
ZOZO(3092)は、年間購入者数×平均出荷単価×受託手数料率で利益水準が左右されやすい国内最大級ファッションECプラットフォーム企業
本記事では、ZOZOTOWNの受託販売モデルを軸に、購入者数・単価・物流コストがどのように利益に伝わるかを因果構造で解説する。
💡 ワンポイント解説:まずざっくり言うと
ZOZOは自分で服を仕入れて売る会社ではなく、ブランドの商品をネット上で代わりに売り、手数料を受け取るモデルです。つまり「何人が買ったか」「1回あたりいくら使ったか」が手数料収入に直結し、在庫リスクをほぼ負わないぶん、購入者数と単価の動きがそのまま利益を左右します。
この記事の結論
ZOZOの利益を最も動かすのは、ZOZOTOWN受託販売の商品取扱高であり、これは年間購入者数(FY2025実績:約1,317万人)×購入頻度(約11回/年)×平均出荷単価(8,864円)の掛け算で近似できる。
FY2025(2026年3月期)は商品取扱高が前期比+8.4%の6,660億円、調整後EBITAが726億円(+10.2%)と6期連続で過去最高益を更新した一方、平均商品単価は前年比▲1.6%と下落傾向が続いており、購入者数の伸びで単価下落を補う構造にある。
投資家が次回決算で確認すべき先行指標は、①年間購入者数・出荷件数の増加ペース、②平均商品単価・平均出荷単価の下落が止まるか、③物流コスト比率(習志野3の稼働開始に伴う二重コストの影響)の3点である。
Contents
企業概要
ZOZO, Inc.(証券コード:3092)は、国内最大級のファッションECサイト「ZOZOTOWN」を運営する企業です。親会社はLINEヤフー(旧Z Holdings)であり、Yahoo!ショッピングとの相互送客を通じた連携基盤を持ちます。決算期は3月末で、FY2025は2025年4月〜2026年3月(2026年3月期)を指します。
2026年5月には香水サブスクリプションサービス「カラリア」を運営するHigh Linkを完全子会社化(取得金額49.5億円)し、ファッション周辺領域(Near Fashion)への拡張を進めています。
ビジネスモデル
ZOZOのコアビジネスは受託販売モデルです。ブランド企業がZOZOTOWNに商品を預け、ZOZOが販売・物流・決済を代行し、売れた金額に対する手数料を受け取ります。最大の特徴は、在庫リスクを原則ブランド側が負うため、ZOZO自身の在庫リスクがほぼゼロである点です。
これに加え、ZOZOTOWNの購買データを活用した広告事業、Yahoo!ショッピング/オークション経由のLINEヤフーコマース、ブランド向けEC開発・物流受託のBtoB事業、海外ファッションプラットフォームLYST(Global領域)、香水サブスクHigh Link(Near Fashion領域)が収益源として存在します。
💡 ワンポイント解説:「受託販売」とは?
