業界分析
SCREENホールディングス(7735)の企業分析|WFE市場サイクルと中国仕向比率が利益を左右する洗浄装置首位企業

WFE市場成長率 × 洗浄装置シェア × 中国仕向比率が利益を左右する半導体製造装置メーカー

SCREENホールディングス(7735)は、枚葉式・バッチ式洗浄装置で世界シェア首位の半導体製造装置メーカーである。

本記事では、売上の約80%を占めるSPE(半導体製造装置)事業がなぜ動くのか、顧客の設備投資サイクルと地政学リスクの両面から解説する。

💡 ワンポイント解説:まずざっくり言うと

SCREENは半導体チップを製造する際の「洗浄工程」で使う装置を売る会社です。AI向け半導体の需要が増えれば、工場の増設が進み、洗浄装置の注文が増えます。逆に、最大市場である中国への輸出規制が強化されると売上が大きく減る構造です。

30秒要約

  • 事業の見方:SCREENホールディングスは売上の約80%を半導体洗浄装置(SPE)が占め、ファウンドリ・メモリメーカーの設備投資サイクルに業績が連動する装置メーカー
  • 業績ドライバー:AI・データセンター投資を起点とするWFE(ウェーハファブ装置)市場の拡大が最大の売上変動要因であり、枚葉式洗浄装置シェア63%・バッチ式70%(Gartner調査、会社資料記載)の高シェアを通じて需要を取り込む
  • 追い風:2026年度(2027年3月期)はWFE市場が前年比+15〜20%成長見通し(会社開示)で、会社予想は売上7,250億円・営業利益1,500億円と大幅回復を見込む
  • リスク:中国が売上の42%超を占める最大仕向地であり、米国の対中輸出規制が洗浄装置に拡大した場合の急減収リスクが最大の懸念材料
  • 見る指標:①WFE市場成長率の更新(SEMI統計) ②中国仕向売上の四半期推移 ③主要顧客(TSMC・Samsung等)の設備投資ガイダンス

READING GUIDE

企業分析で出てくる数字を先に確認する投資の読み方へ

この分析を読む補助線:SCREENは半導体製造装置の受注サイクル、地域別売上、中国仕向比率で利益が振れます。先に受注残と在庫の見方進捗率の見方営業利益率の見方を確認すると、装置株の上振れ・下振れを追いやすくなります。

企業概要

SCREENホールディングス(東証プライム・7735)は京都市に本社を置く半導体製造装置メーカーです。界面制御技術を核とし、半導体チップ製造工程の「洗浄」に特化した装置で世界トップシェアを持ちます。自己資本比率67.4%(2025年度末)、日本格付研究所「A+(見通し安定的)」と財務基盤も安定しています。

収益構造

この章の要点

  • SPE(半導体製造装置)が売上の約80%・営業利益の実質全額を創出する一本足構造
  • SPE内でも枚葉式洗浄装置が約75%を占め、ファウンドリ向け最先端プロセス投資への依存度が高い
  • GA・FT・PEの非SPEセグメントは利益貢献が限定的で、全社業績はSPEの動向でほぼ決まる

セグメント別売上構成と主要顧客類型

セグメント 2025年度売上(億円) 構成比 主要顧客類型
SPE(半導体製造装置) 4,859 80.2% ファウンドリ、DRAMメーカー、NANDメーカー等
GA(グラフィックアーツ) 574 9.5% 印刷業者、商業印刷関連
FT(ディスプレー・成膜) 447 7.4% OLEDディスプレーメーカー
PE(プリント基板関連) 145 2.4% プリント基板製造業者
その他・調整 29 0.5%
合計 6,057 100%

※主要顧客の具体的な企業名は会社非開示。地域別仕向参考値(2024年度実績・統合報告書記載)では中国42.4%、台湾18.1%、日本14.4%、北米10.3%、韓国5.1%、欧州5.3%。

利益構造の見方

項目 2025年度(億円) 備考
SPE営業利益 1,227 利益率25.2%、全社利益の実質全額
GA営業利益 36 利益率6.3%
FT営業利益 86 利益率19.2%(2026年度予想は5.3%へ低下)
PE営業利益 3 利益率2.6%
その他・調整 ▲127 本社費・消去等
連結営業利益 1,225 利益率20.2%

業績推移

業績を見るポイント

  • 2024年度(2025年3月期)まで4期連続最高益を更新後、2025年度は調整的な減収減益
  • 2026年度(2027年3月期)会社予想は売上+19.7%・営業利益+22.4%と大幅回復を見込む
  • 会計基準は日本基準を継続(IFRS適用の開示なし)
決算期 売上高 営業利益 営業利益率 EPS(円)
2022年度(2023年3月期) 4,608 764 16.6% 304
2023年度(2024年3月期) 5,049 941 18.6% 371
2024年度(2025年3月期) 6,252 1,356 21.7% 512
2025年度(2026年3月期) 6,057 1,225 20.2% 487
2026年度(2027年3月期)予想 7,250 1,500 20.7% 582

