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【企業別分析】東海旅客鉄道(9022)

東海旅客鉄道株式会社(以下、JR東海)について有価証券報告書や中期経営計画、ニュースリリースから投資価値を独自に分析していきます。

記事の最後には、EPSと株価の相関関係から算出した株価予想も記載していますので、最後まで読んでいただけますと幸いです。

企業概要

企業名東海旅客鉄道株式会社
上場市場(上場年月)東証プライム(1997/10)
時価総額(業種別時価総額順位)3兆4,422億円(陸運業 1 / 64 社)
外国法人持株比率23.4%
予想配当利回り0.82 %
監査法人有限責任監査法人トーマツ
業務内容国鉄民営化で誕生した東海地盤の鉄道会社。東海道新幹線が収益の柱。流通、不動産も。24.3期1Qは東海道新幹線の利用回復が継続。流通、不動産も伸びて大幅増収増益に。高進捗率ながら通期計画は変えず。増配予定。 記:2023/10/17

  転載元:FISCO

日経平均株価(日経225)およびJPX日経インデックス400構成銘柄への選定

東海旅客鉄道は「日経平均株価(日経225)」および「JPX 日経インデックス400」の構成銘柄に選定されています。

日経平均株価(日経225)」は、日本経済新聞社が発表する株価指数のことで、東証1部上場銘柄のうち、代表的な225銘柄をもとに計算されています。日本の株式市場の大きな動きを把握する代表的な指標として用いられ、投資信託や先物取引などの商品にも利用されています。

東証1部の代表的な銘柄を選定して指標としているため、定期的に組み入れ銘柄の見直しが行われていますが、分母(除数)の修正などで株式分割や銘柄入れ替えなど市況変動以外の要因を除去して指数値の連続性を保っています。

競合他社

東海旅客鉄道株式会社の競合他社としては、主に以下のような会社が挙げられます。

  • JR東日本(東日本旅客鉄道)(9020):東海道新幹線の東京~新大阪間で直通運転を行っている。また、首都圏や東北・北海道地方で在来線やリニアモーターカーを運行している。
  • JR西日本(西日本旅客鉄道)(9021):東海道新幹線の新大阪~博多間で直通運転を行っている。また、関西・中国・四国・九州地方で在来線や空港連絡鉄道を運行している。
  • 近畿日本鉄道(近鉄グループHLD傘下(9041)):名古屋市内や近郊で在来線を運行しており、JR東海と競合する路線が多い。また、関西地方や奈良・伊勢志摩などの観光地にも路線を持っている。
  • 東京地下鉄(非上場):首都圏で13路線を運行しており、JR東海とは特急列車「ひかり」の乗り入れ先である品川駅や新宿駅などで競合する。

これらの競合他社と差別化を図るために、JR東海は以下のような取り組みを行っています。

  • リニア中央新幹線の建設と開業:2027年には名古屋まで、2037年には大阪まで開業する予定。最高速度は500km/h以上となり、現在の新幹線よりも所要時間が大幅に短縮される。
  • 新幹線「N700S」型車両の導入:2020年から順次導入された最新型車両。安全性や快適性が向上し、災害時にも自走可能なバッテリー搭載システムを備えている。
  • 駅ビルや商業施設の開発と運営:名古屋駅周辺では「JRゲートタワー」や「グローバルゲート」などの高層ビルを建設し、オフィスやホテル、レストランなどを展開している。また、「エキナカ」と呼ばれる改札内コンコースでは、「キヨスク」「エキュート」「グランスタ」などのショッピング施設を提供している。

事業内容

東海旅客鉄道株式会社(JR東海)は、1987年4月1日に設立された鉄道事業者です。

主に東海地方を中心とした地域で、新幹線や在来線の運行を行っています。また、関連事業として、不動産やホテル、観光などのサービスも提供しています。

注目トピックとしては、リニア中央新幹線の建設が挙げられます。

これは世界初の超電導リニアモーターカーを用いた高速鉄道で、東京と名古屋を40分で結ぶ予定です。現在は相模原市などで駅の設置が進められています。

強み・弱み

JR東海の強みとしては、以下が挙げられます。

  • 東海道新幹線の独占的な運営権を持ち、高速・安定・快適な交通サービスを提供している。
  • リニア中央新幹線の建設と開業に向けて先進的な技術とノウハウを蓄積している。
  • 駅ビルや商業施設などの不動産事業で安定した収益基盤を築いている。

