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【企業別分析】アンリツ(6754)

アンリツ株式会社について有価証券報告書や中期経営計画、ニュースリリースから投資価値を独自に分析していきます。

(2022/1/27更新)
2022/1/27公表の2022年3月期 第3四半期決算を取り込み、更新しております。

アンリツの企業概要

企業名 アンリツ株式会社 設立年月日 1950/10
時価総額 242,724 百万円 業種別 時価総額順位 電気機器 50 / 247 社
上場年月 1961/10 上場市場 東証1部
従業員数 連 3954 名 単 1284 名 外国法人持株比率 30.1%
決算月 3月 監査法人 有限責任 あずさ監査法人
業務内容 通信用計測器世界3位。スマホの端末開発向けや基地局通信インフラなど計測ソリューションを手掛け、動作検証に定評。NESICなどと5G/ローカル5Gの普及拡大に向け提携。半導体不足影響し、中間期は利益足踏み。 記:2021/10/28

  転載元:FISCO

競合他社について

4Gまではアンリツとローデ・シュワルツ(独・非上場)の2社で市場を取り合ってましたが、5Gでローデ社は参入が遅れ、キーサイト・テクノロジー(米・NYSE上場)が5Gになって新規参入してきました。

1社で5Gの市場をすべてカバーできるほど5G市場は小さくありませんので、アンリツとキーサイトの2社で5Gの市場を取ることになります。

JPX日経インデックス400構成銘柄への選定

アンリツは「JPX 日経インデックス400」の構成銘柄に選定されています。

「JPX 日経インデックス400」は、資本の効率的活用や投資者を意識した経営観点など、グローバルな投資基準に求められる諸条件を満たした「投資家にとって投資魅力の高い企業」で構成され、日本企業の魅力を内外にアピールするとともに、その持続的な企業の評価や株式の流動性だけでなく、企業の財務状況など、株式市場の活性化を図る事を目的として創生された株式指数です。

現在の投資の流行はインデックス投資ですから、インデックスの構成銘柄になることで大きな買い圧が生まれることが期待できます。

電気機器で JPX 日経インデックス400に採用されている会社は以下の通りです。

アンリツの事業について

アンリツは"「はかる」を超える。限界を超える。共に持続可能な未来へ。"を新しい経営ビジョンとし、以前の計測事業のみならず様々な領域に挑戦し、攻めの姿勢で今までのアンリツの限界を超えるべく取り組んでいます。

事業セグメント

アンリツの事業セグメントは以下の通りです。 (有価証券報告書2021年3月期の【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】P17より)

セグメント 取扱商品またはサービスの内容
計測事業

サービス・プロバイダ、ネットワーク機器メーカー、保守工事業者などへ納入する、多機種にわたる通信用及び汎用計測器、測定システム、サービス・アシュアランスの開発、製造、販売を行う。

携帯電話や多機能情報端末、あるいはパソコンなどから世界中の情報にアクセスし、様々なコンテンツを利用するのが日常的になっている今日、情報通信ネットワークでは膨大な量の通信信号がやり取りをされています。アンリツの計測ソリューションは、有線・無線通信網を飛び交う、こうした目に見えない通信信号を「見える化」し、定められたルールに従って正しく通信が行われているかを確認するものです。

引用元:アンリツHP

つまりアンリツの測定器を使うことで電波(強さであったり速さ)、周波数、光など目に見えないものを可視化することができます。それにより品質を測定することができるようになります。

2021年3月期ベースで売上収益の71%を占める計測事業は、「モバイル市場」「ネットワーク・インフラ市場」「エレクトロニクス市場」向けの3つのサブセグメントに区分されます。

a.モバイル市場

携帯電話サービスを行うサービス・プロバイダの端末受入検査用途向け計測器や、スマートフォン等の携帯電話端末やICチップセット、その他関連電子部品メーカーでの設計、生産、機能・性能検証、保守用途向けの計測器等が含まれる。

