業界分析
鹿島建設(1812)の企業分析|受注残・粗利率改善・海外開発が利益を動かす構造

鹿島建設(1812)は、受注残3.1兆円 × 土木24.6%・建築11.8%の粗利率(5年で最高) × 連結営業利益の単体構成比73.8% × 海外開発の売却タイミング で利益が動く、国内総合建設大手

本記事では、鹿島建設の業績を「受注生産型と開発売却型の二段構造」「単体建設の粗利率改善」「海外開発(米国流通倉庫・欧州再エネ)の売却タイミング」の3視点から整理する。2026年3月期に5期連続増収増益で過去最高益(営業利益2,407億円・営業利益率7.8%・ROE 13.3%)を更新した内訳、土木粗利率24.6%が直近5年で最も高い水準である歴史的位置付け、2027年3月期の減収減益予想と中期経営計画累計純利益4,700億円以上への上振れ、そして米国FF金利・物流不動産空室率6.7%・建設技能者2035年129万人不足見込みといった外部指標が利益にどう効くかまで解説する。

💡 ワンポイント解説:まずざっくり言うと

鹿島建設は、ダム・トンネル・道路などの「土木」、オフィス・工場・再開発ビルなどの「建築」を中核に、国内外で不動産開発も手がける総合建設大手(スーパーゼネコン)です。2026年3月期は売上3兆672億円・営業利益2,407億円・当期純利益1,773億円といずれも過去最高を更新しました。鍵は工事1本あたりの利幅(売上総利益率)が大きく改善したこと。土木は前期15.4%から24.6%、建築は9.6%から11.8%へ伸びました。これは直近5年で最高水準です。2027年3月期は反動で減収減益予想ですが、それでも中期経営計画の目標(当期純利益1,300億円以上)を大きく上回る高水準です。

30秒要約

  • 事業の見方:受注生産型(単体建設売上の94.4%)と開発売却型(同5.6%、開発資産国内4,900億円・海外8,400億円)の二段構造。連結営業利益2,407億円の73.8%は単体本体で稼ぐ
  • 業績ドライバー:受注高3兆2,639億円、次期繰越高3兆1,160億円、土木粗利率24.6%(5年で最高)・建築粗利率11.8%(4期ぶり10%超)、海外開発の売却タイミング
  • 追い風:5期連続増収増益、営業利益率7.8%は5年で最高、ROE 13.3%、中計3か年累計純利益は計画3,500億円→4,700億円以上へ上振れ、配当146円・自社株取得400億円・サプライチェーン強化1,000億円
  • リスク:土木粗利率の反落(2027年3月期予想20.4%)、東京製鐵全品種値上げ・生コン2027年度値上げ予定、建設技能者2035年129万人不足見込み、海外開発売却の遅延(米国FF金利・空室率次第)、受注反動減
  • 見る指標:①単体次期繰越高3兆1,160億円の消化ペース、②土木20.4%・建築12.0%の粗利率実績、③海外開発物件売却(2026年度10-15件計画)、④米国FF金利3.50-3.75%・産業空室率6.7%の方向感

READING GUIDE

企業分析で出てくる数字を先に確認する投資の読み方へ

この分析を読む補助線:企業分析では、売上・利益・現金収支のつながりを押さえると読みやすくなります。 決算短信の読み方営業利益率の見方キャッシュフロー計算書の見方もあわせて確認すると、本文中の数字を整理しやすくなります。

企業概要

鹿島建設(東証プライム、3月決算)は、土木・建築・国内開発・海外関係会社(建設+開発)の構成で展開する国内総合建設大手(スーパーゼネコン)です。2026年3月期の連結売上収益は3兆672億円。中期経営計画は「技術立社」を掲げ、国内建設のリスク管理とエンジニアリング力、不動産開発との事業シナジー、R&D・デジタル化による生産性向上を重点に据えています。

事業ポートフォリオと規模

建設会社の事業基盤は「物理的な拠点」よりも「受注残・粗利率・施工能力」で把握するのが実情に近いため、以下の代替KPIで規模感を捉えます。

項目 数値 注記
連結建設受注高 3兆2,639億円 2026年3月期、前年比+24.4%、過去最高
単体次期繰越高 3兆1,160億円 2026年3月期末、前年比+22.2%
単体土木 次期繰越高 9,488億円 +24.2%
単体建築 次期繰越高 2兆1,230億円 +21.3%
単体土木 売上総利益率 24.6% 前期15.4%、2027年3月期予想20.4%(5年で最高水準)
単体建築 売上総利益率 11.8% 前期9.6%、2027年3月期予想12.0%(4期ぶり10%超)
営業利益率 7.8% 前期5.2%、5年で最高水準
ROE 13.3% 前期10.2%、+3.1pt
国内開発事業資産 4,900億円 稼働82%、首都圏72%、賃貸60%/販売40%、オフィス63%
海外開発事業資産 8,400億円 稼働68%、短期回転型74%、北米45%/欧州26%/アジア25%、倉庫40%/住宅22%/オフィス13%
配当 2026年3月期146円 従来予想132円から増額、2027年3月期予想も146円
自社株式取得計画 2027年3月期400億円 保有自己株式を発行済株式総数の5%程度まで消却予定

競合・業界ポジション

鹿島建設は大成建設・大林組・清水建設と並ぶ国内スーパーゼネコン4社の一角です。2026年3月期の同期決算で比較すると、鹿島建設は売上規模・受注規模で4社中トップです。