受託販売とは、ブランドから預かった商品を代わりに販売し、売れた分だけ手数料を受け取る仕組みです。自分で在庫を買い取る必要がないため、売れ残りのリスクがほぼなく、手数料収入が安定しやすいのが特徴です。
収益構造
利益構造の見方
以下はZOZOの利益を左右する主要項目の見方です。受託手数料率やセグメント別営業利益は会社非開示のため、単純合算で売上高や営業利益と一致させるものではありません。
| 階層 | 項目 | FY2025実績 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 売上の源泉① | ZOZOTOWN受託販売取扱高 | 4,927億円 | 最大のドライバー |
| 売上の源泉② | LINEヤフーコマース取扱高 | 789億円 | 前期比+13.4% |
| 売上の源泉③ | 広告事業 | 119億円 | 高利益率だが成長上限あり |
| 売上の源泉④ | USED・買取・製造販売 | 239億円 | 在庫リスクあり |
| 売上の源泉⑤ | BtoB事業 | 84億円 | ブランド29社受託 |
| 売上の源泉⑥ | LYST(Global) | 422億円 | FY2026計画71億円へ大幅縮小 |
| 主要コスト① | 物流コスト(配送・倉庫) | 会社非開示 | 出荷件数連動+設備投資拡大中 |
| 主要コスト② | プロモーション費用 | 商品取扱高比約4.8% | 4.8〜5.5%レンジで管理 |
| 調整後EBITA | 726億円 | 前期比+10.2% | |
| 営業利益 | 694億円 | のれん償却等含む | |
| 当期純利益 | 479億円 | 過去最高、前期比+5.7% | |
事業別売上構成と主要顧客
| 事業 | FY2025実績(億円) | 構成イメージ | 主要顧客層 |
|---|---|---|---|
| ZOZOTOWN受託販売 | 4,927 | 最大 | 国内ファッション消費者(女性72%・男性28%、25〜44歳中心) |
| LINEヤフーコマース | 789 | 第2の柱 | LINEヤフー経由ユーザー |
| LYST | 422 | 縮小中 | 海外ラグジュアリー消費者 |
| USED・買取・製造 | 239 | 成長中 | 中古服購入者・売却者 |
| 広告事業 | 119 | 高利益率 | ZOZOTOWN出店ブランド(広告主) |
| BtoB事業 | 84 | 安定 | ブランド企業29社 |
| その他(High Link等) | 199 | 投資フェーズ | 香水購入者(カラリア定期便加入者) |
売上の数式的分解
| 変数 | FY2025水準 | 方向感 |
|---|---|---|
| 年間購入者数 | 約1,317万人 | 増加傾向 |
| 年間購入頻度 | 約11回/年 | 安定 |
| 平均商品単価 | 3,974円(前年比▲1.6%) | 下落傾向 |
| 平均出荷単価 | 8,864円(前年比▲1.3%) | 下落傾向 |
| 受託手数料率 | 会社非開示 | 安定と推定 |
受託販売取扱高は「購入者数 × 購入頻度 × 平均出荷単価」の掛け算で近似でき、ここに受託手数料率を掛けたものがコア売上高に相当します。FY2025は購入者数・出荷件数の増加が単価下落を補い、取扱高は前年比+12.4%と堅調でした。
過年度業績推移
| 指標 | FY2024(2025年3月期)実績 | FY2025(2026年3月期)実績 | FY2026(2027年3月期)会社計画 |
|---|---|---|---|
| 商品取扱高(その他除く) | 約6,144億円 | 6,462億円(+12.4%) | 6,786億円(+5.0%) |
| 商品取扱高(全体) | 約6,149億円 | 6,660億円(+8.4%) | 会社非開示 |
| 調整後EBITA | 会社非開示 | 726億円 | 779億円(+7.2%) |
| 営業利益 | 会社非開示 | 694億円 | 744億円 |
| 当期純利益 | 約453億円 | 479億円(+5.7%) | 497億円 |
| EBITDAマージン(対取扱高全体) | 会社非開示 | 11.6% | 会社非開示 |
