日本電波工業株式会社について有価証券報告書や中期経営計画、ニュースリリースから投資価値を独自に分析していきます。
記事の最後には、EPSと株価の相関関係から算出した株価予想も記載していますので、最後まで読んでいただけますと幸いです。
Contents
日本電波工業の企業概要
企業名 | 日本電波工業株式会社 |
上場市場(上場年月) | 東証プライム(1963/6) |
時価総額(業種別時価総額順位) | 355億円(電気機器 111 / 246 社) |
外国法人持株比率 | 12.3% |
予想配当利回り | 1.30 % |
業務内容 | 世界的な水晶デバイスメーカー。水晶デバイスや水晶関連製品を製造、販売する。車載向けを主力に、移動体通信向け等に提供する。23.3期上期は二桁の増収、増益と伸長。車載向けや移動体通信向けが堅調に推移した。 記:2022/12/11 |
転載元:FISCO
日本電波工業の事業について
日本電波工業は水晶振動子、水晶機器等の水晶デバイス、応用機器、人工水晶及び水晶片(ブランク)等の水晶関連製品の一貫製造と販売を行っており、水晶デバイスで世界2位級のシェアを誇っています。
創業以来、周波数の制御と選択、検出をつかさどる水晶デバイス専業メーカーとして、さまざまな周波数を作り出し、エレクトロニクスの発展を内側から支えてきました。
水晶デバイスは、時計や通信機器分野を主な用途としておりましたが、マイコンが様々な用途で使用されるようになってきたことを背景に、デジタル家電、自動車やスマートフォンに至るまで幅広い分野で使用されるようになりました。
今後は、自動車に搭載されるADAS (先進運転支援システム)機器の増大、並びに高速通信規格「5G」基地局のインフラ整備が進むとともに5G対応のスマートフォンが普及することが見込まれるため、水晶デバイスへの需要は自動車、5G対応の基地局やスマートフォン向けを中心にますます拡大することが予想されます。
目標とする経営指標
2022年3月10に公表された新中期経営計画で掲げている数値目標は、計画最終年度となる2025年3月期で以下の通りです。
- 売上高:580億円
- 営業利益率:11%
- ROIC:10%
- 自己資本比率:40%
ROIC(ロイック)は、Return On Invested Capitalの略称で和訳は投下資本利益率。企業が事業活動のために投じた資金を使って、どれだけ利益を生み出したかを示す指標。
一般的な計算式はROIC=(営業利益×(1-実効税率))÷(株主資本+有利子負債)。
企業は、株主から預かった株主資本(自己資本)と銀行などから借り入れた他人資本を投下して事業を行う。株主資本に対する当期純利益の割合を示すROE(自己資本利益率)に対して、投下資本利益率は、他人資本である有利子負債も含む実質的な投下資本からどれだけ効率的に利益を稼いだかを測るための指標である。
引用:野村証券HP
事業セグメント
日本電波工業の事業セグメントは、以下の通りです。
セグメント | 取扱商品またはサービスの内容 |
---|---|
水晶デバイス事業 | 水晶振動子、水晶機器等の水晶デバイス、応用機器、人工水晶及び水晶片等の水晶関連製品の一貫製造とその販売です。 |
日本電波工業の業績
日本電波工業の過去の業績は以下の通りです。
EPSの推移と予想EPS
毎年順調に増収増益となっていますが、2022年4月に新株を発行&自己株式の処分したことによりEPSの増加が抑えられています。
新中期経営計画の最重要施策である「車載及び5G関連事業の盤石化」、「成長戦略実現に向けた積極的な投資戦略」並びに「資本効率性向上及び財務体質健全化に向けた財務戦略」の一環として行うものであり、新中期経営計画における成長戦略に沿って調達資金を主に車載向け及び5G関連向けの端末を中心とした水晶デバイスの需要増加に対応するための生産設備増強等を目的とした設備投資資金に充当する予定
四半期EPS推移
2023年3月期3Qは、売上高は400億円(前年同期比+18.3%増)、営業利益は66億円(前年同期比+42.3%)、親会社株主に帰属する四半期純利益は51億円(前年同期比+76.7%)となりました。
売上高の増減要因(2Q)
売上高は、車載向けを中心に前期比43億円増加しています。内、円安効果による増収額は約23億円。
中国では新型コロナウイルスの封じ込めを狙う「ゼロコロナ」政策が景気回復の足かせとなっており、世界景気の先行き不透明感は高まっております。