JR東海の弱みとしては、以下が挙げられます。

  • 新幹線事業に依存度が高く、需要の変動や競合他社の影響を受けやすい
  • リニア中央新幹線の建設費用が膨大であり、資金調達や回収に課題がある。
  • 在来線事業では利用者数が減少傾向にあり、経営効率が低い。

将来的には、以下の点が期待されます。

  • リニア中央新幹線の開業により、東京と名古屋・大阪間の移動時間が大幅に短縮され、交通需要や観光需要が増加する可能性がある。
  • 駅周辺地域の再開発やエキナカ事業などで駅機能を強化し、付加価値の高いサービスを提供することで収益力を高めることができる。

目標とする経営指標

調べてみましたが、東海旅客鉄道が目標とする経営指標や中期経営計画が見つかりませんでした。。

バフェットコード

事業セグメント

東海旅客鉄道の事業セグメントは、以下の通りです。

セグメント取扱商品またはサービスの内容
運輸業東海道新幹線及び東海地方の在来線における鉄道事業を行うほか、バス事業等を行っています。
流通業JRセントラルタワーズ内で百貨店事業を営むほか、主に、車内・駅構内における物品販売等を行っています。
不動産業駅ビル等不動産賃貸事業のほか、不動産分譲事業を行っています。
その他ホテル業、旅行業、広告業、鉄道車両等製造業及び建設業等を含んでいます。

売上高、利益の規模ともに「運輸業」で太宗が占められています。

業績

東海旅客鉄道の過去の業績は以下の通りです。

SBI証券

EPSの推移と予想EPS

四季報データより作成

四半期EPS推移

四季報データより作成

2024年3月期2Qは、売上高は8,175億円(前年同期比+28.9%)、営業利益は3,120億円(前年同期比+81.5%)、親会社株主に帰属する四半期純利益は1,950億円(前年同期比+101.2%)となりました。

運輸業

運輸業は固定費が大きい費用構造のため、売上高を伸ばせば利益率が改善していきます。

FY2024では東海道新幹線・在来線ともにインバウンド客を含めてご利用が増加したことから、売上が伸びています。

コロナ後の主要戦略

コロナ禍前は、収益力向上策として列車本数の増加を主要戦略とし、ビジネスのお客様の需要に対応して成果を上げてきましたが、コロナ禍の影響により、お客様の数が急減し、従来の戦略では対処できないと考え、新しいアプローチを模索してきました。

新しい取組みとして、京都キャンペーンやコンテンツとの連携など、従来にない方法を導入し、収益の多様化を目指しています。また、コスト削減にも取り組み、業務改革を進め、経営体力の再強化を図っています。

コロナ禍を通じて、新しい取組みを本気で行う契機とし、成果を着実に積み上げていく意向。

のぞみ12本ダイヤの増収効果

「のぞみ12本ダイヤ」は1時間で最大12本ののぞみ列車を運行するダイヤ改正です。2003年にはのぞみが片道最大7本でしたが徐々に増えて現在の12本になりました。

のぞみ12本ダイヤはコロナ禍でも実施し、2022年度には56日間実施。全体の列車本数も増加しています。

具体的な増収効果は難しいとのことですが、余裕のある列車本数と需要拡大の取組みを組み合わせて、増収に貢献する計画となっています。

EX旅パック・EX旅先予約のサービス開始

営業施策については、東海道・山陽・九州新幹線のネット予約・チケットレス乗車サービスである「エクスプレス予約」及び「スマートEX」をより多くのお客様にご利用いただくため、乗車日当日まで新幹線を変更可能な旅行商品である「EX旅パック」、新幹線の予約内容に基づき観光プランやホテル等のおすすめ情報の提供を行い、EXサービスサイト内で予約・決済を完結できる「EX旅先予約」等の10月のサービス開始に向けた準備を進めました。

