
株式会社トリケミカル研究所について有価証券報告書や中期経営計画、ニュースリリースから投資価値を独自に分析していきます。
記事の最後には、EPSと株価の相関関係から算出した株価予想も記載していますので、最後まで読んでいただけますと幸いです。
Contents
企業概要
企業名 | 株式会社トリケミカル研究所 |
上場市場(上場年月) | 東証プライム(2007/8) |
時価総額(業種別時価総額順位) | 818億円(化学 66 / 217 社) |
外国法人持株比率 | 17.5% |
予想配当利回り | 0.89 % |
監査法人 | EY新日本有限責任監査法人 |
業務内容 | 半導体製造用の高純度薬剤や配線材料が主力。太陽電池製造用なども。地域別売上は台湾向け比率が高い。東アジア向け販売の拡大図る。新規材料の需要増にも対応。持分法による投資利益は増加。23.1期2Qは業績堅調。 記:2022/10/12 |
転載元:FISCO
JPX日経中小型株指数構成銘柄への選定
トリケミカル研究所は「JPX日経中小型株指数」の構成銘柄に選定されています。

「JPX日経インデックス400」は、資本の効率的活用や投資者を意識した経営観点など、グローバルな投資基準に求められる諸条件を満たした「投資家にとって投資魅力の高い企業」で構成され、日本企業の魅力を内外にアピールするとともに、その持続的な企業の評価や株式の流動性だけでなく、企業の財務状況など、株式市場の活性化を図る事を目的として創生された株式指数です。
「JPX日経中小型株指数」ではJPX日経インデックス400で導入した「投資者にとって投資魅力の高い会社」を構成銘柄とするとのコンセプトを中小型株に適用することで、資本の効率的活用や投資者を意識した経営を行っている企業を選定するとともに、こうした意識をより広範な企業に普及・促進を図ることを目指すものです。
現在の投資の流行はインデックス投資ですから、インデックスの構成銘柄になることで大きな買い圧が生まれることが期待できます。
競合他社
トリケミカル研究所の競合他社は、半導体や光ファイバーの製造に用いる化学薬品を提供する企業です。
例えば、日本では 日本化学工業(4092) や 東京応化工業(4186) などがあります。
しかし、トリケミカル研究所は、大手がボリュームゾーンしかやらない中で、少量多品種の新規素材を手がけることで名前を売っており、先端半導体製造工程で使われる高機能化学品の分野において、競合がいないと言えます。
また、海外市場では エア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ (米国)や ラインデ(ドイツ) などの大手ガスメーカーと競合していますが、持分法適用関連会社として現地法人を設立し、顧客ニーズに応えることで差別化を図っています。
事業内容
トリケミカル研究所は、山梨県上野原市に本社を置く企業で、半導体の製造工程で使われる化学薬品を主に提供しています。
特に、臭化水素や塩素などの高純度ガスや液体を得意としており、先端半導体製造工程で使われる高機能化学品の分野において、競合がいないのが強みです。
また、持分法適用関連会社として、中国や台湾などの海外市場にも進出しています。
トリケミカル研究所は、主として半導体メーカー向けの高純度化学薬品の開発・製造・販売を行っています。
どのような工程で使われる薬品?
トリケミカル研究所が提供する半導体メーカー向けの高純度化学薬品は、半導体デバイス製造においては、シリコンのウェハ上に複雑な電子回路を構成するため、多様な工程を経て作られています。
この工程はウェハプロセスと呼ばれていますが、その中の様々な場面で、化学反応を利用した加工がなされており、トリケミカル研究所グループの製品は主にウェハの表面上に薄膜を化学反応を用いて堆積させる「CVD」、薄膜の不必要な部分を腐食させて削り取る「エッチング」、ウェハ上にトランジスタやダイオード等を作るためにウェハの内部に不純物を注入させる「拡散」といった多岐にわたる工程において用いられています。
設立当初は光ファイバー製造に供される高純度材料の供給を行うことで成長を遂げてきましたが、現在では同様な材料を使用し、ニーズの変化が常に起こる半導体製造用材料や、デバイスの原理的に半導体と共通点の多い太陽電池製造用材料の供給が主力となっています。
強み・弱み
トリケミカル研究所の強みは以下が挙げられます。
- ニッチ市場に強い。少量多品種の新規素材を手がけることで、大手が参入しづらい分野で高いシェアを持っている。
- 先端半導体製造工程で使われる高機能化学品の分野において、競合がいない。韓国や台湾にある先端半導体工場向けの輸出を伸ばしている。
- 海外市場での展開力が高い。持分法適用関連会社として現地法人を設立し、顧客ニーズに応えることで差別化を図っている。
トリケミカル研究所の弱みは以下が挙げられます。
- 太陽電池向けの売上が減少傾向にある。太陽電池市場は中国メーカーの台頭や価格競争などで厳しい状況にある。
- 為替変動リスクが高い。海外売上比率が約6割と高く、円高によって収益が圧迫されやすい。
- 新型コロナウイルス感染症の影響で需要が落ち込んだ。特に自動車や航空機などの産業用ガスや液体は大きく減少した。
将来性については以下の通りです。
- 中期的な将来性は生産能力の向上と需要増加により安泰である。半導体や光ファイバーなどのIT技術はこれからも進歩し、その中心にはトリケミカル研究所の提供する素材が必要不可欠である。
- 長期的な将来性は需要の不透明感から不安定である。半導体製造技術は常に変化しており、トリケミカル研究所もそれに対応するために新規素材開発を続けなければならない。また、競合他社も新たな市場参入を狙っており、シェア争奪戦が激化する可能性もある。
- 新たな事業領域への挑戦が必要である。太陽電池向け事業では苦戦しており、他の成長分野への参入を模索している。例えば、水素エネルギーやバイオマスエネルギーなどの再生可能エネルギー関連事業への取り組みを強化しており、今後その成果が期待される。
目標とする経営指標
トリケミカル研究所グループは、安定した売上成長を図り、規模の拡大を目指しながらも、経営の効率化を推し進めることで確実に利益をあげられる強靭な企業体質の構築に努めてまいりたいと考えています。
そのため売上高及び売上高営業利益率を重視すべき経営指標としております。
2023年1月期を初年度とする中期経営計画においては、以下の財務目標が掲げられています。
- 売上高:165億円
- 営業利益率:25%⇒営業利益:44億円