当市場の需要は、携帯電話サービスの技術革新や普及率、加入者数の推移のほか、端末/チップセット・メーカーの新規参入又は撤退、端末やチップセットのモデルチェンジや出荷数などに影響される傾向がある。

b.ネットワーク・インフラ市場

有線・無線通信事業者のネットワーク建設、保守、監視及びサービス品質保証用途向けのソリューションや、ネットワーク機器メーカーの設計、生産、試験及び調整用途向けソリューション等が含まれる。

当市場においては、クラウドサービスの高度化や5Gサービスの進展によりデータ・トラフィックが急増しているため、ネットワークの更なる高速化を進めるサービス・プロバイダでは100Gbpsサービスの導入が進むとともに、ネットワーク機器メーカーでは、400Gbpsネットワーク装置の開発も進展しています。また、モバイル端末からの接続性を向上させるため、有線・無線通信技術を統合活用することにより基地局ネットワークを効率的に高密度化することが進められています。
これらの市場動向の変化に伴い、有線・無線技術を最適化した計測ソリューションの需要が本格化しています。さらに、クラウドサービスを支えるデータセンターの高速化を背景に、高速データ通信装置の市場が拡大するとともに、高速光通信モジュールの研究開発や製造市場が増加基調にあり関連する計測機器の需要が高まっている。

c.エレクトロニクス市場

通信ネットワークに関連する通信機器やその他の電子機器に使用される電子デバイスの設計、生産、評価をはじめ、エレクトロニクス分野で幅広く利用されている計測器等が含まれる。

2022年2Qでは5Gの開発投資需要を獲得するためのソリューションの開発と組織体制の整備に注力し、5G商用化に向けた開発関連需要を獲得。また、ネットワーク高速化に向けた開発・生産関連需要も獲得。引き続きコロナウイルスによる投資控えあり。

PQA事業

高精度かつ高速の各種自動重量選別機、自動電子計量機、異物検出機などの食品・医薬品・化粧品産業向けの生産管理・品質保証システム等の開発、製造、販売を行う。

加工食品生産ラインの自動化投資が進んでおり、X線を用いた異物混入検査や包装品質検査など品質保証工程の自動化に係る需要は今後も拡大が見込まれる。引き続きコロナウイルスによる投資控えあり。

その他の事業

情報通信事業、デバイス事業、物流、厚生サービス、不動産賃貸等からなる。

2022年1月4日付で連結子会社化した株式会社高砂製作所の第4四半期の業績を取り込むことに伴い、売上収益及び営業利益がそれぞれ増加する見込み。

アンリツの業績

アンリツの過去の業績は以下の通りです。

SBI証券より

2022年1月27日、3Qの短信が発表されると同時に、残念ながら通期業績予想の下方修正もお知らせされました。

修正の理由は、世界的な半導体不足が①取引先顧客におけるスマホ製造に影響を与えている、そして②アンリツ自体の製品の生産においても影響を与えている、ということです。

半導体不足については2022年下期には解消されると見込まれていますが、アンリツや取引先顧客が使用するスマホに使われる最先端のロジック半導体については、いつ不足が解消されるのか不透明です。

おそらくロジック半導体メーカーが生産設備の増強が完了する、早くて2023年中になると思われます。それまでは業績の著しい回復は見込めないと予想しています。なので、今から投資する方は注意が必要になります。

半導体不足の影響はPQA事業にも影響を与えているとのことです。

米国でのCバンドの商用化スケジュールに遅れが生じていることも引き合いが弱い要因となっているようですが、地域別にみると米州の売上は減少しておりません。一方日本・アジア圏での売上収益の下方修正が大きい点が気になります。

事業別の営業概況を見ると、日本・アジア圏については「5G商用化に向けた投資は堅調だが、スマホ製造の一部の短納期顧客で半導体不足の影響あり」とのことで、半導体不足が影響しているとのことです。

SBI証券より

2018年3月期以降順調に利益を伸ばし続けていましたが、2021年3月期に売上、利益ともに横ばい、2022年3月期は減収減益となっています。これはコロナ禍において各社が投資に対して消極的になってきていることが原因です。

