業界分析
ツルハHD(3391)ウエルシア統合で売上2.5兆円へ──既存店・調剤・PBの3軸で利益率5%を目指す因果構造

ツルハホールディングス(3391)は、既存店客数×客単価・調剤処方箋枚数・PB売上比率の3変数で利益が左右されやすい国内最大規模のドラッグストアチェーン

本記事では、ウエルシアHDとの経営統合で売上高2兆5,550億円規模に拡大したツルハHDの利益がなぜ動くのか、既存店売上・調剤・PBの因果構造と先行指標を解説する。

💡 ワンポイント解説:まずざっくり言うと

ツルハHDは、薬・化粧品・食品・日用品を売るドラッグストアの最大手です。2026年2月期にウエルシアHDを子会社にし、合計約8,400店を展開しています。利益を大きく左右するのは、①毎日の来店客数と買い物単価(既存店売上)、②薬局の処方箋で稼ぐ調剤売上、③自社ブランド商品(PB)の比率──この3つです。

この記事の結論

ツルハHDの利益は、既存店の客数×客単価の伸び率、調剤併設店舗の拡大ペース、PB売上比率の上昇による粗利率改善の3要素に左右されやすい。

2026年2月期の連結売上高は1兆4,505億円・営業利益630億円(営業利益率約4.3%)で着地し、2027年2月期はウエルシアの年間フル連結により売上高2兆5,550億円・営業利益994億円を会社は計画している。

次回決算で確認すべき先行指標は、①既存店売上高前年比の月次推移、②調剤併設率の進捗(現状58.5%→目標62%)、③統合シナジーの定量開示(共同調達・物流統合の利益貢献額)の3点である。

企業概要

ツルハホールディングス(東証プライム・3391)は、北海道札幌市に本社を置く国内最大規模のドラッグストアチェーンです。OTC医薬品・化粧品・日用雑貨・食品の物販に加え、調剤薬局事業を展開しています。決算期は2月末で、2026年2月期にウエルシアHDを連結子会社化し、グループ合計の店舗数は約8,400店に拡大しました。

ビジネスモデル

ツルハHDの収益エンジンは「店舗網型×サービスストック複合型」です。基本の売上方程式は以下のとおりです。

  • 物販売上 = 店舗数 × 客数 × 客単価(食品・日用品・化粧品・OTC医薬品)
  • 調剤売上 = 調剤併設店舗数 × 処方箋枚数 × 調剤単価(ストック性が高い)
  • PB売上 = PB品目数 × PB浸透率 × 平均単価 × 購入客数(粗利率改善装置)

食品は粗利率17.6%と低いものの集客装置として機能し、来店した消費者が粗利率の高いOTC医薬品(47.6%)や化粧品(33.5%)を同時購入する「クロスセル構造」が利益の源泉です。調剤は慢性疾患患者の継続来局によるストック性があり、売上の安定化に寄与します。

収益構造

セグメント別概要(2026年2月期実績)

セグメント 売上高 営業利益 営業利益率 主要顧客層
ツルハグループ 約1兆1,071億円 約530億円 約4.8% 一般消費者(全世代)、調剤利用者
ウエルシアグループ 1兆3,533億円 420億円 約3.1% 一般消費者、調剤利用者(調剤比率約23%)
連結合計 1兆4,505億円 630億円 約4.3%

※連結合計はセグメント単純合算と一致しません(連結調整・消去等のため)。ウエルシアグループは2026年2月期途中からの連結であり、会計期間の差異に留意してください。

商品カテゴリ別構成(ツルハグループ単独、2026年2月期)

カテゴリ 売上高 構成比 粗利率
食品 約2,947億円 26.6% 17.6%
日用雑貨 約2,832億円 25.6% 30.0%
調剤 約1,562億円 14.1% 30.4%
化粧品 約1,512億円 13.7% 33.5%
OTC医薬品 約1,121億円 10.1% 47.6%
その他雑貨 約1,054億円 9.5% 35.6%
合計 約1兆1,071億円 100% 30.4%