(単位:億円、EPS以外。2025年度の減収減益は前期の4期連続最高益更新からの調整。2024年度にSPE事業で収益認識不適切会計処理が発覚しており、修正影響の可能性があるが営業利益への定量影響は資料非開示)

業績ドライバー

業績ドライバーの要点

  • 最大変動要因:AI・データセンター投資を起点とするWFE市場の拡大・縮小がSPE売上を直接動かす
  • 利益率要因:SPEの営業利益率25%台が全社利益を支配し、売上増減がほぼそのまま利益に伝わりやすい構造
  • 地政学要因:中国仕向比率42%超が最大のリスク兼成長変数
SCREENホールディングス(7735.T)の業績ドライバーと売上構造を整理した図解
SCREENホールディングスの業績ドライバー構造

ドライバー①:AI・データセンター投資 → WFE市場拡大 → SPE洗浄装置受注

最上流の需要はAI・生成AIモデルの大規模化です。NvidiaのGPU需要やMicrosoft・Google・Amazon等クラウド大手のデータセンター投資が拡大すると、先端半導体の製造能力増強が必要になります。

この投資需要はWFE市場規模として集約されます。SEMIの2025年12月予測では2027年に1,560億ドルと過去最高を見込んでおり、会社の決算説明資料でも2026年のWFE市場を約1,340〜1,400億ドル(前年比+15〜20%)と見通しています。

SCREENは洗浄工程に特化し、枚葉式63%・バッチ式70%の世界シェア(Gartner調査、会社資料記載)を持つため、WFE市場拡大の恩恵を洗浄装置経由で取り込みます。主な需要先はファウンドリの最先端プロセス投資で、案件例としてはTSMCの設備投資拡大(EE Times Japan報道では2026年の設備投資を560億ドル規模と報じています)が代表的です。

定量インパクト:SPE売上は2025年度4,859億円→2026年度予想6,000億円(+23.5%)。SPE営業利益率25%台で推移すれば、SPE売上1,000億円増は営業利益約250億円増に相当します(他条件一定の前提付き試算)。

ドライバー②:HBM・DRAM/NAND投資サイクル → メモリ向け洗浄装置受注

AI学習・推論に必要なHBM(広帯域メモリ)の需要急増がメモリメーカーの設備投資を加速させています。Bloomberg報道ではAI向けメモリー需要急増で世界的なメモリ不足が深刻化していると伝えられています。Samsung・SK Hynix・Micronの設備投資拡大が洗浄装置の受注に直結します。

HBMは積層構造のため洗浄工程が増加し、枚葉式洗浄装置の重要性が特に高まります。NANDについても積層化・容量増強投資で回復の兆しがあり(会社資料記載)、メモリ全体としてSPE需要を押し上げる方向です。

💡 ワンポイント解説:WFE市場とは

WFE(Wafer Fab Equipment)とは、半導体チップを製造する工場で使われる製造装置全般のことです。露光・成膜・エッチング・洗浄など多くの工程の装置を含み、その市場規模が半導体装置メーカー全体の売上天井を決めます。

ドライバー③:中国仕向比率と地政学リスク

2024年度(2025年3月期)実績で中国は売上の42.4%(2,652億円)を占める最大仕向地です。中国ファウンドリ・メモリメーカーの設備投資が旺盛な一方、米国の対中輸出規制が洗浄装置に拡大するリスクが常に付きまといます。現時点で洗浄装置が規制の中心品目になっているとは確認できませんが、PwC地政学コラムでは半導体関連規制の対象拡大リスクが指摘されています。

加えて、中国国内の装置国産化政策(eetimes/ITmedia報道では「国産化50%」方針が報じられています)が長期的なシェア侵食リスクとなります。

ドライバー④:為替(USD/JPY)

会社開示の為替感応度は、1円の円安(対USD)で営業利益+約1.3億円、1円の円安(対EUR)で+約0.6億円です。会社予想前提は145円/USDです。記事作成時点では会社前提より円安水準で推移しているため、為替だけを見れば営業利益の上振れ要因として寄与しやすい状況です。

今後の業績を左右するポイント

次の決算で見るべき指標

  • WFE市場成長率がSEMI統計で+15〜20%予想を維持しているか
  • 中国仕向売上比率が四半期で急変していないか
  • SPE用途別(ロジック/DRAM/NAND)の定性コメントの変化