CFOメッセージによると6期連続過去最高益更新です。FY2025の純利益の伸び(+5.7%)が調整後EBITAの伸び(+10.2%)を下回った背景には、M&A関連費用446.3億円(2026年1Q計上)および研究開発税制控除の縮小による実効税率上昇があり、一時要因を含みます。恒常的な成長率の把握には調整後EBITAの推移を優先的に確認すべきです。
過年度(FY2023以前)の売上高・営業利益の絶対値は資料非開示のため、表記は取得できた範囲に限定しています。
売上のドライバー

ドライバー①:国内ファッション消費 → ZOZOTOWN受託販売取扱高
ZOZOの利益を最も大きく左右するのは、国内消費者のファッションEC支出です。因果構造は以下の3段階以上で分解できます。
【最上流】消費者の可処分所得・消費マインド
国内アパレル総小売市場は2024年に8兆5,010億円(前年比+1.7%、矢野経済研究所調査)と4年連続プラス成長でした。ただし賃上げが続く一方で物価上昇が家計を圧迫しており、2026年4月の東京都区部CPI(生鮮食品除く)は前年同月比+1.5%と上昇基調が続いています。可処分所得の実質的な増減がファッション消費の土台を決めます。
【中流】アパレルEC化率の上昇
ZOZO会社推定では国内ファッションEC化率は約28%です。国内EC市場全体は2024年にBtoC 26.1兆円(前年比+5.1%、経済産業省調査)と拡大を続けており、アパレル分野でもオンラインシフトの余地が残ります。特に35歳未満女性のEC利用率向上がZOZOTOWNの購入者増につながりやすい構造です。
【下流・企業指標】年間購入者数 × 出荷件数 → 取扱高
FY2025の年間購入者数は約1,317万人、4Q単独の出荷件数は約1,630万件(前年同期比+9.2%)と好調でした。この「人数×頻度×単価」の掛け算が受託販売取扱高4,927億円を生み出しています。
利益への伝わり方: 受託手数料率は会社非開示ですが固定的とされ、取扱高が1%増えればほぼ同率で手数料収入が増えるレバレッジ構造にあります。仮に取扱高4,927億円に対し手数料率を一定とすると、取扱高が+100億円(約+2%)増加した場合、手数料収入も概算で同率程度増加し、限界コストが小さいぶん調整後EBITAへの寄与は大きいと推定されます。【筆者推定・会社非開示】
誰が買うか: 最終購入者は国内ファッション消費者(女性72%・男性28%、25〜44歳中心)です。出店側の意思決定者はブランド企業のEC担当者であり、ZOZOTOWN出店を継続するか自社EC回帰するかの判断が品揃えを左右します。FY2025末時点で11,247ブランドが出店しています。
ドライバー②:出店ブランド数・品揃え → 購入転換率・頻度
【最上流】ブランド側のEC戦略
D2C(自社EC直販)化の進展とその反動(モール回帰の動き)がZOZOTOWNの品揃えを左右します。ZOZOの物流・システム・決済インフラの競争力が高いほど、ブランド企業がZOZOTOWNへ出店を継続する動機が強まります。
【中流】競合モールとの出店獲得競争
楽天市場やAmazon Japanといった総合ECモールに加え、韓国発のMUSINSAとの提携(資本関係の詳細は会社非開示)もブランド数拡大に寄与しています。FY2025末のブランド数は前年比+2,198と大幅増で、MUSINSA連携効果が含まれます。
【下流】品揃え拡充 → 購入転換率・頻度向上
ブランド数が増えることで商品検索の網羅性が高まり、購入転換率が改善します。年間購入点数は約11点/年と安定推移しており、「もう1点追加で買う」行動を促すUX改善(AI活用パーソナライズ等)が頻度向上のカギです。
誰が買うか: 出店を決定するのはブランド企業のEC/デジタル担当者です。需要の具体例として、MUSINSA連携による韓国ファッションブランドの大量追加がFY2025のブランド数急増を牽引しました。
ドライバー③:広告事業──ユーザーデータの収益化
【最上流】ブランド企業のデジタル広告予算拡大
2025年の日本の総広告費は前年比+5.1%の8兆623億円と過去最高を更新し、インターネット広告が初めて全体の5割を超えました(電通「2025年 日本の広告費」)。Cookieレス時代の到来でファーストパーティデータ(自社が直接取得した購買データ)の価値が高まっています。
【中流】ZOZOTOWNの購買データ × WEAR(コーデアプリ、2,000万DL超)のデータ