会社(コード) 売上高 営業利益 営業利益率 純利益 出典階層
鹿島建設(1812) 3兆672億円 2,407億円 7.8% 1,773億円 会社一次資料
大林組(1802) 2兆5,862億円 1,946億円 7.5% 1,737億円 会社一次資料
大成建設(1801) 2兆890億円 1,879億円 9.0% 1,700億円 TDnet系(要公式PDF再確認)
清水建設(1803) 2兆578億円 1,186億円 5.8% 1,266億円 決算速報系(要公式PDF再確認)

※同業比較は各社IRの開示値を整理。大成建設・清水建設は公式PDF未取得で、TDnet・決算速報系の数値を参考掲載。営業利益率の単純比較は出典階層の差を踏まえて読む必要があります。

鹿島建設の特徴は海外関係会社の連結売上比が約36%、海外開発資産が8,400億円と、スーパーゼネコンの中でも海外展開・開発色が濃いことです。海外建設は黒字、海外開発は2025年度に▲45億円の赤字化を経て2026年度回復見込み、という二層構造を持ちます。

収益構造

この章の要点

  • ビジネスモデルは「受注生産型94.4%」「開発売却型5.6%」「保有/賃貸型」「サプライチェーン投資型」の4類型で把握すると実態に近い
  • 連結営業利益2,407億円のうち、単体(鹿島建設本体)が1,776億円で73.8%を占める一極構造
  • 利益増減の最大変数は単体建設事業の売上総利益率。土木24.6%(+9.2pt)、建築11.8%(+2.2pt)が利益急増の本丸
  • 海外関係会社は「建設事業等は改善、開発事業は売却減で2025年度赤字化、2026年度回復見込み」と分けて読む

ビジネスモデル4類型

鹿島建設のビジネスモデルは「単体売上=受注生産型94.4% + 開発売却型5.6%」というシンプルな比率では捉えきれません。保有/賃貸型とサプライチェーン投資型を含めた4類型で把握するのが実態に近いです。

類型 対応事業 規模(2026年3月期) 利益を動かす変数
受注生産型 単体土木・建築、国内外建設関係会社 単体建設売上1兆6,136億円(単体売上の94.4%) 受注時採算、進捗率、追加変更契約、施工体制、資材/労務費
開発売却型 国内開発、海外開発(流通倉庫・住宅・オフィス等) 単体開発事業等売上964億円(単体売上の5.6%)。国内開発資産4,900億円、海外開発資産8,400億円 売却件数、リーシング、売却時期、金利、Cap Rate、為替
保有/賃貸型 国内外の稼働物件、長期保有型資産 国内開発資産の稼働82%、海外開発資産の稼働68% 賃料、稼働率、修繕費、金利、NOI、売却タイミング
サプライチェーン投資型 協力会社支援、技能者処遇改善 中計3か年でサプライチェーン強化1,000億円 施工能力、採用/育成、支払条件、技能者確保

※「受注生産型85%・開発売却型15%」のような固定比率の通説は会社資料から直接確認できないため採用していません。単体売上ベースの94.4%/5.6%と、開発資産ベースの国内4,900億円/海外8,400億円を分けて示しています。

連結営業利益2,407億円の構成比

区分 営業利益 構成比 記事での読み方
単体(鹿島建設本体) 1,776億円 73.8% 利益の主柱。土木・建築の粗利率改善が中核
国内関係会社 358億円 14.9% 建設系好調+開発物件売却が上乗せ
海外関係会社 282億円 11.7% 建設は改善、開発売却減が純利益を圧迫
連結消去・調整 ▲9億円 ▲0.4% 資料上の差額
連結 2,407億円 100.0% 過去最高営業利益

単体が利益の約4分の3を占める一極構造です。「単体の粗利率動向=鹿島建設の利益動向」と読んで構造的に正しく、関係会社(国内・海外)は上乗せと変動要因に位置付けられます。

海外関係会社の建設/開発分解(連結内訳の読み方)

海外関係会社1兆919億円・営業利益282億円という連結集計の裏側は、内部取引調整前管理数値で見ると建設事業等は黒字、開発事業は2025年度赤字化という二層構造です。合算して「海外採算悪化」と書くと誤読になります。

事業 2025年度売上高 売上総利益率 2025年度営業利益 2025年度当期純利益 2026年度予想純利益
建設事業等 9,481億円 6.9% 230億円 198億円 82億円
開発事業 1,431億円 20.0% 89億円 ▲45億円 151億円

海外開発は2024年度純利益147億円から2025年度▲45億円へ急悪化(米国流通倉庫・共同事業物件の売却件数減少が主因)。2026年度は売却時期を先送りした物件含めて10-15件の売却を計画し、151億円回復を見込みます。地域別では、KUSA(米国)・KAP(アジア)・KE(欧州)の3拠点すべてが2025年度赤字、2026年度はすべて黒字化計画です。

単体建設事業の売上総利益率(最重要指標)

鹿島建設の利益を見るうえで最も重要なのは、売上高ではなく「売上総利益率(粗利率)」です。2026年3月期に粗利率が大幅改善したことが、営業利益+58.5%・当期純利益+40.9%の急増の本丸です。