※ウエルシアグループは調剤売上高約3,116億円(構成比約23%)。商品別内訳の詳細は資料非開示です。

利益構造の見方

項目 内容・水準 備考
売上高 1兆4,505億円 2026年2月期連結実績
× 粗利率 ツルハ単独30.4% OTC医薬品47.6%が最高、食品17.6%が最低
− 販管費 ツルハ:売上の約25.6%、ウエルシア:約27.3% 人件費・のれん償却55億円/年を含む
= 営業利益 630億円(利益率約4.3%) 中期目標:5.0%(2029年2月期)

※上表は利益を左右する主要項目の見方であり、単純合算で営業利益と一致させるものではありません。

過年度業績推移

指標 ウエルシア単独
2025年2月期
2026年2月期
連結実績
2026年2月期
会社計画
計画比 2027年2月期
会社計画
売上高 1兆2,850億円 1兆4,505億円 1兆4,530億円 99.8% 2兆5,550億円
営業利益 364億円 630億円 633億円 99.6% 994億円
経常利益 408億円 631億円 636億円 99.2% 981億円
当期純利益 150億円 427億円 395億円 108.0% 415億円

2025年2月期は変則9.5カ月決算のため連結での前期比較が困難であり、上表ではウエルシア単独の通期実績を参考値として併記しています。2026年2月期の当期純利益が計画を上回ったのは、減損損失が計画を下回ったためです(一時要因)。2027年2月期は当期純利益が実績比▲2.8%となりますが、これは段階取得差益105億円の剥落によるもので、営業利益ベースでは+57.7%の増益計画です。

売上のドライバー(因果構造)

ツルハホールディングス(3391.T)の業績ドライバーと売上構造を整理した図解
ツルハホールディングスの業績ドライバー構造

ドライバー①:既存店売上(客数×客単価)

因果チェーン:人口高齢化・健康意識向上・インフレ下の生活防衛需要 → ドラッグストア業界全体の既存店売上前年比 → ツルハHD既存店売上前年比(2026年2月期:+2.3%) → 物販売上(食品約2,947億円+日用雑貨約2,832億円+化粧品約1,512億円+OTC医薬品約1,121億円)

消費者が「まず食品を買いにドラッグストアへ行く」という行動が来店頻度を決めます。食品の粗利率は17.6%と低いものの、中期経営計画では「ドラッグ&フード型」店舗400店展開で食品売上+25%・来客数+10%を目標にしており、食品は集客装置として機能します。来店した消費者が粗利率47.6%のOTC医薬品や33.5%の化粧品を同時購入する「ついで買い」が利益を押し上げます。

誰が買うか:全年代の一般消費者。食品・日用品ではスーパー・コンビニとの競合層も含みます。True Dataの2026年2月売上調査によれば、記録的花粉飛散で鼻炎薬が34.2%増となるなど、気象・感染症要因も客数と客単価を動かします。

定量インパクト(単純試算):ツルハグループ単独の物販売上は約9,500億円規模です。既存店売上前年比が+1ポイント改善すると売上に約95億円規模のプラス効果が見込まれます。粗利率30.4%を掛ければ約29億円の粗利増となり、販管費が固定的な部分は営業利益にも伝わりやすい構造です。

ドライバー②:調剤売上(処方箋枚数×調剤単価×併設店舗数)

因果チェーン:高齢化(65歳以上人口増加)→ 慢性疾患患者数増加 → 医薬分業政策による処方箋の薬局外来化 → 調剤併設店舗数拡大(連結約3,319店、併設率58.5%) → 調剤売上(ツルハ約1,562億円+ウエルシア約3,116億円、合計約4,678億円規模・参考値)

総務省の高齢者統計によれば、65歳以上人口は増加が続いており、慢性疾患の処方が構造的に拡大しています。かかりつけ薬局機能の強化により同一患者の継続来局が期待でき、売上の安定化(ストック性)に寄与します。ウエルシアグループの調剤売上比率は約23%と業界でも高水準であり、統合後は調剤を差別化の柱に据えています。

