
ホンダ(7267)は、二輪の高収益 × 四輪HEVの回復力 × EV関連損失の織り込み × 金融サービスの安定利益 で業績が動く、複合モビリティ企業
本記事では、ホンダの業績を「二輪がどれだけキャッシュを稼ぐか」「四輪がEV損失後にHEV/SDVで稼ぐ力を戻せるか」「関税・為替・金利が利益をどう左右するか」という3つの視点から整理する。2026年3月期のEV関連損失1兆5,778億円と調整後営業利益1兆393億円、四輪HEV小売台数92.9万台、Honda 0 Saloon/Honda 0 SUV/Acura RSXの中止、2027年3月期の回復見通しまでを解説する。
💡 ワンポイント解説:まずざっくり言うと
ホンダは、バイク(二輪)、車(四輪)、ローン・リースなどの金融サービス、発電機・芝刈機などのパワープロダクツを展開する複合モビリティ企業です。2026年3月期は四輪のEV戦略を見直したことで1兆5,778億円の大きな損失を計上し、営業赤字となりました。ただしこの一時的な損失を除く調整後営業利益は1兆393億円で、二輪事業は7,319億円の営業利益・営業利益率18.2%・世界シェア約4割と非常に強い収益源です。HEV(ハイブリッド車)小売台数は92.9万台(中国除き87.0万台)と前年比で着実に伸び、2027年3月期は営業利益5,000億円への回復を見込んでいます。
30秒要約
- 事業の見方:二輪・四輪・金融サービス・パワープロダクツの複合体。二輪と金融が安定キャッシュ、四輪が変革期
- 業績ドライバー:二輪販売台数(2,210万台)、HEV小売台数(92.9万台)、EV関連損失(▲1兆5,778億円)の織り込み、金融サービス債権9兆8,956億円、関税▲770→▲1,420億円見通し
- 追い風:二輪は過去最高水準、HEV小売+3.1万台(中国除き+6.2万台)、2027年3月期は二輪2,280万台計画と次世代HEV13モデル投入
- リスク:EV関連損失の追加計上(2027年3月期も5,000億円残)、関税拡大(日米合意15%枠組み)、四輪HEV回復遅れ、半導体供給制約、米国金利環境
- 見る指標:①二輪販売台数(インド・ブラジル・ASEAN)、②HEV小売台数と北米モデルミックス、③EV関連損失と関税影響の実績
READING GUIDE
企業分析で出てくる数字を先に確認する投資の読み方へこの分析を読む補助線:ホンダは二輪、四輪、金融サービスで利益率と資金の出入りが大きく違います。あわせてセグメント情報の読み方、営業利益率の見方、キャッシュフロー計算書の見方を確認すると、EV関連損失と本業の稼ぐ力を分けて見やすくなります。
Contents
企業概要
本田技研工業(東証プライム、3月決算)は、二輪・四輪・金融サービス・パワープロダクツの4セグメントを展開する複合モビリティ企業です。2026年3月期の連結売上収益は21兆7,966億円、二輪事業の世界シェアは約40%。長期目標として2050年カーボンニュートラル、および2050年に全世界でホンダの二輪車・四輪車が関与する交通事故死者ゼロを掲げています。
事業ポートフォリオと規模
主要な事業基盤は以下のとおりです。二輪は事業・地域・パワートレインの分散が利き、金融サービスが安定キャッシュを生み、四輪の電動化/知能化投資を支える構造です。
| 項目 | 数値 | 注記 |
|---|---|---|
| 二輪世界シェア | 約40% | 2025年3月末、会社調べ |
| 二輪生産体制 | 23カ国37拠点 | 年間2,000万台超の生産能力 |
| 二輪販売ネットワーク | グローバル3万店以上 | — |
| 二輪累計生産 | 5億台突破 | 2025年5月時点 |
| 二輪グループ販売台数 | 2,210.1万台 | 2026年3月期実績(前年比+7.4%)。2027年3月期計画2,280万台 |
| 四輪グループ販売台数 | 338.7万台 | 2026年3月期実績。2027年3月期計画339.0万台 |
| HEV小売台数(グローバル) | 92.9万台 | 2026年3月期、前年比+3.1万台 |
| HEV小売台数(中国除く) | 87.0万台 | 前年比+6.2万台 |
| EV小売台数(グローバル) | 7.3万台 | 前年比▲0.4万台 |
| 金融サービス債権 | 9兆8,956億円 | 2026年3月期末、前年8兆9,306億円から+9,650億円 |
| 米ドル平均為替 | 151円 | 2026年3月期実績。2027年3月期前提145円 |
| インド二輪追加生産能力 | +65万台/年 | ヴィッタルプール工場、2027年稼働予定。国内4工場合計約700万台 |
同業他社比較・業界ポジション
