業界分析
エービーシー・マート(2670)はなぜ増収が続くのか──国内客単価・インバウンド・海外出店の因果構造を読む

エービーシー・マート(2670)は、国内既存店の客数×客単価とインバウンド消費、韓国を中心とする海外多店舗展開で利益水準が左右される靴・スポーツシューズ小売企業

本記事では、同社の売上を動かす因果構造を「国内消費→先行指標→売上→利益」の流れで分解し、投資家が次の決算で何を確認すべきかを解説する。

💡 ワンポイント解説:まずざっくり言うと

エービーシー・マートは、ABC-MARTの看板で国内約1,100店・海外約400店を運営する靴の専門チェーンです。ナイキやVANSなどの人気ブランドに加え自社ブランドも展開しており、「来店客数がどれだけ増えるか」「1人あたりの買い物額がどう変わるか」が売上の大半を決めます。最近はスニーカーだけでなくアパレル(衣料品)やキッズ靴の強化で1人あたりの購買額を引き上げる戦略を取っています。

この記事の結論

エービーシー・マートの連結営業利益(FY2026実績633億円、営業利益率16.7%)は、国内既存店の客数・客単価の伸びに最も左右されやすく、スポーツシューズ構成比56.5%への上昇とアパレル売上+17.9%の成長が客単価を押し上げている。

FY2027会社予想は売上高4,008億円(+5.9%)・営業利益656億円(+3.7%)で、国内既存店+2.6%と韓国現地通貨+7.7%が前提だが、販管費率34.0%の上昇トレンドと棚卸資産+150億円の消化リスクが利益率を抑制する構造にある。

投資家が次回決算で確認すべき先行指標は、①国内既存店売上高(月次の客数・客単価分解)、②訪日外国人数と中国客動向、③韓国事業の現地通貨ベース売上増収率の3つである。

企業概要

エービーシー・マート(ABC-MART公式サイト、証券コード:2670)は、2月決算の靴・スポーツシューズ・アパレル小売企業です。2026年2月期末時点で国内約1,107店舗、海外約398店舗(韓国・台湾・米国・ベトナム・フィリピン)の合計約1,505店舗を運営しています。自社ブランド(HAWKINS、NUOVOなど)に加え、VANS・Saucony・Dannerなどのライセンスブランドを展開し、幅広い価格帯をカバーしています。

ビジネスモデル

同社のビジネスモデルは多店舗小売モデルに分類されます。収益の基本構造は「店舗数 × 坪効率 × 客単価」であり、ここにデジタル販売(EC比率10.6%)とインバウンド需要が加わります。国内売上が全体の約72%を占め、安定した収益基盤を形成する一方、海外(約29%)は成長ドライバーとしての役割を担っています。

粗利率は単体ベースで54.2%と靴小売としては高水準であり、この背景にはライセンスブランドの独占的な販売権と自社ブランドによる垂直統合的な仕入構造があります。

収益構造

地域別売上構成

区分 FY2026実績(億円) 構成比 主要顧客層
国内 2,731 72.1% 一般消費者(メンズ・レディース・キッズ・インバウンド観光客)
海外 1,113 29.4% 韓国MZ世代、台湾・東南アジア若年層、米国消費者
連結合計 3,786 100%

※特定法人顧客は会社非開示。顧客は全て一般消費者です。

製品カテゴリ別売上(連結ベース)

カテゴリ 構成比・金額 前期比
スポーツシューズ 構成比56.5% +0.4pt
キッズ 310億円 +11.1%
ウェア他(アパレル) 287億円 +17.9%

※カテゴリ別は連結ベースでの開示。国内・海外別の内訳は会社非開示。

売上の数式的分解

変数 算式上の位置 FY2026実績・水準
国内既存店客数 国内売上の主因 前年比+1.5%
国内既存店客単価 商品ミックスで決まる 前年比+3.1%
新規出店寄与 全店−既存店の差分 FY2027計画:国内純増+21店
海外売上(現地通貨) 各国店舗数×坪効率 韓国+1.1%、米国−7.3%
為替レート 海外売上の円換算 FY2027想定:1USD=160円
粗利率(単体) 売上総利益÷売上高 54.2%
販管費率(連結) 販管費÷売上高 34.0%(前期比+0.3pt)