区分 2025年3月期 2026年3月期 2027年3月期予想 注目点
土木 売上総利益率 15.4% 24.6% 20.4% 9.2ptの大幅改善。最盛期の大型工事と原価低減が寄与
建築 売上総利益率 9.6% 11.8% 12.0% 4期ぶり10%超え。受注時採算の改善基調
建設計 売上総利益率 11.2% 15.2% 14.6% 建設事業全体としても大幅改善

改善要因は、(1)受注時採算の改善(採算の良い工事を選別受注)、(2)原価低減(資材調達・施工方法の効率化)、(3)追加変更契約(工事中の仕様変更等による追加収入)、(4)施工中リスク管理(工事損失引当の精緻化、トラブル抑制)の4点です。土木で利益率を押し上げた代表案件には、善福寺川上流地下調節池工事や秋田県男鹿市・潟上市・秋田市沖の洋上風力発電事業の風車基礎建設工事が含まれます。

💡 ワンポイント解説:「粗利率24.6%は恒常水準ではない」

2026年3月期の土木24.6%は、複数の大型公共工事が最盛期に重なったことで実現した特殊な高水準です。会社自身も2027年3月期予想で土木は20.4%への低下を見込んでいます。それでも20%超は5年で見ても上位水準で、構造的な改善が進んでいると読めますが、「24.6%が今後も続く」と単純化しないことが重要です。

業績の全体像

業績を見るポイント

  • 2026年3月期は5期連続増収増益、売上高・営業利益・当期純利益すべて過去最高、ROE 13.3%
  • 営業利益率7.8%・ROE 13.3%・土木粗利率24.6%は、いずれも直近5年で最高水準
  • 2027年3月期は減収減益予想だが、中計の当期純利益目標1,300億円以上を大きく上回る

2026年3月期の連結業績

指標 2025年3月期 2026年3月期 2027年3月期見通し
売上高 2兆9,118億円 3兆672億円(+5.3%) 2兆9,000億円(▲5.5%)
営業利益 1,518億円 2,407億円(+58.5%) 2,000億円(▲16.9%)
経常利益 1,606億円 2,404億円(+49.6%) 2,060億円(▲14.3%)
親会社株主帰属当期純利益 1,258億円 1,773億円(+40.9%) 1,700億円(▲4.1%)
建設受注高(連結) 2兆6,245億円 3兆2,639億円(+24.4%) 2兆6,700億円
ROE 10.2% 13.3%(+3.1pt)
1株配当 104円 146円 146円予想
配当性向 39.0% 38.4% 40.0%

営業利益は1,518億円→2,407億円と+58.5%、当期純利益は1,258億円→1,773億円と+40.9%の大幅増益です。最大の要因は単体建設事業の売上総利益率改善(土木+9.2pt、建築+2.2pt)。一時的な要因ではなく、受注時採算の改善・原価低減・追加変更契約・施工中リスク管理の積み上げによる構造的な改善が中心です。

過去5年の業績推移(歴史的位置付け)

2026年3月期の数字が「どの程度の水準か」を歴史軸で確認します。

決算期 売上高 営業利益 営業利益率 純利益 ROE 建設受注高
2022年3月期 2兆796億円 1,233億円 5.9% 1,038億円 11.4% 1兆9,298億円
2023年3月期 2兆3,915億円 1,235億円 5.2% 1,117億円 11.2% 2兆1,969億円
2024年3月期 2兆6,651億円 1,362億円 5.1% 1,150億円 10.2% 2兆9,272億円
2025年3月期 2兆9,118億円 1,518億円 5.2% 1,258億円 10.2% 2兆6,245億円
2026年3月期 3兆672億円 2,407億円 7.8% 1,773億円 13.3% 3兆2,639億円
2027年3月期予想 2兆9,000億円 2,000億円 6.9% 1,700億円 2兆6,700億円

歴史軸での読み方は次のとおりです。売上高は5年連続増収で、2022年→2026年で約1.5倍へ拡大。営業利益は2022〜2025年は1,200〜1,500億円台のレンジで停滞していましたが、2026年3月期に2,407億円へジャンプしました。営業利益率も2022〜2025年は5%台前半で横ばいだったところから、7.8%へ急上昇しています。ROEも10〜11%台から13.3%へ。「単年の増収」ではなく「採算改善」が利益急増の本丸であることが時系列で確認できます。

単体建設の粗利率時系列(5年推移)

決算期 土木売上総利益率 建築売上総利益率 コメント
2022年3月期 16.5% 10.3% コロナ後の工事進捗局面
2023年3月期 18.0% 8.5% 建築が低迷
2024年3月期 13.7% 9.2% 土木が低下
2025年3月期 15.4% 9.6% 建築は回復途上
2026年3月期 24.6% 11.8% 土木が大幅改善、建築は4期ぶり10%超
2027年3月期予想 20.4% 12.0% 土木は反落だが20%超、建築はさらに改善予想

土木24.6%は5年で最高。過去レンジ13.7〜18.0%を大きく上回ります。2027年3月期予想20.4%は特殊高水準からの正常化ですが、過去5年でも上位水準。「24.6%から20.4%への反落=悪化」と単純化せず、「構造的には高水準を維持」と読むのが正しい解釈です。

💡 ワンポイント解説:「減収減益予想」を悪材料と読まない

2027年3月期は売上2兆9,000億円・営業利益2,000億円・当期純利益1,700億円と減収減益予想ですが、これは2026年3月期が異常に強かった反動です。中期経営計画の2026年度(2027年3月期)当期純利益目標は「1,300億円以上」で、予想1,700億円はこれを大きく上回ります。土木の売上総利益率は20.4%予想で依然20%超の高水準。建築は12.0%予想でさらに改善が見込まれます。