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「EX旅先予約」はすでに新幹線を予約している方向けに旅先でのホテルやレンタカーを手配するサービス、「EX旅パック」は新幹線とホテルのセット商品です。
EX旅パックのポイント

EX旅パックには以下のように多くのメリットがありますが、一番のメリットは乗車日当日まで新幹線を変更可能なことですね。当日でも新幹線が変更できるのはありがたい。

あと1年前から予約でき、出発前日でも予約可能です。急に明日乗りたい!となっても予約できます。

新幹線チケットオンライン予約サービス「スマートEX」と「エクスプレス予約」の違い

スマートEXとエクスプレス予約は、どちらもネット予約とチケットレス乗車の利便性を提供するサービスです。ただし、利用手続きや商品価格などが異なります。
スマートEXは、JR東海が運営する無料の会員制度で、アプリをダウンロードして登録すれば即日利用可能です。東海道・山陽・九州新幹線(東京~鹿児島中央間)専用のサービスで、新幹線のチケットを購入することができます。
一方、エクスプレス予約は、年会費1,100円(税込)をお支払いいただくことで、お得な会員価格で利用可能です。在来線のチケットを購入することができます。

リニアの進捗状況

超電導磁気浮上式鉄道(以下、超電導リニア)による中央新幹線については、工事実施計画の認可を受けた品川・名古屋間について、用地取得等を進めるとともに、工事については、大深度地下をシールドマシンで掘削する第一首都圏トンネル東百合丘工区で、安全・安心の取組みを実地で確認する調査掘進の範囲の掘削を終えるなど、沿線各地で着実に工事を進めています。

なお、南アルプストンネル静岡工区においては、静岡県等の理解が得られず、トンネル掘削工事に着手できない状態が続いています。

静岡県がリニア中央新幹線の建設に反対している理由は、主に「水」に関する問題です。静岡県は、リニア工事中に山梨県内で出る地下水が静岡県側に流れ込むことを懸念しています。県は、リニア工事中の山梨県外への水流出について、「水1滴も県外流出は不許可」という姿勢を崩さないことを明言しています。また、静岡県は、南アルプストンネル工事期間中に湧水が約500万トン、山梨県側に流出すると試算されており、大井川流域の水量が減少する懸念があるため、県内の工事許可を出していないようです。

この大井川の水資源への影響について、国土交通省の「リニア中央新幹線静岡工区 有識者会議」が取りまとめた「大井川水資源問題に関する中間報告」を踏まえて、地域へのわかりやすい説明、リスク対応とモニタリングの具体化、工事の一定期間、例外的に県外へ流出するトンネル湧水量と同量を大井川に戻す方策の実現等に取り組んでいる状況です。

テクニカル分析

TradingView
TradingView

コロナ禍で人の動きが抑制されるとの懸念から2020年に大きく株価を落としましたが、その後は業績の回復とともに株価も上昇してきています。ただコロナ前の水準には業績も株価もまだ戻っていません。

信用ポジション状況

2023/10/27時点の信用ポジション状況は、以下の通りです。

信用売残110,100株
信用買残5,112,500株
信用残ネット(貸借倍率)5,002,400株(46.44倍)
出来高2,569,600株
回転日数(信用残ネット/出来高)1.94日
IR BANK

出来高のおよそ2倍の信用ネット残があり、買いが溜まっている状況です。

株価予想

EPSと株価の相関関係を使用して将来の価格を予想してみます。

株価からBPSを控除した金額の時間推移を利用した予測モデルをModel1、株価とEPSの相関を使用した予測モデルをModel2としています。

相関係数はModel1で84.4%、Model2で56.1%となっておりますので、株価とEPSにはかなり相関関係があるといえます。

相関係数の絶対値一般的な解釈
0~20%ほとんど相関関係がない
20~40%やや相関関係がある
40~70%かなり相関関係がある
70~100%強い相関関係がある

Model1

Model1で算出した価格は2024年3期で3,264円、2025年3月期で3,299円となっています。

Model2

予想EPSは2024年3月期が313.0円、2025年3月期が335.03円となっており、Model2で算出した価格はそれぞれ3,707円3,800円となっています。

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コロナショックでEPSがマイナスとなったFY2021、FY2022は除いていますが、除かない場合には以下のようになります。

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