ホンダの事業構造は二輪・四輪・金融サービスの複合のため、単一の比較先には収まりません。事業の方向感での比較先は以下のとおりです。
| 会社 | 主軸事業 | ホンダとの比較観点 |
|---|---|---|
| ホンダ(7267) | 二輪・四輪・金融・パワー | 二輪世界シェア約4割、HEV回帰、EV3モデル中止 |
| トヨタ自動車(7203) | 四輪(HEV・EV・FCEV)、金融 | HEV全方位戦略の代表先 |
| 日産自動車(7201) | 四輪(EV・HEV)、北米中心 | EV・北米・構造改革 |
| スズキ(7269) | 四輪小型車(インド)、二輪 | インド事業 |
| ヤマハ発動機(7272) | 二輪、マリン、新興国 | 二輪・マリン |
| SUBARU(7270) | 四輪(北米依存) | 関税・為替 |
※各社の売上規模・利益率の横並びは資料非開示。事業構造の方向感のみ整理しています。
収益構造
この章の要点
- 売上規模は四輪が最大(14兆1,669億円、構成比約65%)、利益貢献は通常時に四輪・金融が中心だが、2026年3月期はEV関連損失で四輪が大幅赤字
- 二輪事業は営業利益7,319億円・営業利益率18.2%・世界シェア約40%と高収益体質。金融サービスも債権9兆8,956億円・営業利益2,755億円の安定収益
- EV関連損失を除く調整後営業利益は1兆393億円。本業の収益力は維持
セグメント別売上構成と主要顧客類型
| セグメント | 2026年3月期売上収益 | 営業利益 | 営業利益率 | 顧客類型 |
|---|---|---|---|---|
| 二輪事業 | 4兆188億円 | 7,319億円 | 18.2% | インド、ASEAN、ブラジル、欧州、日本などの二輪ユーザー、3万店以上の販売ネットワーク |
| 四輪事業 | 14兆1,669億円 | ▲1兆4,111億円 | ▲10.0% | 北米、日本、中国、アジアの四輪ユーザー、ディーラー網 |
| 金融サービス事業 | 3兆5,327億円 | 2,755億円 | 7.8% | 主に四輪購入者・ディーラー(北米中心) |
| パワープロダクツ及びその他 | 4,203億円 | ▲106億円 | ▲2.5% | 発電機・芝刈機等の業務用・個人ユーザー、航空関連顧客(航空機・航空エンジン営業利益▲372億円含む) |
※四輪事業はEV関連損失を除く調整後営業利益が425億円(営業利益率0.3%)。連結ベースの調整後営業利益は1兆393億円です。金融サービス債権は9兆8,956億円と前年比で約9,650億円増加しています。
利益構造の見方
ホンダの収益構造は、二輪と金融サービスが安定キャッシュを生み、四輪の電動化/知能化投資を支える構造になっています。2026年3月期は四輪電動化戦略の見直しに伴うEV関連損失が四輪セグメントを大幅赤字に押し下げましたが、二輪事業7,319億円・金融サービス2,755億円の利益、さらにEV関連損失を除く四輪調整後営業利益425億円が全社を支えました。
「営業赤字」だけを見て本業不振と読むのは正確ではなく、EV関連損失1兆4,536億円(持分法損益分1,241億円を加えると合計1兆5,778億円)を除く調整後営業利益は1兆393億円という併記が必須です。会社自身も決算説明会資料でこの調整後ベースを明示しています。
業績の全体像
業績を見るポイント
- 2026年3月期はEV関連損失1兆5,778億円により営業損失4,143億円。本業不振ではなく、戦略見直しに伴う一時的な損失計上が主因
- EV関連損失を除く調整後営業利益は1兆393億円。二輪・金融サービスは黒字を維持し、四輪調整後も425億円の黒字
- 2027年3月期は営業利益5,000億円・調整後営業利益1兆円見通し。EV関連損失5,000億円が残る
| 指標 | 2025年3月期 | 2026年3月期 | 2027年3月期見通し |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 21兆6,887億円 | 21兆7,966億円 | 23兆1,500億円 |
| 営業利益 | 1兆2,134億円 | ▲4,143億円 | 5,000億円 |
| 営業利益率 | 5.6% | ▲1.9% | 2.2% |
| 持分法による投資損益 | 9億円 | ▲1,620億円 | — |
| 税引前利益 | 1兆3,176億円 | ▲4,033億円 | 5,000億円 |
| 親会社所有者帰属当期利益 | 8,358億円 | ▲4,239億円 | 2,600億円 |
| EPS | 178.93円 | ▲106.06円 | 66.79円 |
| 米ドル平均為替 | 153円 | 151円 | 145円前提 |
