
受注残と在庫は、売上や利益に先回りして変化することがある指標です。ただし、増えれば必ず良い、減れば必ず悪いという単純なものではありません。
この記事では、企業分析でよく出てくる受注残と在庫について、何を意味するのか、どんな業種で重要なのか、どこに注意して読むべきかを整理します。
この記事の結論
- 受注残は、将来売上になる可能性がある注文の積み上がりを見る指標。
- 在庫は、需要に備えた準備にも、売れ残りにもなりうる。
- 受注残や在庫は、業種によって意味が大きく変わる。
- 数量、単価、納期、採算、キャンセルリスクを分けて見ることが重要。
Contents
1. 受注残とは何か
受注残は、企業がすでに受けた注文のうち、まだ売上として計上していない分を指します。建設、機械、半導体製造装置、造船、システム開発など、納品まで時間がかかる業種で重要です。
受注残が多い会社は、将来の売上がある程度見えやすい場合があります。ただし、受注残が利益になるかどうかは、採算やコスト次第です。
用語メモ:受注と売上の違い
受注は「注文を受けた段階」、売上は「商品やサービスを提供して会計上の売上にした段階」です。受注から売上までには時間差があります。
2. 在庫とは何か
在庫は、販売前の商品、製造途中の仕掛品、原材料などを指します。在庫が増えることには、良い面と悪い面の両方があります。
需要が強く、今後の販売に備えて在庫を積んでいるなら前向きに見られることがあります。一方で、需要が弱く、売れ残りとして在庫が増えているなら注意が必要です。
3. 増加が良いとは限らない
受注残も在庫も、増えたから良い、減ったから悪いとは言い切れません。重要なのは、その増減の中身です。
| 指標 | 前向きに見える例 | 注意が必要な例 |
|---|---|---|
| 受注残 | 高採算案件の積み上がり、納期が明確な大型案件 | 低採算案件、コスト上昇を転嫁できない案件、キャンセル懸念 |
| 在庫 | 需要増に備えた戦略在庫、供給制約への対応 | 売れ残り、陳腐化、値引き販売の可能性 |
4. 業種によって見方が変わる
受注残は、建設や機械では将来売上の手がかりになります。半導体製造装置では、顧客の設備投資サイクルを読む材料になります。
在庫は、小売では売れ残りリスクを見る材料になり、製造業では需要見通しやサプライチェーン対応を見る材料になります。半導体や電子部品では、在庫調整が業績サイクルに大きく影響することがあります。
ワンポイント解説:在庫調整
需要が弱くなると、企業や顧客は在庫を減らそうとします。この期間は新しい注文が減りやすく、売上や利益に逆風になることがあります。
5. FICではどう見るか
FIC投資研究所では、受注残と在庫を「将来業績への橋渡し指標」として見ます。
受注残を見るときは、数量だけでなく、採算、納期、キャンセルリスク、コスト転嫁を確認します。在庫を見るときは、需要増に備えた在庫なのか、売れ残りなのか、評価損や値引きにつながる可能性があるのかを分けて考えます。
6. まとめ
受注残と在庫は、決算の売上や利益に先行して変化することがある重要な指標です。ただし、単純に増減だけで判断するのは危険です。
受注残は将来売上の見通し、在庫は需要と供給のズレを読む材料です。どちらも、業種、採算、時間差、リスクを合わせて見ることで、企業分析の精度が上がります。
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本記事は、企業分析を読むための基礎知識を整理した情報提供記事です。特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資判断は読者ご自身の責任でお願いいたします。