誰が買うか:慢性疾患患者・高齢者を中心とした保険調剤利用者。院外処方箋を保有する患者が、かかりつけ薬局として利用します。

定量インパクト(単純試算):連結の調剤売上は約4,678億円規模(参考値)です。調剤報酬改定で単価が仮に▲1%変動した場合、約47億円規模の売上影響が生じる計算になります。粗利率30.4%を前提とすると、約14億円規模の粗利変動です。

💡 ワンポイント解説:調剤報酬改定とは

日本では医療保険で支払われる薬局の報酬額を、国(厚生労働省)が2年ごとに見直します。報酬が引き下げられると薬局の売上単価が直接減るため、ドラッグストアの調剤事業にとって最大の外部リスクです。

ドライバー③:PB(プライベートブランド)売上比率の上昇

因果チェーン:消費者のコスト意識高まり・インフレ下の家計防衛 → NB(ナショナルブランド)からPBへの代替進行 → PB売上高2,244億円(構成比15%、2026年2月期) → 全社粗利率を押し上げ

PBはNB商品と比べて中間マージンを排除できるため、一般に粗利率が高い傾向にあります(具体的なPB粗利率は会社非開示)。ツルハHDは「高付加価値ブランド(化粧品)×トップバリュ(食品)」の2軸でPBを展開しており、イオングループとの連携によるトップバリュ商品の導入拡大が注目されます。

誰が買うか:既存来店客のうちPBを認知・選択した消費者です。新規顧客というよりは、既存客のNB→PBシフトが主なドライバーとなります。

定量インパクト(単純試算):PB売上比率が15%から仮に1ポイント上昇すると、ツルハグループ単独売上約1兆1,071億円に対して約111億円がNBからPBにシフトする計算です。PBの粗利率がNBより仮に5ポイント高いとすれば(筆者推定・会社非開示)、約5.5億円規模の粗利改善に相当します。

ドライバー④:経営統合シナジー

因果チェーン:イオン主導によるウエルシアHDとの経営統合(2026年2月期完了) → 合計約8,400店のスケールメリット確立 → 共同調達・物流統合・販管費削減 → 2027年2月期:売上高2兆5,550億円(ウエルシア年間フル寄与)、営業利益994億円

ツルハHD IR情報によれば、統合後3年で営業利益シナジー500億円(のれん償却前)の創出を中期経営計画で掲げています。一方で、のれん償却は55億円/年(20年均等)が継続するため、シナジー実現の速度と規模が利益の鍵を握ります。

💡 ワンポイント解説:のれん償却とは

企業を買収した際に支払った「ブランド力や将来の収益力への上乗せ分」を、日本の会計基準では毎年一定額ずつ費用に計上します。ツルハHDの場合、55億円/年が20年間にわたり利益を圧迫する固定コストになります。

先行指標

指標名 現在の数値・水準 直近の変化 企業への影響 重要度
既存店売上高前年比 +2.3%(2026年2月期通年、決算説明資料) 改善傾向を維持 売上の質を示す最重要指標。+1pt改善で約95億円の売上増効果
調剤併設率 58.5%(2026年2月期連結、決算説明資料) 上昇中(目標62%) 調剤売上・粗利率向上に直結。連結調剤売上約4,678億円規模
PB売上比率 15%(2026年2月期、決算説明資料) 上昇傾向 粗利率改善ドライバー。NB→PBシフトで全社粗利率を押し上げ
統合シナジー進捗 詳細は会社非開示 共同調達・物流統合を進行中 500億円シナジー目標の達成スピードが利益率を左右
消費者物価指数(コアCPI) 前年比+1.8%(2026年3月、総務省) 2026年2〜3月に2%割れ、4月以降は食料品価格の上振れリスクも インフレ下の生活防衛需要がドラッグストアへの来店動機に
花粉飛散量 東京は例年比1.2倍(2026年春・速報値、日本気象協会) 東日本・北日本で例年より多い飛散 OTC抗アレルギー薬売上の一時的押し上げ。True Data調査で鼻炎薬34.2%増
インフルエンザ感染者数 定点あたり報告数が警報レベル継続(2025〜2026年シーズン、厚生労働省) 今季は早期から大規模流行、統計開始以来最多水準の報告も OTC解熱鎮痛薬・風邪薬の売上を押し上げ
調剤報酬改定 次回改定時期は資料非開示(2年ごと改定) 調剤単価の直接変動リスク。▲1%で約47億円の売上影響
アプリ会員数 1,000万DL超(2025年2月時点、決算説明資料) 増加中(デジタル会員率51%) 顧客ロイヤリティ・来店頻度・客単価への影響