業績ドライバー

業績ドライバーの要点

  • 単体次期繰越高3兆1,160億円が将来売上の下支え。代表繰越案件は半導体(JASM F23P2)、都市再開発(八重洲二丁目、泉岳寺)、土木大型公共(馬毛島、新名神城陽)
  • 単体建設事業の売上総利益率(土木24.6%・建築11.8%)が利益の最大変数
  • 資材コスト(東京製鐵全品種値上げ、生コン2027年度値上げ予定)と労務制約(技能者2035年129万人不足見込み)が中長期リスク
  • 海外開発の売却タイミング(米国流通倉庫48件、欧州再エネ1,500MW)が当期純利益を振らせる
鹿島建設(1812)上流環境と業績への波及
鹿島建設の上流環境、先行指標、企業への効き方、業績への波及を整理した図。各枠の下部コメントで因果の流れを確認できます。

ドライバー①:単体次期繰越高(将来売上の下支え)

2026年3月末の単体次期繰越高は3兆1,160億円(前年比+22.2%)。土木9,488億円、建築2兆1,230億円という内訳で、2027年3月期以降の売上を下支えします。

主要繰越案件には、土木では馬毛島(R5)仮設工事や新名神高速道路城陽工事、建築では八重洲二丁目中地区第一種市街地再開発、泉岳寺駅地区第二種市街地再開発、JASM F23P2 Project(半導体製造業)、赤坂二・六丁目地区開発計画、世界貿易センタービル新本館・ターミナル建設工事、札幌駅南口北4西3地区第一種市街地再開発が含まれます。発注者カテゴリは土木が官公庁・公共インフラ・エネルギー事業者、建築が再開発組合・半導体製造業・金融機関・宿泊/商業/スポーツ施設事業者と幅広いです。

ただし、繰越高が厚いだけでは利益にはなりません。施工体制(人手・協力会社・現場管理能力)の制約があるため、採算と施工体制を確保した受注を消化していくことが重要です。会社は「収益性や施工体制を確保した受注活動を継続する」と説明しています。

ドライバー②:単体建設事業の売上総利益率(利益の最大変数)

鹿島建設の利益増減の最大の変数は、単体建設事業の売上総利益率です。2026年3月期は土木24.6%・建築11.8%へ大幅改善し、営業利益2,407億円の過去最高更新につながりました。これは5年で最高水準です。

改善要因は、(1)受注時採算の改善(採算の良い工事を選別受注)、(2)原価低減(資材調達・施工方法の効率化)、(3)追加変更契約(工事中の仕様変更等による追加収入)、(4)施工中リスク管理(工事損失引当の精緻化、トラブル抑制)の4点で、いずれも構造的な積み上げです。

2027年3月期予想は土木20.4%(▲4.2pt)、建築12.0%(+0.2pt)。土木は2026年3月期の特殊な高水準からの反落、建築は受注時採算改善が継続する見通しです。土木20.4%でも過去5年比で上位水準です。

ドライバー③:資材・労務コストと施工体制

資材コスト:鋼材・コンクリートが本格上昇局面

国土交通省「主要建設資材需給・価格動向調査」(2026年4月1-5日)では、7資材13品目の需給は全て「均衡」ですが、価格は生コン・骨材・異形棒鋼・H形鋼・石油等が「やや上昇」と整理されています。背景には次のような業界価格イベントがあります。

  • 東京製鐵 2026年4月契約: 全品種値上げ(条鋼・厚板+5,000円、薄板+7,000円)。全面高は3年11カ月ぶり。
  • 東京製鐵 2026年5月契約: H形鋼+5,000円、異形棒鋼・厚板+3,000円など連続値上げ。
  • 東京地区生コン: 2026年度は25,000円/立方メートルで据置きだが、2027年度に最低3,000円値上げ予定。

これらの価格改定が鹿島建設の粗利率にどの程度効くかは、契約条件・価格転嫁・調達時期によって変わるため、営業利益への影響額は推計しません。「粗利率維持リスクの背景」として読むのが適切です。

労務コストと施工体制:短期は均衡、中長期は構造的制約

労務面では全国8職種の過不足率は0.1%の過剰、見通しは「普通」と短期需給は均衡しています(国交省、2026年3月調査)。一方で中長期の人材構造は深刻です。

指標 数値・時点 意味
建設業就業者数 2024年477万人(1997年ピーク685万人比69.6%) 長期的な施工能力
建設技能者数 2024年303万人(ピーク464万人比65.3%) 現場施工能力、外注費
2035年度技能労働者見通し 必要393万人、見通し264万人、不足見込み129万人 中長期施工体制制約
設計労務単価 2026年度公共工事+4.5% 労務費上昇圧力

鹿島建設は中期経営計画でサプライチェーン強化に1,000億円を充当しています。協力会社への工事代金支払早期化、建設技能者向けポイントサービス、手当・報奨金拡充を推進しており、施工体制制約と労務費上昇への先手対応です。

ドライバー④:国内外の開発物件売却タイミング(米国金利・不動産市況が補助指標)

国内開発・海外関係会社が手がける不動産開発は、物件売却の時期で年度利益が振れます。とくに海外開発は2025年度に▲45億円の赤字化を経験し、2026年度に151億円へ回復する計画です。