SBI証券より

セグメント別の業績

アンリツのセグメント別の業績は以下の通りです。

バフェットコードより

2021年3月期においては売上の77%、利益の93%(その他の事業を除く)は計測事業から生まれています。

計測事業の利益率は高く、計測事業を拡大していくことが企業価値を向上させることになります。

2022年3月期3Q

こちらは2022年3月期の3Q決算説明資料ですが、売上高、営業利益が前年同期比で減少しています。

売上高は通信計測事業で△9億円、PQA事業で+8億円、その他の事業で△6億円とのことで通信計測事業、特にモバイル事業で売上が伸びていません。(受注額に関しては前年同期比+4%ある)

アンリツは情報通信市場向けの売上比率が高いため、サービス・プロバイダ、ネットワーク機器メーカー、スマートフォン・携帯電話メーカー、半導体・デバイスメーカーの設備投資動向に業績が左右されますが、今般の半導体不足が①取引先顧客におけるスマホ製造に影響を与えている(投資も先送りしている)、そしてアンリツ自体の製品の生産においても影響を与えていることが影響を与えており、この半導体不足による影響は2023年まで続くと想定しています。

またモバイル計測分野の業績は、携帯電話サービスの技術革新や普及率、加入者数及びスマートフォン等の買い替え率の変化に影響されますので、スマホの買い替え需要がひと段落した点も売上高に影響を与えているでしょう。

そして利益率の高い通信計測事業の売上減少により利益に大きなインパクトを与えていることが分かります。

ただし半導体不足であることを除けばおおむね順調であり、情報通信分野においては、5Gの更なる技術革新やモバイル分野に限らない利活用分野への進展により、今後も5G関連の需要は拡大していくことが見込まれます。また、データセンター等でのネットワーク・インフラの拡充に向けた需要も拡大が見込まれます。

これからの重点分野

アンリツは2021年4月に2023年度までの中期経営計画である「中期経営計画GLP2023」を発表しています。

その中でアンリツが今後3年で重視すべき重点領域を挙げているので見ていきます。

アンリツは「ローカル5G」「EV、電池」「医療・医薬品」「光センシング」の4つを重点領域としています。

これらの領域で外部との連携、またM&A等により成長を加速させていくとのことです。

ローカル5G

5GというのはNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルのキャリアが提供する「キャリア5G」のほかに、企業や自治体が敷地内で運用する「ローカル5G」があります。

5Gには周波数の高い「ミリ波」と周波数の低い「Sub6(サブシックス)」があり、5Gの特長①超高速大容量、②超高信頼低遅延、③多数同時接続のすべてを満たすには「ミリ波」を使う必要があります。

ただこのミリ波を使うには近くに基地局が必要になるものの、キャリア5Gの「ミリ波」基地局を待っていてはいつまでたってもフルスペック5Gを使えないため、「ローカル5G」として敷地内に基地局を建設してミリ波を使えるようにするニーズ、そしてセキュリティ等の観点からローカル5Gのニーズがあります。

アンリツではスマートフォン計測市場の需要は、Sub6GHz関連は2023年頃にピークとなり、ミリ波に関してはその1年後ぐらいに需要のピークが来るとみているとのことです。

左記のようにIoTデバイス数は「通信」分野ではすでに飽和状態にあり、今後は「産業用途」や「自動車・宇宙航空」分野でのIoTデバイス数の増加が見込まれています。

それに伴い5Gは以前のようなモバイル分野だけでなく自動車分野での活用や産業機械分野など幅広い分野での利用されることが見込まれています

アンリツではそれに伴いモバイル以外の領域でビジネスをしていく計画です。

5G/ローカル5Gにおける業務提携

2021年10月27日、移動通信における工事実績や、ローカル5Gで各種の実証実験等を行いノウハウのあるNECネッツエスアイと、通信計測機器メーカーとしてネットワークや無線通信端末の通信品質検証に知見のあるアンリツと電波伝搬シミュレーションおよび実測を融合したサービスを提供するAK RadioDesignの3社が業務提携することが発表されました。(日経記事

電波検証をパッケージサービスとして提供し、ローカル5G導入にあたってのお客さまの負担を軽減することを目的としたものです。

New!! 株式会社構造計画研究所との共同出資会社であるAKRadio Design株式会社が総務省の国プロにおけるローカル5G案件の受注を獲得。(2022年3月期3Q発表

