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【企業別分析】トリケミカル研究所(4369)

株式会社トリケミカル研究所について有価証券報告書や中期経営計画、ニュースリリースから投資価値を独自に分析していきます。

記事の最後には、EPSと株価の相関関係から算出した株価予想も記載していますので、最後まで読んでいただけますと幸いです。

企業概要

企業名株式会社トリケミカル研究所
上場市場(上場年月)東証プライム(2007/8)
時価総額(業種別時価総額順位)925億円(化学 64 / 217 社)
外国法人持株比率12.9%
予想配当利回り1.06 %
監査法人EY新日本有限責任監査法人
業務内容半導体製造用の高純度薬剤や配線材料が主力。太陽電池製造用なども。地域別売上高は台湾向け比率が高い。南アルプス市で新工場の建設進める。24.1期1Qは増収。収益面は売上原価や販管費の増加などが重し。 記:2023/06/14

  転載元:FISCO

JPX日経中小型株指数構成銘柄への選定

トリケミカル研究所は「JPX日経中小型株指数」の構成銘柄に選定されています。

JPX日経インデックス400」は、資本の効率的活用や投資者を意識した経営観点など、グローバルな投資基準に求められる諸条件を満たした「投資家にとって投資魅力の高い企業」で構成され、日本企業の魅力を内外にアピールするとともに、その持続的な企業の評価や株式の流動性だけでなく、企業の財務状況など、株式市場の活性化を図る事を目的として創生された株式指数です。

JPX日経中小型株指数」ではJPX日経インデックス400で導入した「投資者にとって投資魅力の高い会社」を構成銘柄とするとのコンセプトを中小型株に適用することで、資本の効率的活用や投資者を意識した経営を行っている企業を選定するとともに、こうした意識をより広範な企業に普及・促進を図ることを目指すものです。

現在の投資の流行はインデックス投資ですから、インデックスの構成銘柄になることで大きな買い圧が生まれることが期待できます。

競合他社

トリケミカル研究所の競合他社は、半導体や光ファイバーの製造に用いる化学薬品を提供する企業です。

例えば、日本では 日本化学工業(4092) や 東京応化工業(4186) などがあります。

しかし、トリケミカル研究所は、大手がボリュームゾーンしかやらない中で、少量多品種の新規素材を手がけることで名前を売っており、先端半導体製造工程で使われる高機能化学品の分野において、競合がいないと言えます。

また、海外市場では エア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ (米国)や ラインデ(ドイツ) などの大手ガスメーカーと競合していますが、持分法適用関連会社として現地法人を設立し、顧客ニーズに応えることで差別化を図っています。

事業内容

トリケミカル研究所は、山梨県上野原市に本社を置く企業で、半導体の製造工程で使われる化学薬品を主に提供しています。

特に、臭化水素や塩素などの高純度ガスや液体を得意としており、先端半導体製造工程で使われる高機能化学品の分野において、競合がいないのが強みです。

また、持分法適用関連会社として、中国や台湾などの海外市場にも進出しています。

トリケミカル研究所は、主として半導体メーカー向けの高純度化学薬品の開発・製造・販売を行っています。

どのような工程で使われる薬品?

トリケミカル研究所が提供する半導体メーカー向けの高純度化学薬品は、半導体デバイス製造においては、シリコンのウェハ上に複雑な電子回路を構成するため、多様な工程を経て作られています。

この工程はウェハプロセスと呼ばれていますが、その中の様々な場面で、化学反応を利用した加工がなされており、トリケミカル研究所グループの製品は主にウェハの表面上に薄膜を化学反応を用いて堆積させる「CVD」、薄膜の不必要な部分を腐食させて削り取る「エッチング」、ウェハ上にトランジスタやダイオード等を作るためにウェハの内部に不純物を注入させる「拡散」といった多岐にわたる工程において用いられています。

設立当初は光ファイバー製造に供される高純度材料の供給を行うことで成長を遂げてきましたが、現在では同様な材料を使用し、ニーズの変化が常に起こる半導体製造用材料や、デバイスの原理的に半導体と共通点の多い太陽電池製造用材料の供給が主力となっています。

強み・弱み

トリケミカル研究所の強みは以下が挙げられます。

  • ニッチ市場に強い。少量多品種の新規素材を手がけることで、大手が参入しづらい分野で高いシェアを持っている。
  • 先端半導体製造工程で使われる高機能化学品の分野において、競合がいない。韓国や台湾にある先端半導体工場向けの輸出を伸ばしている。
  • 海外市場での展開力が高い。持分法適用関連会社として現地法人を設立し、顧客ニーズに応えることで差別化を図っている。

トリケミカル研究所の弱みは以下が挙げられます。

  • 太陽電池向けの売上が減少傾向にある。太陽電池市場は中国メーカーの台頭や価格競争などで厳しい状況にある。
  • 為替変動リスクが高い。海外売上比率が約6割と高く、円高によって収益が圧迫されやすい。
  • 新型コロナウイルス感染症の影響で需要が落ち込んだ。特に自動車や航空機などの産業用ガスや液体は大きく減少した。

