
株式会社新日本科学について有価証券報告書や中期経営計画、ニュースリリースから投資価値を独自に分析していきます。
記事の最後には、EPSと株価の相関関係から算出した株価予想も記載していますので、最後まで読んでいただけますと幸いです。
Contents
新日本科学の企業概要
企業名 | 株式会社新日本科学 |
上場市場(上場年月) | 東証プライム(2004/3) |
時価総額(業種別時価総額順位) | 1,006億円(サービス業 51 / 528 社) |
外国法人持株比率 | 13.5% |
予想配当利回り | 1.70 % |
業務内容 | 製薬会社の医薬品開発を支援するCRO事業が主力。鹿児島県に保有地を活用して地熱発電や宿泊施設経営も。23.3期上期は欧米顧客からの受注が好調。7月買収のイナリサーチも2Qから上乗せ。通期営業最高益を計画。 記:2022/12/10 |
転載元:FISCO
JPX日経中小型株指数構成銘柄への選定
新日本科学は「JPX日経中小型株指数」の構成銘柄に選定されています。

「JPX日経インデックス400」は、資本の効率的活用や投資者を意識した経営観点など、グローバルな投資基準に求められる諸条件を満たした「投資家にとって投資魅力の高い企業」で構成され、日本企業の魅力を内外にアピールするとともに、その持続的な企業の評価や株式の流動性だけでなく、企業の財務状況など、株式市場の活性化を図る事を目的として創生された株式指数です。
「JPX日経中小型株指数」ではJPX日経インデックス400で導入した「投資者にとって投資魅力の高い会社」を構成銘柄とするとのコンセプトを中小型株に適用することで、資本の効率的活用や投資者を意識した経営を行っている企業を選定するとともに、こうした意識をより広範な企業に普及・促進を図ることを目指すものです。
現在の投資の流行はインデックス投資ですから、インデックスの構成銘柄になることで大きな買い圧が生まれることが期待できます。
新日本科学の事業について
新日本科学の事業内容は、
1.製薬企業等から前臨床試験(臨床試験に着手する前に、実験動物や細胞・細菌を用いて開発中の医薬品等の有効性と安全性を確認する試験)、臨床試験(治験)及び新薬承認申請業務を受託し、医薬品開発支援を行うCRO事業、
2.当社が独自に開発した経鼻投与基盤技術並びに大学やバイオベンチャーの基礎的な知見や技術を育成してビジネス化していくトランスレーショナル リサーチ(TR)事業、
3.当社が鹿児島県指宿市の高台に所有する広大な敷地(メディポリス指宿)の自然資本を活用して地熱発電や宿泊施設運営などを行うメディポリス事業(社会的利益創出事業)を行っています。
医薬品開発のプロセスにおける新日本科学グループの事業領域について
製薬企業は、医薬品を開発し、最終的に販売するまでには薬機法に基づく様々な試験を実施し、有効性と安全性を確認します。
厚生労働省に新薬承認申請を行う際には、それらの試験の成績を添付し、同省諮問機関の専門家に
よる厳密な審査を経て承認が得られるシステムになっております。
医薬品開発のプロセスにおける当社グループの事業領域については、次のとおりです。
目標とする経営指標
新日本科学グループは、各事業、セグメントの創出する利益を極大化することを重視し、営業利益、経常利益の増大を経営目標にしており、これらの経営指標の中期的向上を目指しております。

事業セグメント
新日本科学の事業セグメントは、以下の通りです。
セグメント | 取扱商品またはサービスの内容 |
---|---|
CRO事業 | (前臨床事業) 製薬企業等の委託者が開発中の医薬品等について、実験動物や細胞・細菌を用いてその有効性と安全性を確認する事業を行う。 (臨床事業) ヒトにおける有効性と安全性を確認するための試験実施に関する開発事業を行う。 医薬品業界は、国内外において研究開発のスピードアップと費用の効率化ならびに規制当局への対応簡素化を期待してCRO(Contract Research Organization:医薬品開発業務受託機関)へのアウトソーシング(外部委託)の動きが引き続き拡大しています。 また、近年、核酸医薬、次世代抗体医薬、ペプチド医薬、遺伝子治療、細胞治療、再生医療などの新規創薬モダリティの研究開発が本格化してきています。 このようなトレンドを受け、CRO事業を主力事業とする当社は、“ダントツのCRO”としてクライアントから第一に指名される存在になることを目指しており、顧客ニーズを満たす迅速な対応とサービスの向上ならびに継続的な品質の向上に注力しています。 中国、カンボジアに試験施設を保有。新型コロナ関連で非臨床試験受託が拡大。 |
トランスレーショナルリサーチ事業 | 経鼻投与基盤技術等の開発及び大学、バイオベンチャー、研究機関などにおける基礎研究から派生してくる有望なシーズ技術や新規物質を発掘して、医薬品などの評価・承認に必要な前臨床試験や臨床試験を行いながら、付加価値を高めて事業化する事業等を行う。 |
メディポリス事業 | 宿泊施設運営及び地熱発電事業等を行う。 |