事業セグメント
トリケミカル研究所の事業セグメントは以下の通りです。
セグメント | 取扱商品またはサービスの内容 |
---|---|
半導体等製造用高純度化学化合物事業 | 半導体メーカー向けの高純度化学薬品の開発・製造・販売を行う。 開発・製造・販売している主な半導体・太陽電池向け製品は、主に以下の3種類です。 <製品種類> ① CVD材料 ② ドライエッチング材料 ③ 拡散材料 |
業績
トリケミカル研究所の過去の業績は以下の通りです。

EPSの推移と予想EPS

四半期EPS推移

2023年1月期3Qは、売上高が101億円(前年同期比+18.9%増)、営業利益は28億円(前年同期比+20.0%増)、親会社に帰属する四半期純利益は43億円(前年同期比+38.5%増)となりました。
主要な販売先の半導体業界においては、テレワーク等の急速な普及やDX化の拡大等により世界的な半導体不足が生じていましたが、直近ではインフレの進行や地政学リスクの高まりを受けて、パソコンやスマートフォン向け等、一部で需要減退の動きも見られ、先行きに慎重な見方も出てきている一方、先端半導体を中心に半導体メーカーの稼働は引き続き高い水準を維持しています。
2023年1月期の業績修正について
2022年8月31日に2023年1月期通期連結業績予想を上方修正しています。
ただし、上期分を実績に修正したのみで、下期分は計画当初値を据え置いています。
上期分に実績と差異が生じた理由としては、主要な販売先であります半導体業界において各社とも高い稼働を継続しており、引き続き最先端半導体向けを中心に需要が旺盛であったことや、持分法投資利益が計画を上回ったこと、為替相場が想定レートに対し円安に推移したことがあります。
下期分については、米中間の緊張の高まりやロシア・ウクライナ問題等、世界情勢は不透明感を増しており、それにつれて為替相場においても直近で急激な変動を強めていることや、これに加えてエネルギー・原材料価格を含む世界的なインフレの動向、トリケミカル研究所製品関連市場の先行き等、現時点において下半期の業績を想定するにあたっての変動幅が大きいことから、下半期の業績予想は期初における想定(期初想定$1=¥110)を据え置いています。

地域別売上高

トリケミカル研究所の取引先の多くは海外ですが、主に台湾、韓国向けが大きいことがわかります。
その意味では一方で米中対立が悪化し、日本企業の中国向け輸出規制強化などなったとしても影響を受けにくいと考えています。
製品用途別売上高
製品用途別売上高を見ると、半導体向けが順調に売り上げを伸ばしています。
2025年に向けた事業の方向性
最後に2022年3月15日にリリースされた中期経営計画画(2022 年2月~2025 年1月)について記載しておきます。
半導体製造用化学化合物の生産開発能力の向上を推し進め、国内外の最先端半導体の需要増に即応できる体制を整備すること、そして向こう数年で需要が発生する、あるいは成長の見込まれる材料の開発・生産体制を構築することで将来の成長に備えていくとしております。
目標とする業績目標は以下の通りです。
- 売上高:165億円
- 営業利益率:25%⇒営業利益:44億円
テクニカル分析

業績とともに株価も右肩上がりとなり半導体バブルの2021年にピークを付けてから下落しています。

足元の業績は好調を維持しており、下落トレンドを抜けようと前回高値にトライ中です。
株価予想

EPSと株価の相関関係を使用して将来の価格を予想してみます。
株価からBPSを控除した金額の時間推移を利用した予測モデルをModel1、株価とEPSの相関を使用した予測モデルをModel2としています。
相関係数はModel1で91.3%、Model2で94.6%となっておりますので、株価とEPSには強い相関関係があるといえます。
相関係数の絶対値 | 一般的な解釈 |
---|---|
0~20% | ほとんど相関関係がない |
20~40% | やや相関関係がある |
40~70% | かなり相関関係がある |
70~100% | 強い相関関係がある |
Model1
予想EPSは2022/12期が217.1円、2023/12期が236.3円となっており、Model1で算出した価格はそれぞれ3,728.8円、4,078.1円となっております。
Model1で算出した価格は2023年1期で3,580円、2024年1月期で4,073円となっています。

Model2
予想EPSは2023年1月期が160.9円、2024年1月期が147.7円となっており、Model2で算出した価格はそれぞれ3,955円、3,629円となっています。