ZOZOTOWNに蓄積された1,317万人分の購買履歴・閲覧履歴は、ファッション特化型広告インベントリーとして希少性があります。
【下流】広告売上:FY2025実績119億円(+6.0%)
ただし会社自身が「UI/UX毀損防止のため広告枠の増加を自制している」と説明しており、広告事業の成長には構造的な上限があります。限界費用がほぼゼロであるため高利益率と推定されますが、セグメント別利益は非開示です。
感応度の参考: 広告事業が+10%成長した場合、約12億円の増収効果となりますが、枠自制の方針から大幅な伸びは見込みにくい状況です。【筆者推定・会社非開示】
誰が買うか: ZOZOTOWN出店ブランドのマーケティング担当者が広告予算の配分を決定します。
ドライバー④:LINEヤフーコマース──第2の成長エンジン
Yahoo!ショッピング/オークション経由の手数料収入で、FY2025実績は789億円(前期比+13.4%)と高成長を維持しています。LINEヤフーとの相互送客により、ZOZOTOWNに来ないユーザー層を補完する役割を果たしています。FY2026計画は866億円(+9.7%)です。
誰が買うか: LINEヤフー経由のファッション購入者です。LINEのユーザー基盤(月間利用者数9,000万人超)からの流入がドライバーとなります。
ドライバー⑤:Near Fashion・Global──中長期の追加収益柱
Near Fashion領域ではHigh Link(カラリア:香水サブスク)がFY2026に売上20〜30億円程度の連結効果を見込んでいます。国内香水市場は会社推定で約2,500億円規模とされ、サブスクリプション型の定期便ビジネスとして成長が期待されます。
一方、Global領域のLYSTはFY2025の取扱高422億円からFY2026計画71億円へ大幅縮小の見通しです。米関税制度変更(低価格品免税枠の廃止)とラグジュアリー市場の低迷が重なっており、AIエージェント化による収益構造転換が回復のカギですが、実現時期は不明です。
会社の中期計画では2030年3月期にNear Fashion・Globalそれぞれ50億円の利益貢献を目指していますが、現在は投資フェーズであり、More Fashionの利益を侵食するリスクがあります。会社は「のれん償却除く赤字は各期20億円まで許容する」方針を明言しています。
💡 ワンポイント解説:「調整後EBITA」とは?
調整後EBITAとは、M&Aに伴うのれん償却や一時的な費用を除いた本業の収益力を測る指標です。ZOZOはLYSTやHigh Linkの買収で発生するのれん償却を除いて本業の実力を示すためにこの指標を重視しています。FY2028年度以降は「商品取扱高(その他除く)」の開示を廃止し、調整後EBITAを主要指標とする方針です。
先行指標
| 指標名 | 現在の数値・水準 | 直近の変化 | 企業への影響 | 重要度 |
|---|---|---|---|---|
| 年間購入者数 | 約1,317万人(FY2025末) | 増加傾向 | 受託販売取扱高の最大ドライバー | 高 |
| 出荷件数(ZOZOTOWN) | FY2025 4Q:約1,630万件 | 前年同期比+9.2% | 取扱高増加と物流コストの両面に連動 | 高 |
| 平均商品単価 | 3,974円(FY2025通期) | 前年比▲1.6%、下落傾向 | 単価下落が続けば取扱高の伸びが鈍化 | 高 |
| 物流コスト比率 | 会社非開示 | 習志野3稼働で増加圧力 | EBITAマージンに直結 | 高 |
| 出店ブランド数 | 11,247ブランド(FY2025末) | 前年比+2,198 | 品揃え拡充→購入転換率向上 | 中 |
| LINEヤフーコマース取扱高 | 789億円(FY2025) | 前期比+13.4% | 第2の成長源として貢献拡大 | 中 |
| 国内アパレル総小売市場規模 | 8兆5,010億円(2024年、矢野経済研究所) | 前年比+1.7%、4年連続プラス | 国内ファッション消費の土台指標 | 中 |
| 実質プロモーション費用比率 | 約4.8%(対商品取扱高、FY2025) | 横ばい、計画レンジ内 | 比率上昇は利益率圧迫 | 中 |
| LYST取扱高 | 422億円(FY2025)→計画71億円(FY2026) | 大幅縮小見通し | Global領域の収益下押し | 低 |