| EV関連損失(営業利益分) | — | ▲1兆4,536億円 | ▲5,000億円 |
| EV関連損失合計(持分法含む) | — | ▲1兆5,778億円 | — |
| 調整後営業利益(EV関連損失等除き) | — | 1兆393億円 | 1兆円 |
| 1株配当 | 68円 | 70円 | 70円予想 |
EV関連損失の内訳
2026年3月期に計上された営業利益分のEV関連損失▲1兆4,536億円の内訳は以下のとおりです。
| 項目 | 2026年3月期 | 2027年3月期予想 |
|---|---|---|
| 開発資産・設備の除却と減損 | ▲6,439億円 | — |
| 戦略変更に伴う追加的な費用 | ▲5,426億円 | ▲5,000億円 |
| 第3四半期累計で発生したEV関連損失 | ▲2,671億円 | — |
| 営業利益分小計 | ▲1兆4,536億円 | ▲5,000億円 |
| 持分法損益分(中国等の持分法投資損益関連) | ▲1,241億円 | — |
| 合計 | ▲1兆5,778億円 | ▲5,000億円 |
中止対象モデルはHonda 0 Saloon、Honda 0 SUV、Acura RSXの3モデル(いずれも米国生産予定)で、2026年3月12日のメディアブリーフィングで発表されました。EV関連損失合計は最大2.5兆円を見込み、2026年3月期(最大1.3兆円)と2027年3月期(最大1.2兆円)で大部分を計上する設計です。
💡 ワンポイント解説:営業赤字でも「本業不振」とは限らない
2026年3月期の営業損失4,143億円は、EV関連損失1兆4,536億円という戦略見直しコストを丸ごと計上した結果です。これを除いた「調整後営業利益」は1兆393億円で、2025年3月期の営業利益1兆2,134億円と比べて約86%の水準を維持しています。二輪事業は過去最高水準の利益・利益率を更新しており、本業の収益力そのものが急失速したわけではありません。
2026年3月期の営業利益増減要因
| 要因 | 影響額 | 備考 |
|---|---|---|
| 販売影響 | +1,178億円 | 売上台数・構成、販売奨励金、金融事業等 |
| 売価/コスト影響 | +2,923億円 | 価格改定・原価低減等がプラス |
| 研究開発費 | ▲1,185億円 | 研究開発費増 |
| 諸経費 | ▲417億円 | 品質関連費用等 |
| 関税影響 | ▲770億円 | 四輪中心の負担 |
| 為替影響 | ▲3,469億円 | 米ドル、アジア通貨等 |
| EV関連損失 | ▲1兆4,536億円 | 四輪電動化戦略見直し等 |
EV関連損失を除けば、販売・売価/コスト改善のプラスが研究開発費・関税・為替のマイナスを上回り、調整後営業利益1兆393億円という水準が維持されています。
業績ドライバー
業績ドライバーの要点
- 最大の収益源は二輪事業(営業利益7,319億円・営業利益率18.2%・世界シェア約40%)。インド・ブラジル・ASEAN中心に拡大基調
- 四輪はHEV小売台数92.9万台(中国除き87.0万台、+6.2万台)と着実に拡大。次世代HEV13モデル投入(2027年から4年間)が計画
- EV関連損失合計は最大2.5兆円。中止対象はHonda 0 Saloon/Honda 0 SUV/Acura RSXの米国向け3モデル

ドライバー①:二輪販売台数と地域ミックス(最大の収益源)
2026年3月期の二輪事業営業利益7,319億円、営業利益率18.2%、世界シェア約40%。グループ販売台数は2,210.1万台(前年比+7.4%)で、アジア+126.0万台、その他(南米含む)+36.6万台が増益要因です。2027年3月期はグループ販売2,280万台計画で、アジア+48.2万台、その他+15.7万台、北米+7.2万台が増加見込みです。
インドではヴィッタルプール工場へ年間65万台の生産能力を増設(2027年稼働予定)し、国内4工場の年間総生産能力が約700万台へ拡大します。Make in India、部品内製化、車体モジュール化、現地調達加速でコスト競争力を高める方針です。電動二輪は2024年がグローバル展開元年とされ、CUV e:、ICON e:、ACTIVA e:(インド専用)、QC1を投入。インド国内の電動二輪市場は2025年3月期に110万台規模に拡大しており、2028年からインドで電動二輪専用工場の稼働を計画しています(組み立てライン長を従来比約40%削減)。
誰が買うか:インド、ASEAN、ブラジル、欧州、日本などの二輪ユーザー、グローバル3万店以上の販売ネットワーク経由。
ドライバー②:四輪HEV/ICEのモデルミックス改善(HEV小売92.9万台が着実に伸長)