※インフルエンザ感染者数は季節変動であり恒常的な業績ドライバーではないため重要度「低」としています。ただし、今季のように統計開始以来最多水準の大規模流行が起きた場合、OTC医薬品売上に短期的な上振れ効果が生じます。アプリ会員数は現時点でARPU・購買頻度への定量的な収益貢献が開示されておらず重要度「低」としていますが、中期経営計画でDX推進の柱に位置づけられており、会員数の増加とクーポン配信効果が数値化されれば重要度が上がる可能性があります。

先行指標を左右する要因

既存店売上前年比を動かす要因

増加要因:花粉の大量飛散(2026年春は東京で例年比1.2倍と日本気象協会が予測)やインフルエンザ流行によるOTC医薬品の特需、インフレ下での食品・日用品の「ドラッグストア価格優位」による来店頻度の増加、アプリクーポン配信による客単価上昇。

減少要因:競合他社(マツキヨココカラ&カンパニー〈3088〉、スギHD〈7649〉、クスリのアオキHD〈3549〉、コスモス薬品〈3349〉)の近隣出店による客数流出、消費者の節約志向が高粗利品の購入を抑制する可能性。

調剤売上を動かす要因

増加要因:高齢化進展に伴う慢性疾患処方の構造的増加、かかりつけ薬局機能強化による継続来局の促進、調剤併設率の引き上げ(58.5%→62%目標)。

減少要因:2年ごとの調剤報酬改定による単価引き下げリスク、薬剤師人材の確保難による調剤店舗拡大の遅延。

PB売上比率を動かす要因

増加要因:消費者のPB認知・受容度の向上、トップバリュ(イオングループ連携)の導入拡大、化粧品PBの高付加価値化。

減少要因:原材料コストの上昇によるPBマージン圧縮、NBメーカーの値下げ攻勢によるPBの価格優位性低下。

業績予測(3シナリオ)

シナリオ 前提条件 売上高 営業利益 営業利益率
ベースケース 会社計画どおり。既存店+2.4〜2.6%、ウエルシア年間フル連結、統合シナジー計画並み 2兆5,550億円 994億円 約3.9%
上振れ(前提付き試算) 既存店+3%超に加速、花粉・インフルOTC特需持続、PB比率17〜18%へ上昇、調剤報酬据え置き以上、統合シナジー前倒し 2兆6,000億円前後 1,050〜1,100億円規模 4.0〜4.2%程度
下振れ(前提付き試算) 調剤報酬の大幅引き下げ、競合激化で既存店+1%台に減速、統合シナジー遅延、人件費・原材料コスト上昇 2兆5,000億円前後 900億円前後 3.5〜3.6%程度

ベースケースは会社計画ベースです。上振れ・下振れの数値は筆者による前提付き概算シナリオであり、会社開示ではありません。2027年2月期の当期純利益は会社計画415億円ですが、段階取得差益105億円の剥落が主因であり、本業の収益力はEBITDAまたは営業利益で評価することを推奨します。

将来性・成長性

中期経営計画(PHASE1)の目標と現状

指標 2026年2月期実績 2027年2月期計画 2029年2月期目標(中計)
売上高 1兆4,505億円 2兆5,550億円 2兆7,000億円
営業利益 630億円 994億円 1,350億円
営業利益率 約4.3% 約3.9% 5.0%
EBITDA 会社非開示 会社非開示 2,025億円(マージン7.5%)
調剤併設率 58.5% 62%