| 国内CPI(生鮮食品除く) | 東京都区部2026年4月:前年同月比+1.5%(総務省) | 上昇基調だが伸び率鈍化 | 消費マインドへの間接影響 | 低 |
LYST取扱高の重要度を「低」としたのは、FY2026計画で71億円まで縮小しグループ全体への利益寄与が限定的なためです。ただし、LYSTのAIエージェント化が進展しラグジュアリー市場が回復した場合、中長期ではGlobal領域が再び成長ドライバーとなる可能性があります。
国内CPIについても現時点では間接的な影響にとどまりますが、物価上昇率が加速し可処分所得が実質的に減少するシナリオでは、ファッション消費はサイクリカルに落ち込むため重要度が上がり得ます。
先行指標を左右する要因
| 先行指標 | 増加要因 | 減少要因 |
|---|---|---|
| 年間購入者数 | 消費マインド回復、AI活用UX改善、LINEヤフー送客拡大、プロモーション投資 | 景況感悪化・物価高による消費抑制、競合ECプラットフォーム(楽天・Amazon)との顧客獲得競争 |
| 平均商品単価 | ラグジュアリーブランドの出店増、景況感改善によるセール比率低下 | セール施策の増加、カジュアルブランド比率上昇、消費者の低価格志向 |
| 出荷件数 | 購入者数増×購入頻度向上、「お気に入り」通知等のリテンション施策 | まとめ配送施策(環境配慮)による件数抑制、消費マインド悪化 |
| 出店ブランド数 | ZOZOの物流・システム競争力、D2Cからモール回帰の動き | ブランド終了・自社EC回帰、競合モールへの移転 |
| 物流コスト | 配送委託先との契約交渉・自動化投資の稼働 | 燃油サーチャージ上昇、ドライバー不足、中東情勢に伴う供給懸念 |
業績予測
| シナリオ | 商品取扱高(その他除く) | 調整後EBITA | 当期純利益 | 前提条件 |
|---|---|---|---|---|
| ベースケース(会社計画) | 6,786億円(+5.0%) | 779億円(+7.2%) | 497億円 | 購入者数の緩やかな増加継続、LINEヤフー貢献拡大、LYST縮小の影響を一部吸収、習志野3の賃借料月額約1.6億円が下期から発生 |
| 上振れ(前提付き試算) | 会社予想比で上振れ余地 | 会社予想比で上振れ余地 | 会社予想比で上振れ余地 | 平均商品単価の安定・反転、出荷件数の想定以上の伸び、High Linkのユーザー獲得加速、消費マインド改善 |
| 下振れ(前提付き試算) | +5%成長未達リスク | 横ばい〜微減リスク | 営業利益率の低下リスク | 平均商品単価の継続的下落、プロモーション費用比率上昇、Near Fashion・Global赤字拡大がMore Fashion利益を侵食、物流コスト予期せぬ上昇 |
ベースケースは会社計画をそのまま採用しています。上振れ・下振れについては、受託手数料率やセグメント別利益が非開示のため具体的な金額レンジを精緻に算出することが困難であり、方向性の提示にとどめています。
純利益については、FY2026から研究開発税制控除がなくなることで実効税率が上昇する見込みであり、調整後EBITAの伸び(+7.2%)に対し純利益の伸び(+3.8%)が小幅になる点に留意が必要です。
将来性・成長性
中期経営計画(4カ年:FY2025〜FY2029)
| 領域 | 位置づけ | FY2029(2030年3月期)利益目標 | FY2025実績の水準 |
|---|---|---|---|
| More Fashion | 安定的な利益創出エンジン | 800億円 | 黒字(中核、調整後EBITA 726億円は全社ベース) |
| Near Fashion | 新規事業・トライ&エラー | 50億円 | 収支均衡〜小幅赤字 |
| Global | 長期投資フェーズ | 50億円 | 赤字(投資フェーズ) |
合計で調整後EBITA 900億円が目標です。FY2025実績726億円からの+24%成長に相当し、More Fashion領域で毎年200億円超の商品取扱高積み上げが前提条件とされています(ZOZO IR)。
短期(1年): FY2026はMore Fashionの着実な成長で調整後EBITA 779億円の計画達成が焦点。LYST縮小のマイナスをZOZOTOWN+LINEヤフーの取扱高増で吸収できるかが鍵です。