  • 国内開発: 2027年3月期は売上1,000億円、複数物件売却見込み。開発系関係会社含む国内開発事業当期純利益180億円を予想
  • 海外関係会社(開発): 2025年度は米国不動産開発事業で売却件数減少が減益要因(KUSA▲6億円、KAP▲1億円、KE▲44億円)。2026年度は売却時期を先送りした物件含めて10-15件売却計画、海外開発事業当期純利益151億円を予想

海外開発資産の構成は8,400億円、地域別では北米45%・欧州26%・アジア25%。短期回転型74%(売却前提)・長期保有型26%という構成で、物件用途では倉庫40%・住宅22%・オフィス13%です。代表案件には、米国流通倉庫開発(運営・開発中48件)、欧州再エネ発電施設20件・約1,500MW、ダニエル・K・イノウエ国際空港ウアレナ通り駐車場新築(米国)、P209ドライドック3リプレイスメント工事(米国)、ビクトリア州政府グラウンドリースモデル計画2期(オーストラリア)が含まれます。

海外開発の利益タイミングを左右する外部指標は次のとおりです(鹿島の利益への直接影響は会社未開示であり、「補助指標」として扱います)。

指標 数値・時点 出典 効き方
米国FF金利誘導目標 3.50-3.75%(2026年4月29日FOMC維持) FRB公式 北米開発資産売却時の買い手利回り、Cap Rateに影響
米国産業/物流不動産空室率 6.7%、availability 9.2%(2026年Q1) CBRE 米国流通倉庫のリーシング・売却環境
米国産業/物流リース活動 2026年Q1 249.8 million sq.ft、前年比+14% CBRE 需要の底堅さ
米国Cap Rate動向 H2 2025調査で「概ね安定、ピークアウト観測」 CBRE Cap Rate Survey 売却価格・利回りに影響
国内短期金利前提 無担保コール翌日物0.766%→1.168%前提 建設投資見通し 国内開発・資金調達コスト

鹿島建設は為替・金利感応度を会社開示していません。為替の規模感を見るための単純換算として、海外関係会社売上1兆919億円が仮に全額米ドル建てで1ドル150円から10円円高になると、売上換算額の規模感は約728億円相当となります(会社開示ではない参考試算。実際は通貨構成・現地費用・ヘッジ・連結換算の影響があるため、営業利益影響額ではありません)。

ドライバー⑤:海外関係会社の建設事業等(連結利益の変動緩衝材)

海外建設は2025年度純利益198億円→2026年度予想82億円へ減少予想です。一方で海外開発は▲45億円→151億円予想と回復するため、海外関係会社全体(建設+開発)として見ると2025年度99億円→2026年度予想233億円と回復見込みです。建設と開発のサイクルがずれることで、海外関係会社の純利益が緩衝される構造です。代表案件にはトアパヨ統合開発(シンガポール)、ダニエル・K・イノウエ国際空港、P209ドライドック3リプレイスメント、ビクトリア州政府グラウンドリースモデル計画2期があります。

上流環境と先行指標

次の決算で見るべき指標

  • 単体次期繰越高の消化ペース(3兆1,160億円の施工体制内での売上化)
  • 土木・建築の売上総利益率(2027年3月期予想:土木20.4%、建築12.0%)の実績
  • 海外開発物件売却の進捗(2026年度10-15件計画、海外開発純利益151億円見通し)
  • 米国FF金利・産業空室率6.7%の方向感(海外開発売却の補助指標)

先行指標ダッシュボード

指標名 現状の数値・水準 企業への影響 重要度 波及ラグ
連結建設受注高 3兆2,639億円、+24.4% 将来売上の入口 1-8四半期
単体次期繰越高 3兆1,160億円、+22.2% 将来売上の下支え 1-12四半期
単体土木 売上総利益率 24.6%、2027年3月期予想20.4% 営業利益の最大変動要因 当期-4四半期
単体建築 売上総利益率 11.8%、2027年3月期予想12.0% 受注時採算改善の持続性 1-8四半期
海外開発物件売却 2025年度売却9件、2026年度10-15件計画 海外開発純利益▲45→151億円予想 即時-4四半期
国内建設投資見通し 2026年度80兆9,400億円、+5.4% 国内建設需要の上流指標 2-8四半期
民間非住宅建設投資 2026年度21兆3,400億円、+4.7% 鹿島の重点分野の需要背景 2-8四半期
政府分野投資 2026年度24兆6,500億円、+7.7% 土木・官公庁工事需要 2-8四半期
国内DCサービス市場 2025年4.7兆円、2030年7兆円近い規模 DC建設需要の背景 2-8四半期
米国FF金利 3.50-3.75%(FOMC維持) 北米開発売却の補助指標 1-4四半期
米国産業空室率 6.7%、availability 9.2% 倉庫リーシング/売却環境 1-4四半期
主要建設資材需給 需給均衡、価格は一部「やや上昇」 粗利率維持のリスク 1-4四半期
東京製鐵全品種値上げ 2026年4月条鋼+5,000円等、3年11カ月ぶり 鋼材費リスクの背景 1-4四半期
生コン値上げ予定 東京地区2027年度+3,000円予定 コンクリート原価 2-8四半期
建設技能者数 2024年303万人、ピーク比65.3% 施工能力・労務費 1-3年
2035年度技能労働者不足 不足見込み129万人 中長期施工体制制約 2-10年
設計労務単価 2026年度公共工事+4.5% 労務費上昇圧力 1-4四半期
無担保コール翌日物前提 0.766%→1.168% 国内開発・資金調達 2-8四半期