四輪事業は2026年3月期に営業損失1兆4,111億円となりましたが、EV関連損失を除く調整後営業利益は425億円(営業利益率0.3%)と薄利ながら黒字。HEV小売台数は92.9万台(前年比+3.1万台)、中国除きでは87.0万台(前年比+6.2万台)と着実に拡大しています。会社はEV計画台数を大幅に削減しHEVを中核に据え直し、以下の取り組みを進めます。
- 次世代HEVは現行2023年モデル比でコスト30%以上削減(2018年モデル比で50%以上)、燃費10%以上向上を目標
- HEV用プラットフォーム刷新で現行中型モデル比約90kg軽量化
- 2027年から4年間で次世代ハイブリッドモデルをグローバル13モデル投入
- 北米Dセグメント以上向け新ハイブリッドシステムを2020年代後半に投入
- オハイオ州メアリズビル工場でEV/HEV混流生産ラインを整備し、需要変動に応じた供給能力・アロケーション最適化
- LGエナジーソリューションとの合弁による米国バッテリー工場、GSユアサとの共同開発バッテリーの将来自前生産
誰が買うか:北米・日本・中国・アジアの四輪ユーザー(特に米国HEV需要が回復軸)。
ドライバー③:EV関連損失の織り込みと投資規律
四輪電動化戦略の見直しに伴うEV関連損失は最大2.5兆円を見込み、2026年3月期と2027年3月期で大部分を計上する設計です。中止対象モデルはHonda 0 Saloon、Honda 0 SUV、Acura RSX(2026年3月12日発表、米国生産予定だった3モデル)。
電動化・ソフトウェア領域への投資計画は2024年5月時点10兆円から2025年5月時点7兆円へ削減。既投資約3.5兆円のうち、次世代ADAS、次世代HEV、ソフトウェア開発などICE/HEVにも活用できる投資は継続活用されます。2031年3月期の四輪電動製品販売比率目標は30%から20%へ変更されました。
💡 ワンポイント解説:「EV撤退」ではなく「EV計画台数の見直し」
会社方針は「EV計画台数を大幅に減らしHEVに注力する」ですが、EVから撤退するわけではありません。EV需要が再び拡大に転じるタイミングを見据えて、EVは長期視点で仕込みを継続するとされています。SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)共通領域(Honda SENSING 360、Honda SENSING Elite、ASIMO OS)はEV/HEV/ICE横断で活用されます。2031年3月期の電動製品販売比率目標は30%から20%への変更です(ゼロではない)。
ドライバー④:金融サービスの安定利益(債権9.9兆円)
2026年3月期の金融サービス事業営業利益は2,755億円(営業利益率7.8%)。前年比▲401億円ながら、金融サービス債権は9兆8,956億円(前年8兆9,306億円から+9,650億円)と拡大基調にあります。北米の四輪販売・顧客基盤に連動するストック型利益で、金利・信用コスト・中古車価格の影響を受けます。米国FF金利は2025年12月10日のFOMCで3.50-3.75%まで低下しており、金融サービス採算・車両ローン需要に影響します。
誰が買うか:主に四輪購入者・ディーラー(北米中心)。
ドライバー⑤:関税・為替(日米合意15%枠組み)
2026年3月期は関税▲770億円・為替▲3,469億円が利益を圧迫。2027年3月期見通しでは関税影響▲1,420億円(拡大)、為替影響+1,470億円(145円前提でプラス転換見込み)、売価/コスト影響▲3,130億円です。米国通商環境については、日米合意により日本産自動車・部品は既存税率と追加関税の合計が15%となる枠組みが2025年9月に実施されました。
なお、為替の1円あたりの単独感応度は資料内で明確に確認できないため、本記事では具体的な単独感応度の数値は扱っていません。
上流環境と先行指標
次の決算で見るべき指標
- 二輪販売台数(特にインド・ブラジル・ASEAN)の2,280万台計画への進捗
- HEV小売台数の北米中心の拡大(92.9万台、中国除き87.0万台からの伸び)
- EV関連損失と関税影響の実績(2027年3月期見通しからのブレ)
上流環境マップ
| 領域 | 変数 | 現状(時点付き) | 方向感 | 起源イベント |
|---|---|---|---|---|
| マクロ需要 | 世界EV販売 | 2025年 2,100万台、前年比+20%超(IEA Global Energy Review 2026) | 拡大、地域差大 | 中国・欧州・新興国 |
| マクロ需要 | 米国EV販売 | 2025年 前年比▲2% | 鈍化 | 税額控除終了、政策変化 |