過年度業績推移

決算年度 売上高(億円) 営業利益(億円) 営業利益率 経常利益(億円) 当期純利益(億円)
FY2024(2024年2月期) 3,722 626 16.8% 646 454
FY2025(2025年2月期) 3,786 633 16.7% 672 463
FY2026(2026年2月期)会社予想 3,839 640 16.7% 660 455
FY2027(2027年2月期)会社予想 4,008 656 16.4% 660 464

※FY2024・FY2025は連結確定実績。FY2026は決算説明資料の通期計画、FY2027は質疑応答資料(2026年4月時点)の会社予想に基づきます。FY2023以前の連結実績は入力資料に記載なし。FY2025→FY2026で営業利益率が横ばいの16.7%を維持する見通しですが、FY2027では16.4%へ微低下する予想で、販管費の構造的上昇が反映されています。

なお、単体ベースではFY2026に有価証券売却益約11億円を計上しており、FY2027の単体純利益は反動で微減(413億円→410億円、−0.7%)の予想です。この一時要因は連結当期純利益にも影響しています。

売上のドライバー分析

利益構造の見方

項目 FY2025実績 備考
連結売上高 3,786億円 国内2,731億円+海外1,113億円
└ 売上総利益(単体) 1,432億円 粗利率54.2%
└ 販管費(連結) 約1,287億円 販管費率34.0%(人件費・地代家賃・決済手数料・広告費)
= 連結営業利益 633億円 営業利益率16.7%

※上記は利益を左右する主要項目の見方であり、単体と連結を横断した参考整理です。単純合算で連結営業利益と一致させるものではありません。

エービーシー・マート(2670.T)の業績ドライバーと売上構造を整理した図解
エービーシー・マートの業績ドライバー構造

ドライバー①:国内消費者の靴・スポーツシューズ需要(最重要)

因果構造:健康志向・スニーカーカジュアル化 → スポーツシューズ市場の構造的拡大 → 既存店客数・客単価の改善 → 国内売上増

最上流にあるのは、日本の消費者のライフスタイル変化です。健康志向やランニングブームの定着、ビジネスシーンでもスニーカーが許容される「カジュアル化」が進み、スポーツシューズの需要が構造的に拡大しています。

この構造変化が同社の商品ミックスに直結しています。スポーツシューズの売上構成比はFY2025で56.5%(前期比+0.4pt)まで上昇し、革靴中心だった従来型の靴小売からの転換が数字に表れています。さらに、アパレル売上が287億円(前期比+17.9%)と急成長しており、靴と衣料品を合わせて買う「セット購買」が客単価を押し上げています。

FY2025実績では国内既存店売上が前年比+4.6%(客数+1.5%、客単価+3.1%)と堅調でした。客単価の改善幅(+3.1%)が客数(+1.5%)を上回っている点は、商品ミックスの高付加価値化が機能していることを示しています。

定量インパクトの目安:国内売上2,731億円に対し、既存店増収率が+1%変動すると約27億円の売上変動に相当します(単純試算)。粗利率54.2%を前提にすると、粗利ベースで約15億円の影響です。

💡 ワンポイント解説:「既存店売上」とは?

既存店売上とは、新しく開いた店を除き、前年も営業していた店舗だけの売上です。新店効果を除いた「本業の実力」を見る指標として、小売業の分析では最も重視されます。月次で公表されるため、四半期決算を待たずに業績の方向感をつかめます。

ドライバー②:インバウンド需要(追い風・補完的)

因果構造:円安(150〜160円台)→ 訪日コスト低下 → 訪日外国人数増(2025年は4,268万人で過去最高) → 国内店舗への来店・免税購買 → 既存店客数・客単価の上積み

日本政府観光局(JNTO)によると、2025年の訪日外国人旅行者数は年間4,268万人で過去最高を更新しました。円安が続く中、訪日観光客の購買力は高く、同社が展開するJAPAN LIMITED商品(日本限定デザイン)の販売強化はこの需要を取り込む施策です。