確認頻度の目安:会社固有指標(受注高・繰越高・粗利率)は四半期決算で。建設投資見通しは建設経済研究所(半年〜年次)、主要建設資材需給は国交省(月次〜四半期)、建設労働需給は国交省(月次)、技能者数推計は日建連、米国FF金利はFRB(FOMCは年8回)、米国産業不動産はCBRE(四半期)で。

先行指標を左右する上流要因

増加(上振れ)要因:国内建設投資・民間非住宅・公共投資が想定以上に拡大、DC・半導体・洋上風力の大型案件継続、受注時採算改善が継続して建築の粗利率が12.0%予想を上回る、土木の大型工事進捗が好調で粗利率が20.4%予想を上回る、海外開発物件売却が10-15件計画を上回るペース(米国産業空室率6.7%の安定継続、Cap Rateピークアウト観測の実現)、FF金利の利下げ局面入りで北米開発の買い手利回り改善、サプライチェーン強化策(1,000億円)が機能して施工体制制約が緩和。

減少(下振れ)要因:東京製鐵の連続値上げや生コン2027年度値上げが本格化、鋼材・コンクリート費が粗利率を圧迫、設計労務単価+4.5%が外注費上昇に転化、建設技能者2035年129万人不足の前倒し顕在化、施工体制の制約で繰越高消化ペースが鈍化、海外開発物件売却の遅延(FF金利高止まり・米国産業空室率上昇)、海外関係会社の建設採算悪化、為替変動(会社感応度非開示)。

業績予測(3シナリオ)

シナリオ 主な前提 営業利益の見方 方向感
ベース 会社予想通り。土木粗利率20.4%、建築12.0%、海外開発売却回復10-15件、FF金利3.50-3.75%維持 営業利益2,000億円、当期純利益1,700億円 中計目標を大きく上回る高水準
上振れ(前提付き試算) 土木粗利率が会社予想(20.4%)を上回る、建築粗利率改善継続、海外開発売却が10-15件を上回るペース、FF金利の利下げで買い手活発化 営業利益2,000億円超の可能性 受注残の厚みと採算管理が機能
下振れ(前提付き試算) 東京製鐵連続値上げ・生コン値上げが本格化して粗利率低下、技能者不足の前倒し顕在化、海外開発売却遅延(産業空室率上昇)、施工体制制約 営業利益2,000億円割れリスク 高水準の粗利率が一段下振れする局面

中期経営計画と株主還元方針

中長期で見るポイント

  • 中計の2026年度(2027年3月期)当期純利益目標1,300億円以上、2030年度1,500億円以上、ROE 10%以上継続
  • 中計3か年累計の連結当期純利益は計画策定時3,500億円程度から4,700億円以上へ上振れ見込み
  • 株主還元は3か年累計で配当1,900億円程度+自己株式取得900億円程度、サプライチェーン強化に1,000億円

鹿島グループ中期経営計画(2024-2026)では、2026年度(2027年3月期)の連結当期純利益1,300億円以上、2030年度1,500億円以上、ROE 10%以上の継続を目標としています。投資総額は3か年累計で1兆2,000億円程度(R&D 600億円、デジタル投資 500億円、戦略的投資枠 800億円、国内開発事業投資 3,200億円、海外開発事業投資 6,300億円)。

2026年5月の財務戦略アップデートでは、中計3か年累計の連結当期純利益は計画策定時3,500億円程度から4,700億円以上へ上振れ見込みと示されました。中期経営計画を上回る利益と政策保有株式売却を資金源に、株主還元(3か年累計で配当1,900億円程度、自己株式取得900億円程度)とサプライチェーン強化(1,000億円)を拡充する方針です。

株主還元の動き: 2026年3月期の年間配当は従来予想132円から146円へ引き上げ、2027年3月期予想も146円。2027年3月期は400億円の自己株式取得を計画し、保有自己株式を発行済株式総数の5%程度となるよう消却予定です。政策保有株式は中計期間中(2026年度末まで)に連結純資産の20%未満へ縮減する方針です。

成長テーマ

成長テーマの要点

  • 半導体・データセンター(Rapidus、JASM、国内DC市場2030年7兆円近い規模)が建築需要の柱
  • 洋上風力・国土強靭化(秋田洋上風力、馬毛島、新名神城陽)が土木需要の柱
  • 海外建設(北米・アジア・欧州)と海外開発(米国流通倉庫48件、欧州再エネ1,500MW)が利益の上乗せ・変動要因
  • R&D・デジタル化・サプライチェーン強化(1,000億円)で粗利率の維持と施工体制を確保

すべて中長期オプションとして扱い、確定収益として書きません。

半導体・データセンター(建築需要の最重要テーマ)

2026年3月期の主な完成にはRapidus新工場IIM-1とSMC Japan Technical Center building A/B/Cが、繰越にはJASM F23P2 Projectが含まれます。先端半導体・データセンター投資は経済産業省でも政策テーマ化されており、市場規模では国内データセンターサービス市場が2025年4兆7,231億円、2026年5兆円超、2030年に7兆円近い規模に達する見通し(富士キメラ総研調査をCloud Watchが報道)。日本データセンター建設市場はIMARC推計で2034年133億米ドル、2026-2034年CAGR 6.54%とされます。これらは鹿島の受注額・利益額ではなく「需要背景」として読みます。