| 業界構造 | 世界二輪市場 | 年5,000万台規模、2030年頃6,000万台規模見込み | 拡大 | グローバルサウス需要 |
| 業界構造 | インド二輪市場 | FY2025-26 2.17億台、+10.7%(SIAM) | 拡大 | 中間層拡大・都市化 |
| 政策・規制 | 米国通商政策・関税 | 日米合意で15%枠組み(2025年9月)。2026年3月期▲770億円→2027年3月期見通し▲1,420億円 | 拡大 | 米国通商政策 |
| 金融 | 米国FF金利 | 3.50-3.75%(2025年12月10日、FRB) | 低下基調 | 利下げサイクル |
| 為替 | USD/JPY | 2026年3月期151円、2027年3月期前提145円 | 円高方向 | 日米金融政策格差 |
| 技術 | HEV・ADAS・SDV | 次世代HEVコスト30%以上削減目標、Honda SENSING 360/Elite、ASIMO OS | 投資継続 | EV鈍化を受けたHEV回帰 |
上流環境の変化は、次に示す先行指標を経由して、最終的に各セグメントの利益に波及します。世界二輪市場の拡大はインド・ブラジル・ASEANの販売台数に、米国EV需要の動向はEV関連損失の追加計上に、北米HEV需要はHEV小売台数のモデルミックス改善に、米国通商政策は関税影響額に、それぞれ時間差を伴って影響します。
先行指標ダッシュボード
| 指標名 | 現状の数値・水準 | 企業への影響 | 重要度 | 波及ラグ(目安) |
|---|---|---|---|---|
| 二輪グループ販売台数 | 2,210.1万台(2026年3月期)、2,280万台計画 | 二輪利益の中心 | 高 | 即時〜1四半期 |
| 二輪インド+ブラジル+ASEAN | 2026年3月期にアジア+126.0万台、その他+36.6万台 | 二輪台数の主力 | 高 | 即時〜1四半期 |
| HEV小売台数 | 92.9万台(前年比+3.1万台)、中国除き87.0万台(+6.2万台) | 四輪モデルミックスの実績指標 | 高 | 即時〜1四半期 |
| 四輪グループ販売台数 | 338.7万台(2026年3月期)、339.0万台計画 | 四輪利益の規模 | 高 | 即時〜1四半期 |
| 北米四輪販売 | 2027年3月期+10.0万台計画 | 四輪HEV回復の中心市場 | 高 | 0-1四半期 |
| EV関連損失 | 2026年3月期▲1兆5,778億円、2027年3月期見通し▲5,000億円 | 営業利益・持分利益を圧迫 | 高 | 即時〜2四半期 |
| 関税影響 | 2026年3月期▲770億円、2027年3月期見通し▲1,420億円 | 四輪利益を圧迫 | 高 | 0-2四半期 |
| 米ドル/円 | 2027年3月期前提145円 | 売上・利益の円換算 | 高 | 即時 |
| 金融サービス債権 | 9兆8,956億円(前年比+9,650億円) | 金融サービスのストック利益源 | 中 | 1-4四半期 |
| 米国FF金利 | 3.50-3.75%(2025年12月10日) | 金融サービス採算・車両ローン需要 | 中 | 1-4四半期 |
| インド二輪市場 | FY2025-26 2.17億台、+10.7%(SIAM) | 二輪需要の追い風 | 中 | 1-4四半期 |
| 半導体供給 | 2026年3月期に四輪台数減要因として会社が言及 | 四輪生産・販売台数を下押し | 中 | 即時〜1四半期 |
確認頻度の目安:二輪・四輪販売台数・HEV小売台数は月次(Honda公式)と四半期決算で確認。EV関連損失・関税影響は四半期決算で。世界EV販売はIEAレポート(年次)、インド二輪はSIAM(月次・四半期)、米国FF金利はFRB(FOMC)で。
先行指標を左右する上流要因
増加(上振れ)要因:インド・ブラジル・ASEANの二輪需要が引き続き拡大する場合、北米HEV需要が想定以上に強くHEV小売台数が92.9万台からさらに伸びる場合、EV関連損失の追加計上が想定(最大1.2兆円)を下回り織り込み完了が早まる場合、関税影響の緩和(米国通商政策変化、現地生産・価格対応)、為替が円安方向(145円前提を下回る)、米国金利の低下で金融サービス採算・購入需要が改善する場合に、利益が上振れする方向に作用します。
減少(下振れ)要因:米国EV需要のさらなる鈍化により追加損失が発生する場合、関税影響が▲1,420億円を超えて拡大する場合、四輪HEV回復が遅れる場合(新モデル投入遅延・販売奨励金増・北米需要鈍化)、二輪新興国需要の鈍化、円高方向への為替変動、半導体供給不足の長期化、金融サービスの信用コスト上昇・中古車価格下落が、利益を押し下げる方向に作用します。
業績予測(3シナリオ)
