クミアイ化学工業株式会社について有価証券報告書や中期経営計画、ニュースリリースから投資価値を独自に分析していきます。
記事の最後には、EPSと株価の相関関係から算出した株価予想も記載していますので、最後まで読んでいただけますと幸いです。
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企業概要
企業名 | クミアイ化学工業株式会社 |
上場市場(上場年月) | 東証プライム(1962/11) |
時価総額(業種別時価総額順位) | 1,137億円(化学 57 / 217 社) |
外国法人持株比率 | 12.2% |
予想配当利回り | 2.80 % |
監査法人 | 芙蓉監査法人 |
業務内容 | 殺虫剤や殺菌剤、除草剤等の農薬が主力。国産農薬第1号「アソジン」等を開発。イハラケミカル工業と経営統合。化成品事業は堅調。クロロキシレン系化学品、ビスマレイミド類等が販売順調。22.10期3Qは収益好調。 記:2022/10/12 |
転載元:FISCO
競合他社
クミアイ化学工業の競合他社は、主に農薬事業を行っている会社です。
例えば、日本農薬株式会社(4997)や北興化学工業株式会社(4992)などがあります。これらの会社は、クミアイ化学工業と同様に、国内外で農薬の研究開発と販売を行っています。
クミアイ化学工業と日本農薬の違いは、主に売上高や事業領域、研究開発力などにあります。
例えば、売上高の規模でいえば日本農薬のほうが大きいです。
事業領域では、クミアイ化学工業は農薬及び農業関連事業に特化していますが、日本農薬は他にも医薬品や機能性素材などの事業を展開しています。
研究開発力では、クミアイ化学工業は研究開発費用対売上高比率が最も高く、新規有効成分の創出や生物資源活用技術の開発に力を入れています。
事業内容
クミアイ化学工業株式会社は、農薬専業の化学薬品メーカーで、創立当初より安全で環境負荷の少ない農薬の開発に傾注し、国産第1号農薬の開発・製品化以来、国内のみならず、世界各地で自社開発品を中心とした製品の普及を進め、「いのちと自然」を守り育てることをテーマに、世界規模での農作物の生産性向上に貢献できるよう取り組んできた農薬会社です。
主な事業内容は、農薬の研究開発・製造・販売、および化成品の製造・販売です。
同社が提供する製品やサービスは、主に以下のようなものがあります。
- 農薬製品:殺虫剤、殺菌剤、除草剤、植物成長調整剤など
- 化成品:医薬中間体や電子材料など
強み・弱み
クミアイ化学工業の強みについては、以下が挙げられます。
- 国内外で多様な農薬の研究開発と販売を行っており、高い技術力と市場シェアを持っています。
- 農薬以外にも化成品や医薬中間体などの事業を展開しており、収益の安定化と多角化を図っています 。
クミアイ化学工業の弱みについては、以下が挙げられます。
- 農薬事業が売上の大部分を占めており、気象や作物価格などの変動に影響されやすいです 。
- 新規製品の開発には長期間と高額な投資が必要であり、競争力の維持や向上に課題があります 。
将来性については、以下が期待されます。
- 食料安全保障や環境問題への対応として、農薬需要は今後も高まると予測されます。
- 医薬中間体や電子材料などの化成品事業は成長分野であり、新たな収益源となる可能性があります。
- 海外市場ではインドや中国などの新興国で拡大する農業需要に応えるため、現地法人や提携先を増やすことでシェアを伸ばす可能性があります。
目標とする経営指標
今後も持続的な成長を続け、収益力の一層の強化を目指し、企業価値の向上につなげていくため、クミアイ化学工業グループは、「売上高」、「営業利益」ならびに株主資本及び総資本の運用効率を示す指標である「自己資本利益率(ROE)」等を重要な指標として認識しています。
事業セグメント
クミアイ化学工業の事業セグメントは、以下の通りです。
セグメント | 取扱商品またはサービスの内容 |
---|---|