ただし、2026年についてはJTBの予測で訪日外国人客数が前年比2.8%減の4,140万人と見込まれています(読売新聞報道)。日中関係の悪化に伴い中国・香港からの訪日客が減少する見通しが主因です。一方で欧米・東南アジアからの訪日客は引き続き増加基調にあり、消費額ベースでは下支えされる可能性があります。

同社のインバウンド売上の直接金額は会社非開示ですが、国内既存店客数+1.5%の一部を構成していると見られます。インバウンド客は客単価が高い傾向があるため(会社資料に定量データなし)、客数以上に売上への寄与が大きい可能性があります。

定量インパクトの目安:訪日外国人数が前年比10%変動した場合、国内既存店売上への影響は数十億円規模と推定されます(筆者試算。インバウンド売上比率が仮に全体の5%程度と仮定した場合、約140億円×10%≒14億円規模)。【筆者推定・会社非開示】

ドライバー③:海外店舗展開(韓国中心、成長余地あり・リスク高)

因果構造:韓国MZ世代のランニング需要 → 韓国ランニングシューズ市場拡大(会社推定1.1兆ウォン規模) → 韓国既存店売上+新規出店 → 海外売上拡大

海外売上はFY2025で1,113億円(前期比−4.5%)と減収でしたが、これは円換算の影響を含みます。FY2027会社予想では韓国765億円(+9.9%)、米国322億円(+11.2%)、台湾133億円(+11.2%)と回復を見込んでいます。

最大市場の韓国ではFY2026末時点で325店を展開し、FY2027は純増5店(新規20店・閉店15店)を計画しています。韓国のMZ世代(ミレニアル+Z世代)を中心としたランニングブームが追い風ですが、FY2025の現地通貨ベース増収率は+1.1%にとどまり、政治経済不安からの消費マインド回復が鍵です。

一方、米国事業ではPFAS規制対応コストや関税政策の影響が懸念されます。2026年4〜5月時点では米国が各国に10%の代替関税を発動しており(報道ベース)、仕入コスト上昇圧力が続いています。

重要な構造的課題:海外事業の営業利益率は韓国でFY2025実績6.3%(前期6.8%から低下)と、国内単体の21.2%と比べて大幅に低い水準です。海外比率の拡大は売上成長に寄与する一方、連結営業利益率を希薄化させる要因です。

定量インパクトの目安:為替が1円/ドル変動すると、海外売上への影響は年間約7億円規模と試算されます(米国売上290億円÷149円≒1.9億ドル×1円。韓国・台湾含む全海外ではさらに大きい)。【筆者推定・単純試算】

ドライバー④:出店・面積拡大(長期的な売上基盤の拡充)

因果構造:商業施設の新規開業・増床 → 出店機会の増加 → 平均稼働面積の拡大 → 全店売上の底上げ

同社は国内で「グランドステージ(GS)4.0」と呼ばれる大型業態の出店を加速しています。シューズとアパレルの複合業態で、従来店より広い売場面積を確保し、客単価の向上を狙います。

年度 国内店舗売上高(億円) 平均稼働面積(㎡)
FY2023 1,766 289,559
FY2024 2,157 306,932
FY2025 2,383 313,529
FY2027(予想) 2,614 322,800

※単体ベース、中期経営計画資料に基づく。

平均稼働面積はFY2023の289,559㎡からFY2027予想の322,800㎡へ約11%拡大する計画です。面積拡大に伴う売上増が見込まれますが、新規出店・改装には初期コスト(地代・設備費)が発生するため、短期的には利益を圧迫します。

また、OSHMAN'S事業(RUN&FITNESS専門業態)は売上目標100億円・営業利益率3%と低マージン業態であり、連結利益への寄与は当面限定的です。

💡 ワンポイント解説:「坪効率」とは?