2027年3月期の業績予測を、上流変数の動き方別に整理します。営業利益の具体額は会社未開示部分があるため、方向感のみで表現しています。
| シナリオ | 主な前提 | 営業利益の見方 | 方向感 |
|---|---|---|---|
| ベース | 会社見通し通り。EV関連損失▲5,000億円、関税▲1,420億円、為替145円 | 営業利益5,000億円、調整後営業利益1兆円 | 二輪・金融堅調、四輪は薄利回復 |
| 上振れ(前提付き試算) | EV損失追加が想定下回り、北米HEV需要強く、関税緩和、為替円安、半導体正常化 | 調整後営業利益1兆円超の可能性 | 二輪世界市場拡大とHEV回復が加速 |
| 下振れ(前提付き試算) | 米国EV鈍化深化で追加損失、関税▲1,420億円超、HEV回復遅れ、円高、半導体長期不足 | 営業利益5,000億円割れリスク | EV損失追加と四輪薄利が長期化 |
中期経営計画と株主還元方針
中長期で見るポイント
- 2031年3月期目標:全社ROIC10%以上(2025年3月期実績6.7%)、四輪電動製品販売比率30%→20%へ変更
- 電動化・ソフトウェア領域投資は10兆円→7兆円へ削減、既投資3.5兆円のうちHEV/SDV共通技術は継続活用
- 株主還元はDOE3.0%目安、2027-2031年3月期配当総額1.6兆円以上、自己株式取得1兆1,000億円決議済み
ホンダの2031年3月期財務目標は全社ROIC10%以上です。ROICは「親会社所有者帰属当期利益+支払利息(金融事業を除く事業会社)÷ 投下資本」と定義されます。2025年3月期実績はROIC 6.7%・ROE 6.7%で、2024年3月期のROE 9.3%から低下しており、2031年3月期目標まで距離があります。
2022〜2031年3月期の電動化・ソフトウェア領域投資は当初10兆円から7兆円へ削減(3兆円削減)。ただし既投資約3.5兆円のうち、次世代ADAS、次世代HEV、ソフトウェア開発などICE/HEVにも活用できる投資は継続活用されます。2022〜2026年3月期のR&D調整後営業CFは約12兆円見込みで、2027〜2031年3月期はそれを上回るキャッシュ創出を目指します。
株主還元:
- 配当:2026年3月期実績は年間70円(中間35円、期末35円)、2027年3月期予想も年間70円。2026年3月期以降はDOE3.0%目安に引き上げ(前期DOE2.5%)
- 自己株式取得:2024年12月に1兆1,000億円の自己株式取得を決議
- 政策保有株式:2024年3月末46銘柄2,315億円→2025年3月末33銘柄1,553億円へ縮減
- 2027-2031年3月期配当総額:1.6兆円以上
- 2027年3月期設備投資見通し:1兆2,500億円(前年比+4,986億円)、研究開発支出1兆1,700億円
2027-2031年3月期は二輪、四輪ICE/HEV、金融サービスのキャッシュで、配当・電動化/ソフト投資・新事業研究開発を賄う構造です。ネットキャッシュは2026年3月期末で3兆3,245億円と厚い財務体力を維持しています。
成長テーマ
成長テーマの要点
- 二輪インド事業強化(ヴィッタルプール工場+65万台/年、2028年から電動二輪専用工場)
- 次世代HEV13モデルの2027年から4年間のグローバル投入、北米Dセグメント以上向け新ハイブリッドシステム
- SDV基盤(ASIMO OS)と次世代ADAS(Honda SENSING 360/Elite)のEV/HEV/ICE横断活用
すべて中長期オプションとして扱い、確定収益として書きません。
二輪インド事業強化
ヴィッタルプール工場へ年間65万台の生産能力を増設(2027年稼働予定)、インド国内4工場の年間総生産能力約700万台へ。Make in India、部品内製化、車体モジュール化、現地調達加速でコスト競争力を高めます。インド国内の電動二輪市場は2025年3月期に110万台規模で、2028年から電動二輪専用工場の稼働を計画(組み立てライン長を従来比約40%削減)。
次世代HEV13モデル投入(2027年から4年間)
2027年から4年間で次世代ハイブリッドモデルをグローバル13モデル投入する計画です。次世代HEVは現行2023年モデル比でコスト30%以上削減、燃費10%以上向上を目標。HEV用プラットフォーム刷新で現行中型モデル比約90kg軽量化。北米Dセグメント以上向け新ハイブリッドシステムを2020年代後半に投入予定です。
次世代ADAS(Honda SENSING 360/Elite)とSDV基盤(ASIMO OS)