先行指標

指標名 現在の数値・水準 企業への影響 重要度
WFE市場規模 2025年:約1,351億ドル(SEAJ統計)、2026年予想:1,340〜1,400億ドル(会社開示) SPE売上の最上流指標。成長率鈍化はSPE減収に直結
中国仕向売上比率 42.4%(2024年度実績、統合報告書) 規制拡大で急減リスク。全社売上の最大変動要因
主要顧客の設備投資計画 TSMC:2026年設備投資560億ドル規模(報道ベース) 6〜12ヶ月先のSPE受注を左右
HBM/DRAM設備投資 Samsung・SK Hynixが増産加速(報道ベース) メモリ向け洗浄装置の受注増加
為替(USD/JPY) 会社前提145円/USDとの乖離 +1円で営業利益+約1.3億円(会社開示)。円安は上振れ、円高は下振れ要因
NAND設備投資 回復の兆し(会社資料記載) SPE売上の補完的ドライバー

NAND設備投資は現時点ではロジック・DRAMほどの投資加速が確認できていないため低重要度としていますが、積層化・容量拡大投資が本格化すれば中重要度に引き上がる可能性があります。

確認頻度の目安:WFE市場規模はSEMI半期ビリングス統計(四半期公表)、中国仕向比率はSCREENの四半期決算説明資料、顧客設備投資計画は各社四半期決算で確認可能です。

先行指標を左右する上流要因

増加要因:AI・生成AIモデルの大規模化継続、クラウド各社のCapex上方修正、DRAM価格高止まり、HBM専用ライン増強

減少要因:米国対中輸出規制の洗浄装置への拡大、データセンター電力・冷却制約による投資ペース鈍化、中国国産化政策による長期的シェア侵食、半導体在庫調整サイクルの到来

業績予測(3シナリオ)

シナリオ 前提 売上高(億円) 営業利益(億円)
ベース WFE+15〜20%、中国規制なし、為替145円/USD(会社予想) 7,250 1,500
上振れ(前提付き試算) WFE+20%超、HBM需要加速、中国投資予想以上 7,500超の可能性 会社予想比で上振れ余地
下振れ(前提付き試算) 対中規制が洗浄装置に拡大、WFE成長率一桁% 6,000台前半の可能性 営業利益率15〜18%台まで低下リスク

上振れシナリオのトリガーは、NvidiaのBlackwell後継需要超過やクラウド各社のCapex上方修正です。下振れシナリオのトリガーは、米商務省による洗浄装置の輸出規制対象追加や顧客の突発的投資凍結です。為替は会社前提145円/USDに対して、記事作成時点では円安方向の上振れ余地を含みます。

💡 ワンポイント解説:なぜ中国仕向比率が最重要リスクなのか

SCREENの売上の4割超が中国向けです。もし米国の輸出規制が洗浄装置にまで拡大すると、この4割が大幅に縮小する可能性があります。他の半導体装置メーカーも同様のリスクを抱えていますが、SCREENは洗浄特化で製品多角化が限定的なため、影響が集中しやすい構造です。

成長性と競争環境

中長期で見るポイント

  • 中計「Value Up Further 2026」は3カ年累計売上1.8兆円以上を目標とし、合計約1.96兆円で達成見通し
  • 洗浄装置の高シェアが参入障壁となるが、製品カテゴリが洗浄工程に集中するリスクも裏腹
  • 長期目標は2033年度売上高1兆円・営業利益率20%以上

将来性・成長性

中計「Value Up Further 2026」(2024年度〜2026年度)では、3カ年累計売上1.8兆円以上・営業利益率通算19%以上を目標としています。2年度分の実績合計は約1.23兆円で、3年目の会社予想7,250億円を加算すると約1.96兆円と目標超過ペースにあります。研究開発費は3カ年累計約1,100億円、設備投資約1,000億円と成長投資を積極化しており、2026年4月には米ニューヨーク州にATCA(先端技術センター)を開所しました(会社一次資料確認済み)。

長期的には、アドバンスドパッケージ向け装置の拡充が新たな成長軸です。HBMやチップレット実装の拡大で洗浄以外の工程への事業領域拡張が期待されますが、現時点での利益貢献は限定的です。

競争優位性

洗浄装置は半導体製造工程の中でも微細化・多層化が進むほど工程数が増える領域であり、プロセスノウハウの蓄積が参入障壁となります。会社資料ではGartner調査に基づき、枚葉式63%・バッチ式70%・スピンスクラバー38%のシェアを記載しており、洗浄特化での優位性は高いとされます。一方、WFE全体で見ると成膜・エッチング・露光は手がけておらず、WFE拡大の恩恵を取り込める工程が限定的です。