EV、電池

2021年7月30日に株式会社高砂製作所を子会社化するとのリリースがありました。

買収の理由としては以下の通りです。

カーボンニュートラル社会の実現に向け、自動車などの内燃機関電動化や再生可能エネルギーの利用、社会インフラの省電力化などの取り組みが世界中で加速中。

これらの分野では、性能の向上および耐久性や安全性を担保する、品質保証をテーマとした研究開発や生産活動が活発化しており、電気エネルギーをきめ細かく制御する試験システムが求められてる

また、特に自動車業界では、研究開発の効率化のため、供試体の動作環境を擬似的に再現できる試験設備の重要性が高まっている


そこで業界屈指の高電圧・大電流・大容量の電気エネルギー制御技術や業界を牽引するお客さまとの取引関係を持つ株式会社高砂製作所を、この分野を開拓するための中核と位置づけアンリツグループに迎え入れ、さらにアンリツが計測事業で培ってきた試験システム構築技術やグローバルな事業基盤を活用することで、高度化とグローバル化が進む EV および電池測定の分野で測定市場の開拓を加速する。

これから自動車はEVがメインとなり、エネルギー分野においても蓄電池の品質向上に伴う電池市場の拡大を見据えた買収で期待できます。

New!! 株式会社高砂製作所のM&Aを1月4日に完了(2022年3月期3Q発表

なお、2022年1月4日付で連結子会社化した株式会社高砂製作所の第4四半期の業績を取り込むことに伴い、売上収益及び営業利益がそれぞれ増加する見込みです。

米国Cバンド需要

米国と欧州では、Cバンドと呼ばれる3.7G~4.2GHzの周波数帯の下部を5Gアプリケーション用に開放する予定です。この周波数スペクトラムを利用することで5Gは従来のモバイル周波数バンド下部よりも多くの帯域幅を活用することができます。

Cバンド関連では、アンリツは以下の需要が見込まれます。

1
基地局建設保守需要

バンド内の電波干渉問題と、航空機の高度計向け電波との干渉問題の解決のため、1か月以上の遅延が発生したが、空港周辺を除いて5Gサービスを開始

2
端末開発需要

米国、韓国、日本のスマホベンダーからの需要は堅調

3
キャリアの受入試験需要

キャリア、テストハウス、スマホベンダーからの需要は堅調

一方でCバンドは現在、衛星地上局(SES)への衛星のダウンリンク用に使用されているため干渉してしまう恐れがあります。

2021年11月、AT&TとVerizonの米国2大モバイルネットワーク事業者は、米国連邦航空局(FAA:Federal Aviation Authority)が主張する「5Gの電波干渉が電波高度計など航空機の精密機器に影響を与え、視界が悪い状況下の運航に支障をきたす可能性がある」との警告を受けて、新たなCバンド5Gサービスの開始を2022年1月に延期することに合意しています。(引用元:EE Times

また2022年1月になって、航空業界はAT&TとVerizonが新しいCバンド5Gネットワークを起動する米国時間1月19日に「破局的な」危機をもたらす可能性があると主張し、米国で最も繁忙で重要な空港の2マイル(約3.2キロメートル)以内で5Gサービスを提供しないよう求めました。(引用元:techcrunch

これにより、AT&TとVerizonは1月18日に翌19日に開始を予定していた第5世代移動通信システム(5G)の新サービスについて、航空業界への影響を考慮して一時的に延期することを発表しています。(引用元:JETRO

2030年に向けた事業の方向性

最後に2030年に向けた事業の方向性について載せておきます。

テクニカル分析

SBI証券

5G関連銘柄として2017年ごろから思惑で買われてきたアンリツですが、2021年3月にデッドクロスして以降、下落トレンドとなっています。

SBI証券

ミネルヴィニ投資におけるステージ

ミネルヴィニの成長株投資については、以下の記事をご参照ください。
ミネルヴィニ成長株投資法

ここ1年は完全に下落相場(ステージ4)なので、相場の転換を待ってから買いを入れた方がよさそうです。まずはステージ1になるのを待つことです。

恐らく6Gが商用化される5年ほど前の2024~25年あたりからステージ2に向かうのではないかと思います。

参考図書