EV/HEV/ICE横断で使えるソフトウェア・ADAS投資を継続します。Honda SENSING 360は事故回避対応シーンを全方位に広げ被害軽減を拡大する安全運転支援システム、Honda SENSING Eliteは条件付自動運転車(限定領域)に適合するトラフィックジャムパイロットを搭載。ASIMO OSはAD/ADAS、統合ダイナミクス制御、デジタルUX、OTA等の基盤です。中止対象EV(Honda 0 Saloon/SUV/Acura RSX)に搭載予定だったSDV共通領域は継続活用されます。
オハイオ州メアリズビル工場 EV/HEV混流生産
需要変動に応じた供給能力・アロケーション最適化を目指します。LGエナジーソリューションとの合弁による米国バッテリー工場、GSユアサとの共同開発バッテリーの将来自前生産がサプライチェーン強化材料となります。
電動二輪のグローバル展開
2024年が電動二輪のグローバル展開元年とされ、CUV e:、ICON e:、ACTIVA e:(インド専用)、QC1を投入。インド・東南アジア中心の展開です。
新興国二輪の先進ブレーキ・安全装備
新興国二輪では二輪検知機能付きHonda SENSING、ABS、CBSを拡大。2025年3月期時点で新興国二輪の先進ブレーキシステム搭載率は約88%です。
リスク
主なリスクの見方
- 最大リスクはEV関連損失の追加拡大と関税影響の拡大(日米合意15%枠組み超)
- 四輪HEV回復が遅れた場合、調整後営業利益のさらなる薄利化リスク
- 各リスクは「下振れ」だけでなく「上振れにもなる裏表」の構造を持つ
| リスク項目 | 対応する上流変数 | 顕在化条件 | 対称性(上振れにもなる裏表) |
|---|---|---|---|
| EV関連損失の追加拡大 | 米国EV需要、規制 | EV需要のさらなる鈍化、開発資産・設備の追加減損 | 損失織り込み完了なら回復余地 |
| 関税・通商政策 | 米国通商政策 | 日米合意15%枠組み超の関税負担 | 現地生産・価格対応で緩和余地 |
| 四輪HEV回復遅れ | 北米HEV需要、新モデル投入 | 新モデル投入遅延、販売奨励金増、北米需要鈍化 | HEV需要が強ければ上振れ |
| 二輪新興国需要鈍化 | インド・ASEAN・ブラジル景気、為替 | 景気減速、金融環境悪化、地域通貨変動 | 市場拡大継続なら全社利益を下支え |
| 半導体・部材供給 | サプライチェーン | 供給不足、調達遅延、認証問題 | 供給正常化で台数回復 |
| 為替変動 | USD/JPY、アジア通貨 | 円高(145円前提を上回る円高) | 円安時はプラスの場合あり |
| 金融サービス信用コスト | 米国FF金利、延滞、中古車価格 | 金利環境変動、延滞増、中古車価格下落 | 優良顧客基盤なら安定収益 |
| 持分法投資損益悪化 | 中国EV事業、新興国通貨 | 中国EV事業の損益悪化、為替差損 | 持分法投資の収益改善で上振れ |
まとめ
ホンダの業績は、二輪事業の高収益+金融サービスの安定利益が下支えとなり、四輪事業はEV関連損失の織り込み→HEV/SDV回帰による収益回復を狙う構造で動きます。2026年3月期はEV関連損失1兆5,778億円(営業利益分▲1兆4,536億円+持分法損益分▲1,241億円)が響き営業損失4,143億円となりましたが、調整後営業利益は1兆393億円で、二輪事業は7,319億円・営業利益率18.2%・世界シェア約40%と過去最高水準を維持しています。HEV小売台数は92.9万台(中国除き87.0万台、+6.2万台)と着実に拡大しました。
中止対象モデルはHonda 0 Saloon/Honda 0 SUV/Acura RSXの米国向け3モデルで、SDV共通領域(ASIMO OS、Honda SENSING 360/Elite)は継続活用されます。2027年3月期は営業利益5,000億円・調整後営業利益1兆円を見込み、EV関連損失5,000億円が残るものの本業回復の方向感が示されています。
中長期では、インド・ブラジル・ASEAN の二輪需要拡大、北米HEV需要回復と次世代HEV13モデル投入(2027年から4年間)、金融サービスの債権9.9兆円のストック利益で、2031年3月期ROIC10%以上を目指す構図です。電動化・ソフトウェア投資は10兆円→7兆円へ削減し、四輪電動製品販売比率目標は30%→20%へ変更しました。
次の四半期決算で確認すべき3指標:
- ①二輪販売台数(特にインド・ブラジル・ASEAN)(2027年3月期2,280万台計画に対するペース)
- ②HEV小売台数と北米モデルミックス(92.9万台、中国除き87.0万台の拡大ペース。北米モデルミックス改善の進捗)
- ③EV関連損失と関税影響の実績(2027年3月期見通し:EV損失▲5,000億円、関税▲1,420億円からのブレ)