中国の「ゼロコロナ」政策により上海では5月末までの2か月間、都市封鎖による物流の混乱の影響を受けましたが、その後、状況は改善しました。
営業利益の増減要因(2Q)
営業利益は同42%増の40億円し、円安効果(増益額7億円)除きでも前期比増収増益となっています。
また営業利益率は15.3%に上昇しており、利益率が改善されています。
営業利益は、増収、円安効果の他、車載向けの収益性改善効果で前期比増益となっています。
2023年3月期 業績予想 下方修正
2022年度下期の円ドルの為替レートは、115円⇒135円に見直したことや好調な販売を背景に2023年3月期2Q発表の段階で通期予想を上方修正していました。
一方で、2023年3月期3Q時点で一転通年業績予想を下方修正しており、その背景としては以下の通りです。
売上高は、自動車市場において半導体不足が長期化したことに伴い、Tier1メーカー(完成車メーカーに部品を供給するメーカー)の一部において在庫調整が進み、下期の車載向け販売が予想を下回る見通しとなりました。
また、移動体通信向けでは、2022年11月に河南省鄭州市ロックダウンの影響を受け、スマートフォンの世界的な受託生産を担うEMSメーカーの主力工場において稼働率が大きく低下したこと、及びスマートフォン需要が想定より低下する見通しとなったことにより、移動体通信向けの販売も予想を下回る見通しとなりました。
さらに第4四半期の対米ドル平均為替レートを135円から125円へ円高方向に見直した結果、通期売上高は2022年9月22日に公表した予想を下回る見通しとなりました。
修正した業績予想を基に四半期業績推移を作成すると以下になります。
中期経営計画
2022年3月10日に中期経営計画が策定され、その中で最重要施策が以下のように挙げられています。
- 車載及び5G関連事業の盤石化
- 車載及び5G関連(移動体通信、産業機器)向けでの売上高の拡大及び高収益体質を維持・強化いたします。
- 車載:高品質で信頼性の高い製品を供給し、高シェアを維持
- 移動体通信:5Gスマホ用小型・高周波品(フォトリソグラフィー技術の活用)を強化
- 産業機器:5G基地局向け小型 OCXO(恒温槽付き水晶発振器)を強化
- 成長戦略実現に向けた積極的な投資戦略
- 車載・移動体通信向けの需給状況に鑑みた増産投資、先端製品開発(フォトリソグラフィー技術、小型・高周波領域等)投資、インフラ更新、システム基盤構築を実施
- 資本効率性向上及び財務体質健全化に向けた財務戦略
- 資本効率を意識した経営を実践すべく新たに ROIC 指標を導入
- 在庫の最適化・適切な投資判断・実行により投下資本を効率化
- A種種類株式の 2022 年6月までの全額償還、借入金の着実な圧縮により財務体質を健全化
また掲げている数値目標は、計画最終年度となる2025年3月期で以下の通りです。
- 売上高:580億円
- 営業利益率:11%
- ROIC:10%
- 自己資本比率:40%
- D/Eレシオ:0.8倍
- 1株当たり配当金:10円/半期
テクニカル分析
業績が芳しくなく潰れるんじゃないかという噂もあったここ10年ほどは株価が低迷していますが、水晶デバイスの需要が増加し、また円安で業績が回復傾向にある現在においては株価上昇の兆しが見られます。
株価予想
EPSと株価の相関関係を使用して将来の価格を予想してみます。
株価からBPSを控除した金額の時間推移を利用した予測モデルをModel1、株価とEPSの相関を使用した予測モデルをModel2としています。
相関係数はModel1で88.8%、Model2で79.4%となっておりますので、株価とEPSには強い相関関係があるといえます。
相関係数の絶対値 | 一般的な解釈 |
---|---|
0~20% | ほとんど相関関係がない |
20~40% | やや相関関係がある |
40~70% | かなり相関関係がある |
70~100% | 強い相関関係がある |
Model1
Model1で算出した価格は2023年3月期で1,617円、2024年3月期で1,904円となっています。
Model2
予想EPSは2023年3月期が263.7円、2024年3月期が276.7円となっており、Model2で算出した価格はそれぞれ1,200円、1,215円となっています。