洋上風力・国土強靭化(土木需要の柱)

秋田県男鹿市・潟上市・秋田市沖洋上風力発電事業の風車基礎建設工事を受注。神楽山風力発電所が完成。馬毛島(R5)仮設工事や新名神高速道路城陽工事が繰越に含まれます。建設投資見通しでは2026年度の国内建設投資が80兆9,400億円(+5.4%)、政府分野投資が24兆6,500億円(+7.7%)と拡大基調にあります。

都市再開発(建築受注残の質を支える)

八重洲二丁目中地区第一種市街地再開発、泉岳寺駅地区第二種市街地再開発、田町駅西口駅前地区開発、(仮称)SMBC九段プロジェクト、赤坂二・六丁目地区開発計画、世界貿易センタービル新本館、札幌駅南口北4西3地区第一種市街地再開発など、都心の大型再開発案件が繰越・受注に多数。発注者カテゴリは再開発組合、不動産事業者、金融機関を含みます。

海外建設・開発(北米・アジア・欧州)

トアパヨ統合開発(シンガポール)、ダニエル・K・イノウエ国際空港ウアレナ通り駐車場新築(米国)、P209ドライドック3リプレイスメント工事(米国)、ビクトリア州政府グラウンドリースモデル計画2期(オーストラリア)などが進行中。海外開発資産の地域構成は北米45%・欧州26%・アジア25%で、米国流通倉庫48件・欧州再エネ1,500MWを保有・運営しています。中期経営計画では海外開発事業投資6,300億円を計画。

R&D・デジタル化・サプライチェーン強化

中計でR&D 600億円、デジタル投資 500億円を計画。施工管理のデジタル化、エンジニアリング力強化、生産性向上を通じて、粗利率の維持・向上を狙います。さらに、サプライチェーン強化に1,000億円を充当し、協力会社への工事代金支払早期化、建設技能者向けポイントサービス、手当・報奨金拡充を推進。中長期の人材構造(2035年技能労働者129万人不足見込み)への先手対応です。

リスク

主なリスクの見方

  • 最大リスクは土木粗利率の反落(2027年3月期予想20.4%)と資材・労務コスト再上昇(東京製鐵全品種値上げ・生コン2027年度値上げ予定・設計労務単価+4.5%)
  • 海外開発物件売却の遅延は当期純利益の年度ズレ要因(2025年度▲45億円の再来リスク)
  • 建設技能者2035年129万人不足見込みは中長期構造リスク
  • 各リスクは「下振れ」だけでなく「上振れにもなる裏表」の構造を持つ
リスク項目 対応する上流変数 顕在化条件 対称性(上振れにもなる裏表)
土木粗利率の反落 大型工事進捗、追加変更契約、原価管理 2026年3月期24.6%の特殊高水準が、2027年3月期20.4%予想を下回る 工事進捗・原価管理が想定以上に好調なら上振れ
鋼材コスト上昇 東京製鐵連続値上げ、異形棒鋼・H形鋼 全品種値上げの長期化、価格転嫁の遅れ 鋼材価格が落ち着けば粗利率維持
コンクリート原価上昇 生コン2027年度値上げ予定(東京地区+3,000円/㎥) 2027年度から28,000円/㎥以上へ切り上げ 価格据置きが続けば中期的に粗利率寄与
労務費上昇・施工体制制約 建設労働需給、設計労務単価+4.5%、技能者2035年129万人不足 労務費の本格上昇、技能者不足の前倒し顕在化 サプライチェーン強化策(1,000億円)が機能すれば緩和
海外開発物件売却の遅延 FF金利、米国産業空室率、Cap Rate 2025年度▲45億円の再来。FF金利の利下げ遅れ、空室率上昇、2026年度10-15件計画を下回る 売却タイミング回復で純利益が上振れ(151億円計画達成)
海外建設の採算悪化 海外建設プロジェクト 海外関係会社建設等の純利益198億円→82億円予想からさらに下振れ 建設改善が継続すれば上振れ
受注反動減 過去最高受注からの反動 2027年3月期受注高2兆6,700億円予想を下回る 受注が想定を上回れば将来売上の上振れ
為替(円高) 北米・アジア・欧州市場、為替(会社感応度非開示) 海外売上1兆919億円の円換算減 為替円安で上振れ
政策保有株式売却タイミング 株式市場 売却が想定より遅延 売却益と政策保有比率縮減が同時進行で資本効率改善

まとめ

鹿島建設の業績は、受注残(次期繰越3兆1,160億円)と単体建設事業の売上総利益率改善で利益水準が一段切り上がりました。2026年3月期は売上高3兆672億円・営業利益2,407億円・当期純利益1,773億円といずれも過去最高、営業利益率7.8%・ROE 13.3%はいずれも5年で最高水準です。連結営業利益2,407億円のうち単体本体が73.8%(1,776億円)を占める一極構造で、利益急増の本丸は売上高ではなく、土木の売上総利益率が15.4%から24.6%へ、建築が9.6%から11.8%へ改善したことです。