よくある質問
Q. ホンダ(7267)の業績ドライバーは何ですか?
A. 主なドライバーは、二輪販売台数と利益率、四輪HEV/ICEのモデルミックス、EV関連損失の織り込み、金融サービス利益、関税・為替の5本です。2026年3月期は二輪事業の営業利益が7,319億円・営業利益率18.2%・世界シェア約40%と過去最高水準を維持し、HEV小売台数は92.9万台(中国除き87.0万台、+6.2万台)と着実に拡大しました。金融サービスも債権9兆8,956億円・営業利益2,755億円の安定収益を計上しました。一方で四輪事業はEV戦略見直しに伴う関連損失1兆4,536億円を計上したため、全社では営業損失4,143億円となりましたが、EV関連損失を除く調整後営業利益は1兆393億円でした。
Q. ホンダ(7267)が2026年3月期に営業赤字になった理由は何ですか?
A. 最大の理由は四輪電動化戦略の見直しに伴うEV関連損失です。営業利益への影響は1兆4,536億円、持分法損益への影響は1,241億円で、合計1兆5,778億円。内訳は開発資産・設備の除却と減損▲6,439億円、戦略変更に伴う追加的な費用▲5,426億円、第3四半期累計のEV関連損失▲2,671億円です。中止対象モデルはHonda 0 Saloon、Honda 0 SUV、Acura RSXの3モデルで、いずれも米国生産予定でした。EV関連損失合計は最大2.5兆円を見込み、2026年3月期と2027年3月期で大部分を計上する設計です。EV関連損失を除く調整後営業利益は1兆393億円で、本業の収益力は維持されています。
Q. ホンダ(7267)はEVをやめるのですか?
A. いいえ。会社はEV計画台数を大幅に減らしHEVに注力すると説明していますが、EV需要が再び拡大する時期を見据えて長期的な仕込みは継続し、SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)共通領域の開発も続けます。Honda SENSING 360/Elite、ASIMO OSなどの基盤技術はEV/HEV/ICE横断で活用する方針です。オハイオ州メアリズビル工場でEV/HEV混流生産ラインを整備し、需要変動に応じた供給能力・アロケーション最適化も進めます。2031年3月期の四輪電動製品販売比率目標は30%から20%へ変更しましたが、ゼロではない位置づけです。
参照資料
- 本田技研工業「2026年3月期 決算説明会資料」会社IR(確認日:2026年5月14日)
- 本田技研工業「Honda Report 2025」会社IR(確認日:2026年5月14日)
- 本田技研工業「四輪電動化戦略の見直しに伴う損失の発生(メディアブリーフィング)」会社IR(確認日:2026年5月14日)
- Honda Global「Honda Announces Losses Associated with Reassessment of Automobile Electrification Strategy」会社公式(確認日:2026年5月14日)
- IEA「Global Energy Review 2026: Technology: Electric vehicles」IEA(確認日:2026年5月14日)
- Federal Reserve「Implementation Note issued December 10, 2025」FRB(確認日:2026年5月14日)
- 首相官邸「日米関税合意」首相官邸(確認日:2026年5月14日)
- SIAM「Auto Industry Performance Q4 Jan-March 2026 / FY 2025-26」SIAM(確認日:2026年5月14日)
本記事は、AIを活用して決算説明会資料、メディアブリーフィング資料、統合報告、各種開示資料、ニュースを整理したうえで作成し、公開前にFIC投資研究所が内容確認と編集を行っています。本記事は特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断は読者ご自身の責任でお願いいたします。記載された数値は各資料の時点情報であり、最新値は各社IRや公的統計で必ずご確認ください。ホンダの決算月は3月で、2026年3月期=2025年4月〜2026年3月、2027年3月期=2026年4月〜2027年3月です。









