30%低い入札額で落札しており、よほどの原価低減策がない限り赤字になるといわれています。

日本道路TOB

清水建設はグループ化により経営体質を強化しています。

持分法適用会社であった日本道路に対するTOBが2022年3月に成立し、清水建設による日本道路株式の持ち株比率は従来の25%弱から過半数超まで上昇しました。

日本道路の株式の過半数を握ることでより密に連携し、民間工事の受注拡大や海外事業展開を推し進める算段です。

SEP船(自己昇降式作業船)

非建設事業の拡充のため、世界最大級の大型SEP船を建造中です。

日本企業は12MWの大型風力設備に対応できるSEP船を保有していないため完成すれば、ブレードやタワー(支柱)といった風力用の部材を積める物量が特段増加することになります。

大型のSEP船の建造を単に洋上風力の工事受注につなげるだけではなく、船の賃料による運営収益も狙っています。

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ただ洋上風力の風車は大型化が進んでおり、今後世界は15MWクラスの競争になるため、いつまで12MWで収益が獲得できるかは不透明です。

テクニカル分析

TradingView
TradingView

長引くインフレに伴う収益性低下によって株価は下落していましたが、長期で見れば上昇トレンドの範囲にいます。

株価予想

EPSと株価の相関関係を使用して将来の価格を予想してみます。

株価からBPSを控除した金額の時間推移を利用した予測モデルをModel1、株価とEPSの相関を使用した予測モデルをModel2としています。

相関係数はModel1で60.3%、Model2で74.3%となっておりますので、株価とEPSには強い相関関係があるといえます。

相関係数の絶対値一般的な解釈
0~20%ほとんど相関関係がない
20~40%やや相関関係がある
40~70%かなり相関関係がある
70~100%強い相関関係がある

Model1

Model1で算出した価格は2023年3期で946円、2024年3月期で953円となっています。

Model2

予想EPSは2023年3月期が65.3円、2024年3月期が73.6円となっており、Model2で算出した価格はそれぞれ799円830円となっています。

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