※2029年2月期目標は新リース会計基準適用前の算出値。

短期(〜1年):ウエルシアの年間フル連結による売上高の大幅拡大(+76.1%)がもっとも目立つ変化です。ただし営業利益率は4.3%→3.9%へ一時的に低下する計画で、これはウエルシアの利益率(約3.1%)が全体を押し下げるためです。

中期(2〜3年):統合シナジー500億円(のれん償却前)の実現スピードが焦点です。共同調達による仕入コスト削減、物流統合、PB/トップバリュの相互展開がシナジーの柱であり、2029年2月期に営業利益率5.0%を達成できるかが中期の最大論点です。

長期(3年〜):国内市場は人口減少が進むなか、ASEAN(タイ・ベトナム)への海外展開に3年で300億円の投資を計画しています。現時点での海外売上貢献は軽微ですが、中長期の成長ドライバー候補として注視が必要です。また、DX推進(アプリ統合、AIエージェント、新ポイント制度)や店舗改装(3年間で1,500店超)も長期の収益力を左右します。

競争優位性

ツルハHDの競争優位性は以下の3点に集約されます。

  • 規模の経済:統合後の店舗数約8,400店・売上高2.5兆円規模は国内ドラッグストアで最大級であり、仕入交渉力・物流コスト効率化で構造的な優位を持ちます。
  • 調剤の深さ:ウエルシア込みで調剤売上約4,678億円規模(参考値・確定値は資料要確認)は業界最高水準とみられ、高齢化による処方箋需要の構造的追い風を最大限に受けやすい立場にあります。
  • 地域分散:北海道から九州まで全国に展開しており、特定地域への依存リスクが低いことが安定性に寄与しています。

同業他社比較

企業名 売上高規模 店舗数 営業利益率 差別化ポイント
ツルハHD(3391) 2兆5,550億円(2027年2月期計画) 約8,400店 約3.9%(2027年2月期計画) 業界最大規模・調剤強化・PB×トップバリュ
マツキヨココカラ&カンパニー(3088) 約1兆円規模 約3,400店 約6〜7%(筆者推定) 都市型・化粧品特化・インバウンド需要取込み
スギHD(7649) 約7,000億円規模 約1,700店 約4%前後(筆者推定) 調剤特化度が高い・薬剤師配置密度で差別化
コスモス薬品(3349) 約1兆円規模 約1,500店 約4%前後(筆者推定) 食品ディスカウント型・九州地盤・低コスト高回転

※競合各社の数値は直近期の決算資料からの概数または筆者推定です。マツキヨココカラは化粧品・インバウンドで客単価が高く利益率で優位性を持つ一方、ツルハHDは規模と調剤で差別化しています。コスモス薬品は食品の価格訴求で低粗利・高回転モデルを採り、利益率の構造が異なります。

リスク

リスク項目 内容 影響度 顕在化条件 対称性(強気材料との裏表)
調剤報酬引き下げ 2年ごとの医療費改定で調剤単価が低下する可能性。連結調剤売上が約4,678億円規模のため影響大 次回改定でマイナス改定が決定された場合 調剤売上拡大の裏返し。調剤依存度が高いほどリスク感応度も大
統合シナジー実現遅延 のれん償却55億円/年が20年継続する固定コスト。シナジー500億円が未達なら利益押し下げ 共同調達・物流統合の進捗が計画を下回った場合 統合による規模拡大の裏返し。規模が大きいほど統合の難度も高い
人件費・薬剤師不足 薬剤師・登録販売者の採用難・賃金上昇が販管費を圧迫 最低賃金の大幅引き上げ、薬剤師の有効求人倍率の悪化 調剤併設率引き上げの裏返し。店舗拡大には人材確保が前提
競合激化 他社の出店攻勢・価格競争による既存店客数の流出 競合チェーンの近隣出店が加速した場合 業界成長の裏返し。市場が伸びれば競合も積極出店する
PB原材料コスト上昇 原材料高騰によるPBマージン圧縮 原油・穀物・原材料価格の持続的上昇 PB比率拡大戦略の裏返し。PB依存度が高いほど原材料リスクに敏感