2027年3月期は売上2兆9,000億円・営業利益2,000億円・当期純利益1,700億円と減収減益予想ですが、これは2026年3月期が過去最高だった反動であり、中期経営計画の2026年度当期純利益目標1,300億円以上を大きく上回る水準です。中計3か年累計の連結当期純利益は計画策定時3,500億円程度から4,700億円以上へ上振れ見込み。配当146円・自社株取得400億円・サプライチェーン強化1,000億円という具体的な株主還元・施工基盤強化のコミットメントも明確です。

海外関係会社は「建設改善・開発赤字」の二層構造を持ち、海外開発は2025年度▲45億円から2026年度151億円へ回復する計画です。米国FF金利3.50-3.75%維持・産業空室率6.7%・Cap Rateピークアウト観測といった補助指標が売却環境を左右します。

中長期では、データセンター(2030年市場規模7兆円近い規模)・半導体(Rapidus、JASM)・洋上風力・国土強靭化の追い風と、海外関係会社の建設・開発拡大が中計後半の柱です。一方で、東京製鐵全品種値上げ・生コン2027年度値上げ予定・設計労務単価+4.5%・技能者2035年129万人不足見込みといったコスト・人材制約は長期リスクとして意識する必要があります。

次の四半期決算で確認すべき4指標:

  • 単体次期繰越高の消化ペース(3兆1,160億円の繰越が施工体制内でどの程度売上化されるか)
  • 土木・建築の売上総利益率(2027年3月期予想:土木20.4%、建築12.0%に対する実績の上下動)
  • 海外開発物件売却の進捗(2026年度10-15件計画、海外開発純利益151億円見通しの達成状況)
  • 米国FF金利・産業空室率6.7%の方向感(海外開発売却環境の補助指標)

よくある質問

Q. 鹿島建設(1812)の業績ドライバーは何ですか?

A. 最大のドライバーは、連結建設受注高(3兆2,639億円、過去最高)、単体次期繰越高(3兆1,160億円、+22.2%)、単体建設事業の売上総利益率(土木24.6%・建築11.8%)の3点です。特に2026年3月期は、土木の売上総利益率が前期15.4%から24.6%へ大幅改善(+9.2pt、5年で最高水準)したことが、営業利益2,407億円(前年比+58.5%、過去最高)の押し上げにつながりました。連結営業利益の73.8%は単体本体で稼ぐ集中構造です。加えて、海外関係会社の開発事業(2025年度▲45億円→2026年度151億円予想)の売却タイミングが当期純利益を左右します。

Q. 2027年3月期が減収減益予想なのは悪材料ですか?

A. 2026年3月期が過去最高益で、その反動が大きいため減収減益予想ですが、構造悪化と読むのは早計です。2027年3月期予想は売上高2兆9,000億円、営業利益2,000億円、当期純利益1,700億円で、中期経営計画の2026年度当期純利益目標「1,300億円以上」を大きく上回ります。土木の売上総利益率は24.6%から20.4%への低下を見込みますが、それでも20%超は5年で見ても上位水準。建築は11.8%から12.0%へ改善見通しです。

Q. 鹿島建設(1812)を見るうえで次に確認すべき指標は何ですか?

A. 単体次期繰越高3兆1,160億円の消化ペース、土木・建築の売上総利益率の維持、海外開発物件売却の進捗(2026年度10-15件計画)、米国FF金利と産業空室率6.7%の方向感が重要です。受注高だけでなく、「採算と施工体制を伴って売上化できるか」「海外開発の売却が計画通り進むか」が利益を左右します。中長期では建設技能者2035年129万人不足見込み、東京製鐵全品種値上げ・生コン2027年度値上げ予定といったコスト・人材制約も意識する必要があります。

参照資料

  • 鹿島建設「2025年度 決算説明会資料(テキスト付)」会社IR(確認日:2026年5月14日)
  • 鹿島建設「2026年3月期 決算短信」会社IR(確認日:2026年5月14日)
  • 鹿島建設「鹿島グループ中期経営計画(2024-2026)」会社IR(確認日:2026年5月14日)
  • 鹿島建設「鹿島統合報告書2025」会社IR(確認日:2026年5月14日)
  • 建設経済研究所・経済調査会「建設経済モデルによる建設投資の見通し(2026年4月)」建設経済研究所(確認日:2026年5月14日)
  • 国土交通省「主要建設資材需給・価格動向調査(令和8年4月1-5日現在)」国土交通省(確認日:2026年5月14日)
  • 日建連「建設業の現状 建設労働」日建連(確認日:2026年5月14日)
  • CBRE「U.S. Industrial & Logistics Figures Q1 2026」CBRE(確認日:2026年5月14日)

執筆:FIC投資研究所

本記事は、AIを活用して決算説明会資料、決算短信、中期経営計画、統合報告書、各種開示資料、業界ニュース、専門レポートを整理したうえで作成し、公開前にFIC投資研究所が内容確認と編集を行っています。本記事は特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断は読者ご自身の責任でお願いいたします。記載された数値は各資料の時点情報であり、最新値は各社IRや公的統計で必ずご確認ください。鹿島建設の決算月は3月で、2026年3月期=2025年4月〜2026年3月、2027年3月期=2026年4月〜2027年3月です。同業他社比較のうち大成建設・清水建設の数値は決算速報系を参照したものであり、最新の公式PDFで再確認することを推奨します。為替の単純換算(海外売上1兆919億円から1ドル10円円高で約728億円相当)は会社開示ではなく、Codex参考試算であり営業利益影響額ではありません。

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