中期(2〜3年): 物流拠点の再編(習志野3の2027年8月本格稼働→習志野2の2028年3月末契約満了)が完了すれば、二重コスト期間が解消し単位出荷あたりコストの改善が見込まれます。自動化リプレイスに25億円を投資中です。
長期(4年以上): Near Fashion(High Link等)とGlobal(LYST)がそれぞれ50億円の利益を生む計画ですが、現時点では投資フェーズにあり、達成時期と確度は不透明です。特にLYSTのAIエージェント化の成否が中長期の成長戦略を大きく左右します。
競争優位性
ZOZOの競争優位は以下の3点に集約されます。
①在庫リスクを負わない受託販売モデル: ブランドが在庫を保有し、ZOZOは手数料のみを受け取るため、アパレル小売特有の在庫リスクをほぼ負いません。総合ECモール(楽天・Amazon)が自社在庫を持つケースと対照的です。
②国内ファッション特化の購買データ: 1,317万人分のファッション購買・閲覧データは広告事業やパーソナライズ機能の基盤となり、汎用ECにはない深度を持ちます。WEARアプリ(2,000万DL超)のコーディネートデータとの組み合わせも独自資産です。
③自社物流インフラ(ZOZOBASEシリーズ): 自社倉庫による一貫した入荷・検品・撮影・出荷が、ブランドの出店コストを下げ、スイッチングコストを高めています。
同業他社比較
ZOZOのビジネスモデルは純粋なファッション特化EC受託販売であり、総合ECモールや百貨店系ECとは収益構造が異なります。以下は定性的な比較です。
| 比較軸 | ZOZO(3092) | 楽天グループ(4755) | ユナイテッドアローズ(7606) |
|---|---|---|---|
| 主力モデル | 受託販売(手数料型) | 総合ECモール(出店料+手数料型) | SPA型(自社ブランド仕入・販売) |
| 在庫リスク | ほぼゼロ | 自社仕入品は保有あり | 大きい(仕入在庫) |
| ファッション特化度 | 極めて高い | 総合(ファッションは一部門) | 極めて高い(実店舗中心) |
| 自社物流 | ZOZOBASEシリーズで自社運営 | 楽天スーパーロジスティクス | 主に外部委託 |
| 海外展開 | LYST(苦戦中)、MUSINSA連携 | グローバルEC展開中 | 限定的 |
| 差別化ポイント | 購買データ×WEAR×低在庫リスク | ポイント経済圏 | ブランド力・接客力 |
楽天グループ(4755)は総合ECとしてファッション以外のカテゴリも含む巨大プラットフォームですが、ファッション領域のデータ深度ではZOZOに優位性があります。ユナイテッドアローズ(7606)は自社ブランドを仕入れて販売するSPA型であり、在庫リスクの有無がZOZOとの最大の違いです。
💡 ワンポイント解説:「EC化率」とは?
EC化率とは、小売市場全体の売上に対してネット通販が占める割合のことです。国内ファッションのEC化率は会社推定で約28%。つまり、ファッション消費の7割以上はまだ実店舗で行われており、ZOZOにとってはオンラインシフトが進むほど市場が広がるという構造にあります。
リスク
| リスク項目 | 内容 | 影響度 | 顕在化条件 | 対称性(強気材料との裏表) |
|---|---|---|---|---|
| 平均単価の下落継続 | セール増加により平均商品単価▲1.6%、平均出荷単価▲1.3%(FY2025)。単価下落が購入者増による取扱高成長を相殺するリスク | 大 | 景況感悪化・セール比率さらなる上昇 | 購入者数増加による取扱高成長の裏返し。件数で補えるうちは問題ないが、限界がある |
| 物流コスト増加 | 習志野3の賃借料(月額約1.6億円、下期開始)+自動化投資の減価償却増。習志野2契約満了(2028年3月末)まで二重コスト期間が発生 | 大 | 二重コスト期間中に出荷件数の伸びが鈍化した場合 | 物流投資は中長期のコスト効率改善の布石であり、習志野2退去後に単位コストが下がる可能性の裏返し |
| LYST事業の縮小 | FY2025の422億円→FY2026計画71億円へ大幅減。米関税+ラグジュアリー不振 | 中 | AIエージェント化転換が遅延し赤字が継続 | Global50億円利益目標の達成が遅れる可能性 |