💡 ワンポイント解説:のれん償却と減損リスク

のれん償却は毎年55億円ずつ20年間、確実に利益を削ります。さらに、買収した事業の収益力が想定を下回った場合、のれんの減損(一括で費用計上)が発生するリスクもあります。統合の成否を見極めるうえで、のれん償却前の営業利益やEBITDAに注目する投資家が多いです。

まとめ

ツルハHDは、ウエルシアHDとの経営統合により国内最大級のドラッグストアチェーンに成長しました。2027年2月期はウエルシアの年間フル連結で売上高2兆5,550億円・営業利益994億円を計画しています。利益率を4.3%から中期目標の5.0%へ引き上げるには、既存店売上の着実な伸長、調剤併設率の引き上げ、PB比率の拡大、そして統合シナジー500億円の実現が不可欠です。一方、調剤報酬改定リスクと統合シナジーの実現遅延リスクは表裏一体であり、投資家はこの両面を監視する必要があります。

次の四半期決算で確認すべき3指標:

  • 既存店売上前年比(月次推移が+2.4%計画ラインを維持しているか、特に客数回復の有無)
  • 調剤併設率(58.5%→62%目標への進捗スピード、調剤報酬改定の動向)
  • 統合シナジー定量開示(共同調達・物流統合による利益貢献額が初めて開示されるか)

参照資料

  • ツルハホールディングス 2026年2月期 決算説明資料・中期経営計画(PHASE1)
  • ツルハホールディングス 統合報告書
  • ウエルシアホールディングス 2025年2月期・2026年2月期 決算短信
  • 総務省「消費者物価指数」(2026年3月分)
  • 日本気象協会「2026年春の花粉飛散予測」
  • 厚生労働省 インフルエンザ発生動向調査(2025〜2026年シーズン)
  • True Data「2026年2月 ドラッグストア・食品スーパー売上調査」
  • 経済産業省「商業動態統計 ドラッグストア販売額」

よくある質問

Q. ツルハホールディングス(3391)の業績ドライバーは何ですか?

A. 既存店の客数×客単価の伸び率、調剤併設店舗の拡大による処方箋売上、PB売上比率の上昇による粗利率改善の3つが主要ドライバーです。2026年2月期は既存店売上前年比+2.3%、調剤併設率58.5%、PB売上比率15%が実績値であり、これらの改善速度が営業利益率4.3%を中期目標の5.0%へ引き上げる鍵となります。ウエルシアHDとの統合シナジー(3年で500億円目標)も中期の利益成長を左右します。

Q. ツルハホールディングス(3391)への投資リスクは何ですか?

A. 最大のリスクは2年ごとの調剤報酬改定による調剤単価の引き下げです。連結の調剤売上は約4,678億円規模に達しており、報酬単価が▲1%変動するだけで約47億円規模の売上影響が生じます。次に大きいリスクは統合シナジーの実現遅延で、のれん償却55億円/年が20年間継続するなかでシナジー目標500億円が未達になれば利益率改善が遅れます。人件費上昇や競合他社の出店攻勢も注視が必要です。

Q. ツルハホールディングス(3391)が恩恵を受ける条件は何ですか?

A. 既存店売上前年比+3%超への加速、花粉大量飛散やインフルエンザ流行によるOTC医薬品特需の持続、調剤報酬改定の据え置き以上、PB比率の17〜18%への引き上げが重なれば、営業利益が会社計画994億円を上回る可能性があります。特にPB比率の上昇は全社粗利率を直接押し上げるため、トップバリュとの連携による食品PBの浸透状況が重要な確認ポイントです。

執筆:FIC投資研究所

本記事は、AIを活用して決算説明資料、中期経営計画、統合報告書、各種開示資料、ニュースを整理したうえで作成し、公開前にFIC投資研究所が内容確認と編集を行っています。本記事は特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資判断は読者ご自身の責任で行ってください。記載された数値や見通しは作成時点の情報に基づいており、将来の業績を保証するものではありません。


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