坪効率とは、売場面積1坪(約3.3㎡)あたりの売上高のことです。店舗が広くなっても、坪効率が維持・向上していれば「面積を有効に使えている」ことを意味します。面積だけが増えて坪効率が下がる場合は、出店戦略の見直しが必要になります。

先行指標

指標名 現在の数値・水準 直近の変化 企業への影響 重要度
国内既存店売上高(月次) FY2025通期:+4.6%(客数+1.5%、客単価+3.1%) 客単価主導で改善継続 国内売上の変動を最も直接的に映す最重要指標
訪日外国人数 2025年:4,268万人(過去最高、JNTO公表) 2026年はJTB予測で4,140万人(−2.8%)。中国・香港からの減少が主因 国内既存店の客数・客単価に2〜4週ラグで影響
韓国既存店増収率(現地通貨) FY2025:+1.1% 政局不安で低迷。FY2027会社予想は+7.7% 海外最大市場のトップライン。利益率6.3%の改善可否を左右
円ドル為替レート 2026年2〜3月時点:155〜157円台で推移(外為どっとコム等報道ベース、2026年2〜3月時点) FY2027会社前提は160円。高市首相発言を受けた円安観測も 海外売上の円換算と仕入コストの両方に影響
棚卸資産残高 FY2025末:1,066億円(前期比+150億円) 国内・海外とも積み増し。海外+54億円 消化不足なら値引き販売→粗利率低下。在庫効率の先行サイン
販管費率(連結) FY2025:34.0%(前期比+0.3pt) 人件費・決済手数料・デジタル広告費が構造的に上昇 営業利益率16.7%の維持・悪化を左右するコスト指標
国内消費者物価指数(コアCPI) 2025年12月:前年比+2.4%(総務省)。東京23区2026年4月:+1.5%で3カ月連続2%割れ 上昇率は鈍化傾向 物価高が消費者マインドを抑制すれば客数減のリスク
米国関税政策動向 2026年4月に10%の代替関税を発動(報道ベース) 15%への引き上げ方針が報道で伝えられている 米国事業(Danner含む)の仕入コスト上昇。売上290億円規模

※「重要度:低」の国内CPIは現時点では2%割れ水準に鈍化しており、消費者マインドへの直接圧力は限定的ですが、食品価格の再上昇局面では重要度が上がる可能性があります。米国関税は現時点で同社連結売上に占める米国比率が小さい(約8%)ため低重要度としましたが、関税率がさらに引き上げられた場合は仕入構造全体に波及するリスクがあります。

先行指標を左右する要因

先行指標 増加(改善)要因 減少(悪化)要因
国内既存店客数 インバウンド増加、健康志向の定着、商業施設の集客力向上 物価高による消費抑制、天候不順、競合出店
国内既存店客単価 スポーツシューズ・アパレルの構成比上昇、価格改定 低価格帯商品への需要シフト、値引き販売の増加
訪日外国人数 円安の持続、航空便数の増加、欧米・東南アジア客の拡大 中国の渡航自粛政策、地政学リスク、円高反転
韓国売上 ランニングブームの持続、MZ世代の消費回復、ウォン安反転 韓国政局悪化、消費マインド低迷、競合激化
棚卸資産 需要回復による消化率改善、仕入の適正化 海外市況悪化による滞留、トレンド外れ商品の増加
販管費率 売上増加による固定費レバレッジ、デジタル効率化 最低賃金上昇(実質賃金は2026年1月に前年比+1.4%へ転換、厚労省)、EC決済手数料増

業績予測(3シナリオ)

シナリオ 前提条件 売上高(億円) 営業利益(億円) 蓋然性の評価
ベースケース 会社予想ベース。国内既存店+2.6%、韓国現地通貨+7.7%、1USD=160円 4,008 656 最も蓋然性が高い。FY2025の実績トレンドと会社計画が概ね整合
上振れ(前提付き試算) インバウンド客数が想定以上に維持(4,200万人超)、韓国消費マインド急回復、円安160円超定着。国内既存店+4〜5% 4,100〜4,200 670〜680 やや低い。中国客の回復が不透明で、販管費率の改善も限定的
下振れ(前提付き試算) 中国渡航自粛長期化、国内物価高で消費抑制、韓国政局悪化、米国関税強化。国内既存店ゼロ圏。棚卸資産消化不足で値引き拡大 3,800〜3,900 600〜620 やや低い。複数リスクの同時顕在化が前提だが、棚卸資産+150億円の消化が鈍化した場合は利益率圧迫が顕著に