売上高・利益の規模としては「CRO事業」が太宗を占めています。
「TR事業」に至っては毎期赤字を計上している事業であることが分かりますが、こちらは研究開発投資フェーズなので将来に期待です。
新日本科学の業績
新日本科学の過去の業績は以下の通りです。

EPSの推移と予想EPS

毎年順調に増収増益となっていますが、2023年から2024年にかけては利益は一旦頭打ちとなる予想となっています。
四半期EPS推移

2023年3月期3Qは、売上高は163億円(前年同四半期比+26.4%増)、営業利益は37億円(前年同四半期比+14.6%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は43億円(前年同四半期比△17.1%減)となりました。
なお、経常利益には為替差益25億円(前第2四半期連結累計期間は為替差益1.5億円)を計上しており、円安が経常利益以下に大きなインパクトを与えていることが分かります。
当3Qには為替の想定レートに比して円高で推移したことから、営業外損失を計上し前年比で減少しています。

CRO事業

CRO事業全体としては、増収増益傾向にあります。
また、CRO事業(非臨床事業)を主事業とするイナリサーチを子会社化したことにより当期2023年2Qよりその数値が寄与しています。
(売上高増加のうち+9.6億円、営業利益増加のうち+1.3億円)
非臨床事業(前臨床試験)
非臨床事業は、新日本科学がこれまで実施してきた以下の取り組みが成果を表しており順調に推移しています。
- CROとして世界で唯一構築できている「自社グループ内における実験用NHP繁殖・供給体制」が新たな創薬モダリティの研究開発の本格化等により重要性を増し、海外顧客からの受注増に繋がっている。
- 新たな創薬モダリティの有効性・安全性評価に必要な最新鋭装置を導入し、評価系を早い時期から構築してきたことが、上記「自社グループ内における実験用NHP繁殖・供給体制」構築と相乗効果を発揮し、新たな創薬モダリティに関連した受注に繋がっている。
- 大手製薬企業との創薬段階における包括的研究受託契約も順調に推移し、既に複数の企業から創薬段階の研究を受注している。

臨床事業
臨床事業は、米国に本拠を置くグローバル臨床CROであるPPD, Inc.(以下、PPD社)との合弁会社である株式会社新日本科学PPD(以下 新日本科学PPD)において臨床試験の受託事業を展開しています。
新日本科学PPDは、PPD社が受注した国際共同治験(グローバル試験)の日本国内での実施を主力事業としており、事業は順調に推移しています。

2023年3月期 通期業績予想の修正
テクニカル分析


ここ数年は右肩上がりで成長を続けていることに伴って、株価も右肩上がりとなっています。
長期で見ると3,000付近で何度か跳ね返されていますので、強いレジスタンスラインとなっています。
株価予想

EPSと株価の相関関係を使用して将来の価格を予想してみます。
株価からBPSを控除した金額の時間推移を利用した予測モデルをModel1、株価とEPSの相関を使用した予測モデルをModel2としています。
相関係数はModel1で26.8%、Model2で96.4%となっておりますので、株価とEPSには強い相関があるといえます。
相関係数の絶対値 | 一般的な解釈 |
---|---|
0~20% | ほとんど相関関係がない |
20~40% | やや相関関係がある |
40~70% | かなり相関関係がある |
70~100% | 強い相関関係がある |
Model1
Model1で算出した価格は2023年3月期で952円、2024年3月期で1,130円となっています。

Model2
予想EPSは2023年3月期が168.1円、2024年3月期が156.1円となっており、Model2で算出した価格はそれぞれ1,576円、1,479円となっています。