同業他社比較

比較軸 SCREEN(7735) 東京エレクトロン(8035) Lam Research(LRCX)
主力製品 洗浄装置(枚葉式・バッチ式) 成膜・エッチング・洗浄・コーター エッチング・成膜・洗浄
洗浄装置シェア 世界首位(会社資料) 洗浄は競合ポジション 洗浄は競合ポジション
製品多角度 洗浄特化(WFE内カバー範囲が狭い) 幅広い装置カテゴリ エッチング・成膜中心
営業利益率 20.2%(2025年度) (競合との詳細比較は資料非開示) (同左)
地域集中リスク 中国・台湾・韓国で約66% 同様に東アジア集中 同様に東アジア集中

SCREENの特徴は洗浄工程への高い専門性と圧倒的シェアですが、東京エレクトロン(8035)やLam Research(LRCX)と比べると製品カテゴリが狭く、WFE市場全体の成長を幅広く取り込む力では劣ります。

リスク

主なリスクの見方

  • 中国輸出規制リスクは「追い風としての中国仕向売上42%」の裏返しであり、成長要因とリスクが表裏一体
  • SPE・枚葉式洗浄への集中は高シェアの源泉だが、需要急変時の分散効果が乏しい
  • FTセグメントの利益率急低下(19.2%→5.3%予想)は詳細理由が資料非開示であり、要因把握が難しい
リスク項目 内容 影響度 顕在化条件 対称性
中国向け輸出規制拡大 売上42%超を占める中国仕向が急減リスク 米商務省が洗浄装置を規制対象に追加 中国投資旺盛時の成長ドライバーの裏返し
WFE投資サイクル急変 半導体装置は需要変動が大きくWFE成長率が予想下回ると大幅減収 主要顧客のCapex下方修正、半導体在庫調整 AI投資加速時の高成長の裏返し
製品・顧客集中 SPE80%・枚葉式75%への依存。特定工程・特定顧客への集中 洗浄工程の技術変化、競合参入 高シェア・高利益率の源泉の裏返し
固定費増加 R&D・設備投資が中計で急増(3年累計約2,100億円) 売上伸び悩み時の利益圧迫 成長投資の裏返し

💡 ワンポイント解説:なぜ「減収でも利益率20%」を維持できるのか

SCREENのSPE事業は営業利益率25%台と高水準です。洗浄装置は高い技術参入障壁とシェアにより価格競争が限定的で、売上が多少減っても利益率が急落しにくい傾向があります。ただし、売上が大幅に減少すれば固定費(研究開発費・本社費用)の負担が重くなり、利益率低下リスクは残ります。

まとめ

SCREENホールディングスは、WFE市場の成長サイクルを洗浄装置の圧倒的シェアで取り込む構造が最大の強みであり、AI・データセンター投資の拡大は2026年度の大幅回復を支える追い風です。一方、売上の42%超を中国に依存する地政学リスクは、追い風と表裏一体の最大のリスク要因です。

次の四半期決算で確認すべき3指標:

  • WFE市場成長率(SEMI統計での+15〜20%予想が維持されるか)
  • 中国仕向売上比率(四半期で42%水準から急変していないか)
  • 主要顧客の設備投資ガイダンス(TSMC・Samsung等の四半期決算での変化)

参照資料

よくある質問

Q. SCREENホールディングス(7735)の業績ドライバーは何ですか?

A. AI・データセンター投資を起点とするWFE市場の拡大・縮小が最大の業績ドライバーです。売上の約80%をSPE(半導体製造装置)が占め、その中でも枚葉式洗浄装置(SPEの約75%)がファウンドリ・メモリメーカーの先端投資に連動します。会社の決算説明資料では2026年のWFE市場を前年比+15〜20%成長と見通しており、これに対応する形で2026年度売上を7,250億円(+19.7%)と予想しています。

Q. SCREENホールディングス(7735)への投資リスクは何ですか?

A. 中国向け売上が全体の42%超を占めることが最大のリスクです。現時点で洗浄装置は米国の対中輸出規制の主対象外ですが、規制対象が拡大すれば売上の大幅減少に直結します。加えて、半導体装置市場は需要変動が大きく、WFE市場の成長率が鈍化した場合はSPE事業が減収に転じやすい構造です。

Q. SCREENホールディングス(7735)が恩恵を受ける条件は何ですか?

A. WFE市場の高成長が継続し、中国向け輸出規制が洗浄装置に拡大しないことが最大の恩恵条件です。具体的には、TSMC・Samsung等の主要顧客が設備投資ガイダンスを維持・上方修正し、HBM需要の加速でメモリ向け洗浄装置の受注が拡大する局面が最も業績にプラスに働きます。

執筆:FIC投資研究所

本記事は、AIを活用して決算説明資料、中期経営計画、統合報告書、各種開示資料、ニュースを整理したうえで作成し、公開前にFIC投資研究所が内容確認と編集を行っています。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断は読者ご自身の責任でお願いいたします。記載の数値・事実は作成時点の公開情報に基づいており、正確性を保証するものではありません。

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