| Near Fashion赤字拡大 | High Link等の加入者獲得が想定未達の場合、More Fashionの利益を侵食 | 中 | のれん償却除く赤字20億円/期の上限を超過 | Near Fashionの黒字化が実現すれば成長加速 |
| 消費マインド悪化 | 物価高継続→可処分所得圧迫→ファッション消費はサイクリカルに減少 | 中 | CPI上昇率が加速し実質賃金がマイナスに転じた場合 | 消費マインド改善時にはファッション支出が回復しやすい |
| ブランド退店リスク | 自社EC回帰・ブランド終了による出店数減少→品揃え・転換率低下 | 中 | 主要ブランドが一斉に自社EC強化に転じた場合 | D2C疲れによるモール回帰が増えればプラスに転じる |
| 税制変更 | 防衛特別法人税強化・研究開発税制控除縮小による実効税率上昇 | 小 | FY2026以降、税制改正が成立した場合 | ― |
まとめ
ZOZOの利益構造は、ZOZOTOWN受託販売の商品取扱高(=購入者数×購入頻度×平均出荷単価×手数料率)を軸に、LINEヤフーコマースと広告事業が利益率を底上げするプラットフォームモデルです。FY2025は6期連続過去最高益を達成しましたが、平均単価の下落傾向が続いており、購入者数の伸びで補う構造がいつまで持続するかが中期的な焦点です。
Near Fashion(High Link)とGlobal(LYST)は現在投資フェーズにあり、短期的にはMore Fashionの利益を侵食する可能性がありますが、中期計画の目標であるFY2029の調整後EBITA 900億円を達成するには、これらの領域の黒字化が不可欠です。
次の四半期決算で確認すべき3指標:
① 年間購入者数・出荷件数(1,317万人・出荷件数+9.2%のペースが維持されるか。取扱高の最上流指標)
② 平均商品単価・平均出荷単価(3,974円・8,864円の下落傾向が止まるか。セール比率の動向がカギ)
③ 物流コスト比率(習志野3の賃借開始による二重コストの影響が調整後EBITAマージンにどう表れるか)
参照資料
- ZOZO, Inc. FY2025(2026年3月期)決算説明資料・中期経営計画(ZOZO IRページ)
- 矢野経済研究所「国内アパレル市場に関する調査(2025年)」──2024年のアパレル総小売市場規模8兆5,010億円
- 電通「2025年 日本の広告費」──総広告費8兆623億円、インターネット広告費が初の5割超
- 総務省「消費者物価指数」──東京都区部2026年4月速報値
よくある質問
Q. ZOZO(3092)の業績ドライバーは何ですか?
A. ZOZOの業績を最も左右するのはZOZOTOWN受託販売の商品取扱高です。これは年間購入者数(FY2025実績:約1,317万人)×購入頻度(約11回/年)×平均出荷単価(8,864円)で近似でき、ここに受託手数料率を掛けた金額がコア売上になります。加えて、LINEヤフーコマース(FY2025:789億円、+13.4%)と広告事業(119億円)が利益率を底上げしています。
Q. ZOZO(3092)への投資リスクは何ですか?
A. 最大のリスクは平均商品単価の下落傾向が続くことです。FY2025は▲1.6%で、セール比率の上昇が単価を押し下げています。購入者数の増加で取扱高成長を維持していますが、件数で補えなくなった場合に成長が鈍化します。また、物流拠点の二重コスト期間(習志野3稼働〜習志野2退去まで)も短期的な利益圧迫要因です。
Q. ZOZO(3092)が恩恵を受ける条件は何ですか?
A. 国内の消費マインドが改善し、ファッションEC化率(現在約28%、会社推定)がさらに上昇する環境が最大の恩恵条件です。具体的には、実質賃金のプラス転換によりセール比率が低下し平均商品単価が反転すれば、購入者数増×単価安定の好循環に入りやすくなります。加えて、LINEヤフーとの送客シナジー拡大やAI活用によるパーソナライズ精度向上が購入頻度を押し上げる追い風となります。
本記事は、AIを活用して決算説明資料、中期経営計画、統合報告書、各種開示資料、ニュースを整理したうえで作成し、公開前にFIC投資研究所が内容確認と編集を行っています。本記事は特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断は読者自身の責任で行ってください。掲載情報の正確性には万全を期していますが、将来の業績や株価を保証するものではありません。