※上振れ・下振れの売上高・営業利益は筆者による概算シナリオであり、会社予想ではありません。

将来性・成長性

同社の成長ドライバーは時間軸で整理すると以下のように分かれます。

短期(1年):国内既存店の客数・客単価維持が最優先。アパレル売上(FY2025:287億円、+17.9%)の勢いが持続するかが鍵です。FY2027会社予想の売上高4,008億円は初の4,000億円台であり、達成すれば節目となります。

中期(2〜3年):海外事業の利益率改善が課題です。韓国325店体制での収益性底上げ、東南アジア(ベトナム・フィリピン)での出店拡大が成長を牽引できるかが焦点です。デジタル売上比率(現在10.6%)の引き上げも中期的なテーマです。

長期(3年超):グランドステージ4.0業態による大型店化とアパレル比率の拡大(現在約10%)が、靴専業からの脱却を図る構造変化として注目されます。ただし、販管費率の構造的上昇(人件費・デジタル投資)をどこまで売上成長で吸収できるかが、営業利益率16%台を維持できるかの分水嶺です。

競争優位性

同社の構造的な強みは3点です。第一に、国内1,100店超の多店舗ネットワークによるスケールメリットと仕入交渉力。第二に、VANS・Saucony・Dannerなどのライセンスブランドと自社ブランド(HAWKINS・NUOVO)を併せ持つ品揃えの幅。第三に、韓国300店超のアジア先行展開により、国内市場の成熟を海外成長で補完できるポジションです。

同業他社比較

競合他社の詳細な財務データは入力資料に記載がないため、定性的な構造比較で整理します。

国内靴小売ではチヨダ(8185)やジーフット(旧イオンフットウェア)が主な比較対象です。チヨダは「東京靴流通センター」「シュープラザ」を中心に郊外ロードサイド型の展開が多く、エービーシー・マートの駅ビル・商業施設型とは立地戦略が異なります。エービーシー・マートの単体営業利益率21.2%は、ライセンスブランドによる高粗利構造と都市型立地の集客力が支えており、業界内でも高水準と見られます。

海外展開の観点では、韓国300店超・台湾・東南アジアを持つ同社に対し、国内競合の海外規模は限定的です。一方で、グローバルスポーツ小売のFoot Locker(米国)やJD Sports(英国)と比べると、海外展開地域が東アジアに偏っている点が構造的な特徴です。

リスク

リスク項目 内容 影響度 顕在化条件 対称性(強気材料との裏表)
海外利益率の低下 韓国営業利益率6.3%→低下傾向。米国はPFAS規制・関税コスト増。海外比率拡大は連結利益率の希薄化要因 韓国消費マインド回復遅延、米国関税率引き上げ 海外売上成長(ドライバー③)の裏返し。成長と利益率低下のトレードオフ
棚卸資産の消化リスク FY2025末1,066億円(+150億円)。特に海外在庫+54億円。消化不足は値引き→粗利率低下 消費マインド悪化で商品回転が鈍化 在庫厚め方針は販売機会ロス低減(強気材料)の裏返し
インバウンド依存の脆弱性 中国政府の渡航自粛呼びかけ(2025年秋以降報道)が長期化した場合、国内客数・客単価が下押し 日中関係の悪化長期化、中国経済のさらなる減速 インバウンド増加(ドライバー②)の裏返し
販管費の構造的上昇 人件費(最低賃金上昇)、EC決済手数料、デジタル広告費の増加が恒常化。販管費率34%超で固定化リスク 売上成長が鈍化し、販管費増を吸収できなくなった場合 デジタル投資・人材投資は中長期の競争力強化の裏返し
為替リスク(両方向) 円安は海外売上の円換算を押し上げるが、仕入コストも上昇(+12〜15億円の仕入原価増を想定)。円急騰時は逆方向 為替が10円以上急変した場合 円安メリット(ドライバー③)の裏返し
地政学・政策リスク 米国関税政策強化、台湾地政学リスク、韓国政局悪化 複数リスクの同時顕在化 海外多地域展開の裏返し