将来性については以下の通りです。

  • 中期的な将来性は生産能力の向上と需要増加により安泰である。半導体や光ファイバーなどのIT技術はこれからも進歩し、その中心にはトリケミカル研究所の提供する素材が必要不可欠である。
  • 長期的な将来性は需要の不透明感から不安定である。半導体製造技術は常に変化しており、トリケミカル研究所もそれに対応するために新規素材開発を続けなければならない。また、競合他社も新たな市場参入を狙っており、シェア争奪戦が激化する可能性もある。
  • 新たな事業領域への挑戦が必要である。太陽電池向け事業では苦戦しており、他の成長分野への参入を模索している。例えば、水素エネルギーやバイオマスエネルギーなどの再生可能エネルギー関連事業への取り組みを強化しており、今後その成果が期待される。

目標とする経営指標

トリケミカル研究所グループは、安定した売上成長を図り、規模の拡大を目指しながらも、経営の効率化を推し進めることで確実に利益をあげられる強靭な企業体質の構築に努めていくこととしています。

そのため売上高及び売上高営業利益率を重視すべき経営指標としています。

2024年1月期を初年度とする中期経営計画においては、以下の財務目標(2026年1月期)が掲げられています。

  • 売上高:195億円
  • 営業利益:48億円(営業利益率:25%)
バフェットコード

事業セグメント

トリケミカル研究所の事業セグメントは以下の通りです。

セグメント取扱商品またはサービスの内容
半導体等製造用高純度化学化合物事業半導体メーカー向けの高純度化学薬品の開発・製造・販売を行う。
開発・製造・販売している主な半導体・太陽電池向け製品は、主に以下の3種類です。
<製品種類>
① CVD材料
② ドライエッチング材料
③ 拡散材料

業績

トリケミカル研究所の過去の業績は以下の通りです。

SBI証券

EPSの推移と予想EPS

四季報データより作成

四半期EPS推移

四季報データより作成

2023年1月期3Qは、売上高が32億円(前年同期比+3.5%増)、営業利益は8.7億円(前年同期比△11.4%減)、親会社に帰属する四半期純利益は9.9億円(前年同期比△23.3%減)となりました。

主要な販売先の半導体業界においては、巣ごもり特需の消滅等により半導体需要が減少し、半導体メーカーの在庫調整や設備投資計画の見直しの影響から半導体の減産の動きが見られ、足元ではメモリー市場を中心に急速に稼働が下がってきている状況であり、その回復には想定より時間がかかるとの見解も出てきています。また、それに伴い、半導体製造用の化学化合物に関しても需要が減少しはじめています。

地域別売上高

トリケミカル研究所の取引先の多くは海外ですが、主に台湾、韓国向けが大きいことがわかります。

その意味では一方で米中対立が悪化し、日本企業の中国向け輸出規制強化などなったとしても影響を受けにくいと考えています。

製品用途別売上高

製品用途別売上高を見ると、半導体向けが順調に売り上げを伸ばしています。

Si-半導体とは、シリコンを主成分とする半導体のことで、トリケミカル研究所では、エッチング用材料、配線用材料、イオン注入用材料、クリーニング用材料、配線関係用材料、絶縁膜関係などのSi-半導体に関連する製品を取り扱っています。

2026年に向けた事業の方向性

最後に2023年3月15日にリリースされた中期経営計画画(2023 年2月~2026 年1月)について記載しておきます。

半導体製造用化学化合物の生産開発能力の向上を推し進め、国内外の最先端半導体の需要増に即応できる体制を整備すること、そして向こう数年で需要が発生する、あるいは成長の見込まれる材料の開発・生産体制を構築することで将来の成長に備えていくとしております。

目標とする業績目標(2026年1月期)は以下の通りです。

  • 売上高:195億円
  • 営業利益:48億円

テクニカル分析

TradingView

業績とともに株価も右肩上がりとなり半導体バブルの2021年にピークを付けてから下落しています。

TradingView

下落トレンドが続いておりましたが、中期経営計画の公表以降株価を伸ばし続け、下落トレンドを抜けています。

株価予想

EPSと株価の相関関係を使用して将来の価格を予想してみます。

株価からBPSを控除した金額の時間推移を利用した予測モデルをModel1、株価とEPSの相関を使用した予測モデルをModel2としています。

相関係数はModel1で86.2%、Model2で90.6%となっておりますので、株価とEPSには強い相関関係があるといえます。

相関係数の絶対値一般的な解釈
0~20%ほとんど相関関係がない
20~40%やや相関関係がある
40~70%かなり相関関係がある
70~100%強い相関関係がある

Model1

Model1で算出した価格は2024年1期で3,673円、2025年1月期で4,118円となっています。

Model2

予想EPSは2024年1月期が130.8円、2025年1月期が138.5円となっており、Model2で算出した価格はそれぞれ2,848円2,975円となっています。

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