農薬及び農業関連事業 | 農薬(殺虫剤・殺菌剤・除草剤他)等の製造・販売・輸出入、緑化資材の販売、ゴルフ場の総合メンテナンス 殺虫剤、殺菌剤、除草剤等の農薬を製造し、農協の全国組織であります全国農業協同組合連合会を通じて国内に販売しております。 |
化成品事業 | クロロトルエン・クロロキシレン系化学品、精密化学品、産業用薬品、発泡スチロールの製造・販売・輸出入 クロロトルエン・クロロキシレン系化学品、精密化学品、産業薬品等を製造し販売しております。 |
売上、利益ともに「農薬及び農業関連事業」から太宗が計上されています。
業績
クミアイ化学工業の過去の業績は以下の通りです。
EPSの推移と予想EPS
四半期EPS推移
2023年10月期1Qは、売上高は427億円(前年同期比+30.4%増)、営業利益は58億円(前年同期比+69.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は34億円(前年同期比+30.6%増)となりました。
営業利益の増減要因
化成品事業の販売が減少したものの、農薬及び農業関連事業の国内外向けの販売が好調に推移した結果、増収増益となっています。
原材料費の高騰がありましたが、アクシーブの販売が好調であったことから増益となっています。
農薬及び農業関連事業
国内向けは、水稲用殺菌剤「ディザルタ剤」や「エフィーダ」を含有する水稲用除草剤の販売が、価格改定に伴う前傾受注の影響もあり好調に推移しました。
海外向けは、畑作用除草剤「アクシーブ剤」が良好な市場環境による需要の増加から、主要販売国である米国、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル向けの出荷が伸長しました。
事業環境動向
ロシア・ウクライナ紛争の長期化については、直接的な取引は少ないため当社事業への影響は限定的であるものの原材料費や製造コストが増加しています。
対ドル円安進行により調達価格等の増加要因となったが、コスト増以上に売上を押し上げ、2022年度は外貨建資産の評価等による大幅な為替差益を計上しています。
世界人口の増加やコロナ禍等、複合的な要因を背景に2020年頃から上昇傾向にあり、それに伴い、農薬市場も拡大しており、継続的に成長する見込み。
化成品事業
中国、米国の景気減速により、ビスマレイミド類や一部のクロロキシレン系化学品の出荷が減少しました。
2023年10月期 業績予想
FY2023は営業利益で145億円を予想しています。
まずはFY2022と同様にアクシーブの販売数量増加により増益を見込んでいます。
一方でマイナスの影響としては原油・ナフサ価格の高止まりや円安により、原材料費や製造コストが増加。
そして、新研究所への移転費用 約5億円を計上するなど販管費の増加を見込んでいます。
経常利益については、FY2022は多額の外貨建債権債務の為替差益(84億円)を計上しましたが、FY2023はそれほどの為替差益を見込んでいないので減益となる見込みです。
テクニカル分析
上場以降、堅調な業績を伴って長期で上昇トレンドを形成しています。
株価予想
EPSと株価の相関関係を使用して将来の価格を予想してみます。
株価からBPSを控除した金額の時間推移を利用した予測モデルをModel1、株価とEPSの相関を使用した予測モデルをModel2としています。
相関係数はModel1で18.6%、Model2で60.3%となっておりますので、株価とEPSにはかなり相関関係があるといえます。
相関係数の絶対値 | 一般的な解釈 |
---|---|
0~20% | ほとんど相関関係がない |
20~40% | やや相関関係がある |
40~70% | かなり相関関係がある |
70~100% | 強い相関関係がある |
Model1
Model1で算出した価格は2023年10月期で1,085円、2024年10月期で1,148円となっています。
Model2
予想EPSは2023年10月期が100.6円、2024年10月期が104.4円となっており、Model2で算出した価格はそれぞれ948円、959円となっています。