💡 ワンポイント解説:なぜ「棚卸資産」が重要なのか

棚卸資産とは、まだ売れていない在庫のことです。靴やアパレルはトレンドの移り変わりが早いため、在庫が積み上がると「値下げして売る」必要が出てきます。値下げは粗利(儲け)を減らすので、在庫の増減は利益の先行サインとして投資家に注目されます。

まとめ

エービーシー・マートは、国内靴小売の圧倒的な店舗基盤(1,100店超)を活かしつつ、スポーツシューズ・アパレルの構成比向上で客単価を引き上げる戦略が奏功し、FY2025で売上高3,786億円・営業利益633億円を達成しました。FY2027はグループ初の売上高4,000億円台を目指す会社予想となっていますが、販管費率の上昇トレンドと海外利益率の低下が営業利益率を16.4%へ押し下げる構造にあります。

投資家にとっての焦点は、「売上成長の速度が販管費増を上回り続けられるか」です。その判断材料として、以下の3指標を次回決算で確認することを推奨します。

次の四半期決算で確認すべき3指標:

国内既存店売上高(月次)──客数と客単価の分解で+2.6%の会社予想ペースを維持できているかが最重要。特にアパレル寄与の持続性を確認

訪日外国人数と中国客動向──2026年のJTB予測4,140万人に対し、中国客の減少幅が想定内かどうか。欧米・東南アジア客の補完効果を確認

韓国事業の現地通貨ベース売上増収率──FY2027予想+7.7%に対し、消費マインドの実態を確認。利益率6.3%の底入れ有無も注視

参照資料

  • エービーシー・マート 2026年2月期 決算説明資料
  • エービーシー・マート 質疑応答資料(2026年4月時点)
  • エービーシー・マート 中期経営計画資料
  • 日本政府観光局(JNTO)訪日外国人旅行者数 2025年実績
  • JTB 2026年訪日旅行市場トレンド予測(読売新聞報道)
  • 総務省 消費者物価指数(東京都区部 2026年4月速報値)
  • 厚生労働省 毎月勤労統計調査(2026年1月速報)
  • 外為どっとコム ドル円相場レポート(2026年2〜3月)

よくある質問

Q. エービーシー・マート(2670)の業績ドライバーは何ですか?

A. 最大のドライバーは国内既存店の客数と客単価です。FY2025は既存店売上が前年比+4.6%(客数+1.5%、客単価+3.1%)と堅調で、スポーツシューズの構成比上昇(56.5%)とアパレル売上の急成長(+17.9%)が客単価を押し上げています。これに加え、訪日外国人による免税購買と、韓国を中心とする海外店舗展開が補完的な成長ドライバーとなっています。

Q. エービーシー・マート(2670)への投資リスクは何ですか?

A. 最大のリスクは海外利益率の低下と棚卸資産の消化リスクです。韓国の営業利益率は6.3%まで低下しており、海外比率拡大は連結利益率を希薄化させます。また、FY2025末の棚卸資産は前期比+150億円の1,066億円に達しており、消費マインドが悪化した場合は値引き販売による粗利率低下が懸念されます。販管費率の構造的上昇(34.0%、人件費・決済手数料増)も、売上成長が鈍化した場合に営業利益率を16%以下に押し下げるリスクがあります。

Q. エービーシー・マート(2670)が恩恵を受ける条件は何ですか?

A. 円安の持続と訪日外国人数の高水準維持が最も直接的な追い風です。FY2027会社予想の為替前提は1USD=160円であり、この水準が維持されれば海外売上の円換算とインバウンド消費の両面で恩恵を受けます。加えて、韓国の消費マインドが回復しFY2027予想の現地通貨+7.7%が達成されれば、海外事業が成長ドライバーとして機能します。国内ではアパレル・キッズの構成比拡大による客単価改善が続くことが、営業利益率16%台を維持する条件となります。

執筆:FIC投資研究所

本記事は、AIを活用して決算説明資料、中期経営計画、統合報告書、各種開示資料、ニュースを整理したうえで作成し、公開前にFIC投資研究所が内容確認と編集を行っています。記載内容は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断は読者ご自身の責任で行ってください。



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